弁護士コラム

養育費の強制執行とは?法改正で養育費に基づく差押えが簡単に!流れを解説

養育費の強制執行とは?法改正で養育費に基づく差押えが簡単に!流れを解説
  • 公開日:2025年7月7日
  • 更新日:2026年05月07日

離婚後に約束どおり養育費が支払われないとき、検討したい手段の1つが「強制執行(差押え)」です。強制執行により元配偶者の財産や給与などを差し押さえることで、未払いの養育費を回収できる可能性があります。

「相手の勤務先がわからない」「公正証書を作らずに離婚してしまったから無理だ」と諦めていませんか?

実は、近年の法改正で相手の財産調査が非常に簡単になったことに加え、2026年4月施行の改正民法により、一定の条件を満たせば「公正証書(債務名義)がなくても」相手の給与などを差し押さえられるようになりました。

この記事では、最新の法律に基づき、養育費に基づく差押えを行うための条件や具体的な手順、費用などをわかりやすく解説します。離婚後お子さまと安心して暮らしていくために、養育費の未払いでお困りの方はもちろん、離婚に向け準備をしている方も、ぜひ参考にしてみてください。

この記事を読んでわかること

  1. 【2026年最新】養育費の回収が簡単になった!民法改正のポイント
  2. 養育費の強制執行などの具体的な手順・必要書類・かかる費用の目安
  3. 未払いの養育費を放置すると回収できなくなる「時効」に関する注意点
  4. 強制執行をせずに養育費の支払いを促す方法

養育費に基づく差押え(強制執行など)とは?

養育費に基づく差押え(強制執行など)とは、裁判所を通して養育費の支払義務を負っている相手の財産を差し押さえ、強制的に養育費を回収する手続です。

養育費の取決めをしたにもかかわらず、約束どおり支払われない場合には、状況に応じ差押えの手続を検討することになります。

【2026年法改正対応】養育費の強制執行などがやりやすくなりました!

養育費の強制執行などに関するルールは、未払い被害者を救済するため、ここ数年で大きくアップデートされています。

特に、2026年4月に施行された改正民法では、これまで「泣き寝入りするしかない」と諦めていた方でも回収できる可能性が高まる「3つの重要な法改正」が行われました。

公正証書がなくても差押えが可能に(先取特権の付与)

これまで、養育費に基づく差押えを行うには「強制執行認諾文言付きの公正証書」や「調停調書」といった、裁判所や公証役場が関与した公的な書面(債務名義)が必要でした。

しかし、2026年4月の民法改正により、当事者間で交わした「離婚協議書」や「合意書」などの文書さえあれば、債務名義がなくても相手方の預金や給与などを直接差し押さえることができるようになりました(子ども1人あたり月額8万円まで)。

ただし、このルールは、改正民法施行前(2026年3月31日以前)に養育費の取決めがされていた場合には、2026年4月1日以降に発生する養育費に限って適用されます。

事前の取決めがなくても養育費が請求可能に(法定養育費の創設)

これまで、離婚時に養育費の取決めをしていなかった場合には、離婚後に養育費を請求するまでの期間の養育費の支払いを求めることができませんでした。

しかし、2026年4月に施行される改正民法では、養育費の取決めをしていない場合でも、離婚後すぐから最低限の「法定養育費(子ども1人あたり月額2万円)」が当然に発生すると定められました。この法定養育費が離婚後に支払われない場合には、養育費の取決めをしていなくても相手方の預金や給与の差押えも可能です。

ただし、この法定養育費は、改正法が施行された後(2026年4月1日以降)に離婚したケースにのみ適用されます。施行前(2026年3月31日まで)に離婚した場合は適用されない点に注意しましょう。

相手方の財産や給与の調査がよりしやすい手続に

養育費の未払い時に地方裁判所へ申し立てる際、養育費の支払義務者に財産の開示を命じる「財産開示」、市区町村への給与情報の提供を命じるなどの「第三者からの情報取得」、判明した給与を差し押さえる「差押え」を1回の申立てでできるようになりました。

養育費の強制執行などを行うための条件とは?

相手方の財産を差し押え、実際に未払いの養育費を回収するためには、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 債務名義もしくは合意書を取得している
  • 相手の住所・財産・勤務先を把握している
  • 相手に支払能力がある

債務名義もしくは合意書を取得している

養育費に基づき相手方の財産を差し押えるには、養育費について取り決めた内容を記載した「債務名義」もしくは養育費について取り決めた「合意書」を取得しておく必要があります。

債務名義とは、「誰が誰に、どのような請求権を有しているか」を証明する公文書です。具体的には、以下の書面が挙げられます。

  • 執行認諾文言付の公正証書
  • 調停調書
  • 審判書
  • 和解調書
  • 確定判決 など

2026年4月の改正民法施行により当事者間で交わした「合意書」などがあれば、養育費に基づき相手方の財産を差し押えることができるようになりましたが、子ども1人あたり月額8万円までとなっています。子ども1人あたり月額8万円以上の養育費を回収する場合には債務名義を取得しておく必要があります。

なお、当事者間で交わした「合意書」などがない場合でも、法定養育費の未払いが発生している場合には、相手方の財産を差し押えることができます。

相手の住所・財産・勤務先を把握している

養育費に基づく差押命令の申立てをするには、相手の住所・財産・勤務先を把握している必要があります。しかし、相手の住所・財産・勤務先がわからない場合でも、弁護士による「職務上請求」「弁護士会照会」や裁判所の手続を通じて調査できる可能性があります。

2020年に施行された改正民事執行法によって、裁判所を通じて市区町村や金融機関に「給与支払者情報」や「預貯金口座情報」などの開示を求めることができるようになりました。

相手に支払能力がある

相手方の財産を差し押さえる手続は、あくまで「相手方が現在持っている財産や収入」からお金を回収する手続です。そのため、相手方が長期間無職で預貯金やめぼしい財産が一切ない場合には、差押手続を行っても空振りに終わってしまいます。

ただし、今は一時的に支払能力がなくても、将来的に再就職して給与が発生すれば、そのタイミングを狙って差押えを行うことは可能です。

養育費の強制執行などで差し押さえられる財産とは?

養育費の強制執行などで差し押さえられる財産には、債権、不動産、動産などがあります。
具体的には、以下のような財産を一定の範囲で差し押さえることが可能です。

財産の種類 差押え可能な金額の範囲
給与(賞与) 毎月の手取りの2分の1の額まで
毎月の手取りが66万円を超える場合、総額から33万円を差し引いた残額
預貯金 強制執行時の口座残高を上限として制限なし
生命保険 解約返戻金相当額
土地・建物 売却額(ローンが残っている場合は控除後の残額)
自動車 売却額(ローンが残っている場合は控除後の残額)
貴金属 売却額
現金 総額から66万円を差し引いた残額

養育費の場合、一般的には給与や預貯金を差し押さえるケースが多いといえます。

養育費の強制執行などを行うメリット・デメリットとは?

養育費に基づく差押えによって未払いの養育費を回収するメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリット

養育費に基づく差押えの大きなメリットは、相手に財産があれば、支払う意思の有無にかかわらず養育費を確実に回収できることです。

また、給与を差し押さえた場合、未払い分だけでなく将来発生する養育費も継続して差し押さえられます。毎月相手の勤務先から直接、お金が支払われることになるため、安定して養育費を受け取れるようになるでしょう。

デメリット

一方で、養育費に基づく差押えの手続には時間や手間がかかるというデメリットもあります。

養育費に基づく差押えの手続をするには、たくさんの必要書類を集め、適切に申立書を作成しなければなりません。また、相手の住所や財産の調査が必要になるケースもあります。

さらに、裁判所を通じて強制的に財産を奪う形になるため、相手方の反発を招き、感情的な対立を生む(関係性が悪化する)リスクもゼロではありません。

ご自身での対応や相手方との直接のやり取りが難しい場合には、面倒な手続をすべて任せられ、相手方との窓口にもなってくれる弁護士への相談をおすすめします。

養育費の強制執行などを行うの流れ・必要書類・費用とは?

養育費に基づく差押えの手続は、大まかに以下の流れで進めます。

  1. 相手の住所、財産・勤務先を調査する
  2. 必要書類を準備する
  3. 裁判所へ差押命令を申し立てる
  4. 裁判所による差押命令が出される
  5. 未払いの養育費を取り立てる

以下で詳しく見ていきましょう。

①相手の住所、財産・勤務先を調査する

差押命令を申し立てるには、相手の住所と財産・勤務先などの情報が必要です。
相手の住所がわからない場合は、戸籍の附票や住民票を取得して調査しましょう。

弁護士に手続を依頼した場合には、「職務上請求」や「弁護士会照会」で調査できる可能性があります。相手の財産は、裁判所での「財産開示手続」や「第三者からの情報取得手続」などによって調査することが可能です。

②必要書類を準備する

養育費に基づく差押えを申し立てるには、以下の書類が必要です。

養育費に基づく差押えに必要な書類
書類名 必要性
申立書 必ず
債務名義の正本 債務名義で定めた養育費の強制執行を行う場合
送達証明書 債務名義を使用する場合
確定証明書 債務名義のうち審判書・判決書を使用する場合
父母間の合意書面 父母間の合意書面で取り決めた養育費に基づく差押えを行う場合
債権者および子の戸籍謄本(全部事項証明書) 法定養育費の未払いを理由に差押えを行う場合
子を含む世帯全員の住民票の写し
  • 戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 住民票
  • 戸籍の附票 など

(債務名義や父母間の合意書面を使用する場合)
あなたの現在の氏名・住所が債務名義と父母間の合意書面のものが異なる場合

(法定養育費の未払いを理由に差押えを行う場合)
離婚後にあなたもしくは相手方の氏名が変わった場合

相手の勤務先の登記事項証明書 給与を差し押さえる場合
金融機関の登記事項証明書 預貯金を差し押さえる場合

差し押さえる財産の種類によっては、このほかにも書類が必要になることがあります。

③裁判所へ差押命令を申し立てる

必要書類をそろえたら、原則として相手の住所地を管轄する裁判所に差押命令を申し立てます。
申立ての際にかかる費用は以下のとおりです。

差押命令の申立費用
内訳 金額
申立手数料 4,000円(債権者1人、債務者1人、債務名義1通の場合)
郵便切手代 3,000円~4,000円程度(裁判所によって異なる)

差押命令を申し立てたあとは、裁判所によって申立書をはじめとする書類が審査されます。

④裁判所から差押命令が出される

審査の結果、差押えが認められれば、裁判所から債務者である相手と第三債務者(相手の勤務先、預貯金をしている金融機関など)に差押命令が出されます。

差押命令を受け取った第三債務者は、裁判所へ陳述書を返送しなければなりません。

陳述書が返送され、差押えに成功すると、申立人であるあなたのもとにも差押命令の送達通知書と第三債務者が作成した陳述書が送られてきます。

⑤未払いの養育費を取り立てる

養育費の場合、差押命令の送達から1週間が経過すると、取立てができるようになります。

たとえば、給与であれば相手の勤務先に連絡し、支払方法(振込先の口座など)を伝えましょう。

将来分の養育費も差し押さえた場合、今後は相手の勤務先から直接、毎月の養育費が支払われるようになります。

養育費の強制執行などを行ってもお金を取れないケースとは?

養育費に基づく差押えをするための条件が整っており、適切に手続を行った場合でも、以下のようなケースでは養育費を回収できないおそれがあります。

相手が退職・転職したケース

給与を差し押さえたあと相手が勤務先を退職してしまうと、原則として差押えの効力はなくなります。なぜなら、差押えの対象であった給与が発生しなくなり、勤務先は「第三債務者」ではなくなるためです。

未払い分の養育費を全額回収できていない場合や、将来分の養育費を差し押さえていた場合には、改めて養育費に基づく差押えを申し立て、新たな勤務先の給与やほかの財産を差し押さえなければなりません。

預貯金の口座残高がないケース

預貯金を差し押さえたとしても、その時点で口座残高がない・少ない場合には、養育費を全額回収できないおそれがあります。そうなれば、改めて強制執行を申し立てなければなりません。

そのため、給与や賞与が振り込まれるタイミングを見計らって差押えを申し立てることも検討しましょう。

弁護士に養育費に基づく差押えの申立てを依頼すれば、「弁護士会照会」により相手の預金口座の有無や取引状況などを調査できる場合があります。

養育費の請求には「時効」がある!放置すると回収不可能になるかも

養育費を受け取る権利には「時効」が存在します。時効が過ぎてしまうと過去の分が請求できなくなってしまうおそれがあるため注意が必要です。

取決め等の方法 時効
話合い 5年
調停・審判、判決 これから支払われる将来の養育費 5年
調停成立時、審判確定時、判決確定時にすでに支払期限が到来している過去の養育費 10年
取決めなし(※)

※2026年4月1日以降に離婚する夫婦で法定養育費が発生する場合、毎月の支払期限の翌日から5年間が時効となります。

時効の完成が迫っている場合には、差押えや裁判上の請求を行うことで、時効の完成猶予・更新(リセット)ができる可能性があります。少しでも不安があれば弁護士に早めにご相談ください。

養育費の時効は5年または10年!時効を止めて未払いの養育費を請求する方法

強制執行をせずに養育費の支払いを促す方法とは?

強制執行には「空振りするリスク」や「相手方との感情的な対立」といったハードルが存在します。

そこで、強制執行の手続をとる前に「履行勧告」「履行命令」を申し立てることも検討するとよいでしょう。「履行勧告」「履行命令」は、離婚の際、調停・審判、裁判などで養育費の取決めをしていた場合に利用できる手続です。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

履行勧告

履行勧告は、裁判所から相手方に対して、養育費を支払う約束を守るように伝えてもらう制度です。

履行勧告によって養育費を強制的に支払わせることはできませんが、裁判所から督促されることで相手がプレッシャーを感じ、支払いに応じる可能性があります。

履行勧告には費用がかかりません。口頭での申立ても受け付けてもらえる簡単な手続のため、「強制執行」の手続をとる前に利用してみるとよいでしょう。

履行命令

履行命令は、裁判所から相手方に対して、養育費を支払う約束を守るように「命令」してもらう制度です。相手が履行命令に正当な理由なく従わない場合、10万円以下の過料に処せられます。

ただし、履行勧告と同じように、履行命令によって養育費を強制的に支払わせることはできません。

また、申立書の提出や数千円程度の手数料・郵券代などが必要です。

まとめ

取り決めたはずの養育費が支払われないのであれば、相手の財産を差し押さえ、強制的に養育費を回収する手続をとることを検討するとよいでしょう。

従来は高いハードルがあった強制執行ですが、2026年施行の民法改正をはじめとする法改正により、「債務名義(公正証書など)がなくても差押えが可能になる」「相手の財産や勤務先を調べやすくなる」など、未払い被害者が行動を起こしやすい環境が整っています。

アディーレ法律事務所では、離婚に伴い養育費を取り決めたい方はもちろん、離婚後に養育費が支払われずお困りの方からのご相談も承っております。

きちんと養育費を受け取りたいとお考えであれば、まずはお気軽にご相談ください。

監修者情報

林 頼信

弁護士

林 頼信

はやし よりのぶ

資格
弁護士
所属
東京弁護士会
出身大学
慶應義塾大学法学部

どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。

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