弁護士コラム

何年別居したら離婚できる?平均期間や対処法を弁護士が解説

何年別居したら離婚できる?平均期間や対処法を弁護士が解説
  • 公開日:2023年12月25日
  • 更新日:2023年12月25日

「もう別居して1年になるのに、相手がなかなか離婚に応じてくれない」
このような悩みを持つ方もいらっしゃることでしょう。

実は多くの方が、別居してから1年未満で離婚を成立させています。
そのため、別居して1年たつのにまだ離婚できない場合は、このまま話し合いを続けても平行線が続くだけかもしれません。

今回の記事では、離婚するために必要な別居期間や、なるべく離婚裁判をせずに離婚するための対処法について弁護士が解説します。

この記事を読んでわかること

  1. 離婚するために必要な別居期間
  2. なるべく離婚裁判をせずに離婚するための対処法

皆はどのくらい別居してから離婚している?

皆がどのくらい別居してから離婚しているのか気になりますよね。
実は、厚生労働省が、別居をしてから離婚するまでの期間につき統計をとっています。
2020年度の厚生労働省の統計によれば、次の通りです。

別居期間 割合
1年未満 82.8%
1年~5年未満 11.7%
5年以上 5.5%

このように多くの方が、別居期間1年未満で離婚していることが分かります。

参考:令和4年度 離婚に関する統計の概況|厚生労働省

協議離婚できた場合は、別居期間は短い傾向がある

「別居したら、すぐに離婚できるかな」
こう思われる方も多いことでしょう。

ただここで注意が必要なのは、同厚生労働省の統計によれば、離婚した方の内、「88.3%の方が協議離婚」しているという事実です。

この事実から、別居期間1年未満の方の多くは、協議離婚(裁判所の手続きを利用しない離婚)をしていると推測されます。

他方で、調停離婚や裁判離婚など、裁判所の手続きで離婚をする場合は、別居期間は1年を超えてくる傾向にあります。

調停離婚や裁判離婚をするために必要な別居期間

では、調停離婚や裁判離婚の場合は、どのくらいの別居期間が必要なのでしょうか。

調停離婚の場合の別居期間

調停離婚の場合は、配偶者が離婚に同意しくれれば離婚できます。
もっとも調停離婚は、調停の申し立てをしてから調停離婚が成立するまで、通常6カ月程度かかるため、その分、別居してから離婚するまでの期間が協議離婚より長くなってしまいます。そのため別居期間が1年を超えてきてしまうケースが多くなります。

裁判離婚の場合の別居期間

調停をしても相手が離婚に同意しない場合には、最終的に裁判をして離婚を目指すことになります。
この裁判離婚の場合は、裁判手続きで裁判官が離婚を認めた場合に離婚が成立します。そして、裁判離婚が認められるためには、少なくとも「婚姻関係が破綻している」(夫婦仲が修復しそうにもない)という要件を満たす必要があります。

基本的には別居期間が長くなるほど、婚姻関係が破綻していると認められやすくなります。

では「長く」とはどのくらいなのでしょうか。
ケースにより、離婚に必要な別居期間は異なります。

別居期間1:配偶者が不倫(不貞行為)をしている場合

この場合、配偶者の不貞行為自体が、婚姻関係破綻の原因となりうるため、別居期間が1年未満でも、離婚が認められることはあります(ただし、不貞の期間や回数、交際相手の人数等によって結論は異なります)。

なお、不貞行為の証拠(ラブホテルから配偶者と交際相手が出てくる写真など)を裁判所に提出しないと、不貞があったこと自体を認めてもらえないので注意しましょう。

別居期間2:配偶者が継続的に暴力をふるってくる場合

配偶者が、継続的に暴力をふるってくる場合も、暴力自体が婚姻関係破綻の原因となりますので、別居期間が1年未満でも、離婚が認められることはあります(ただし、暴力の程度や、暴力を受けている期間、けがの程度などによって結論は異なります)。

なお、先ほどと同様に、暴力を受けた証拠(診断書など)を裁判所に提出しないと、暴力があったこと自体を認めてもらえないので注意しましょう。

別居期間3:配偶者と性格が合わない場合

離婚原因で一番多いのが、「配偶者と性格が合わない」というものです。
ところが、配偶者と性格が合わない、というだけでは婚姻関係が破綻しているとは認められにくいのが現状です。
そのため、離婚に向けた別居期間がどのくらい長いかということが重要になってきます。

基本的には別居期間が3年~5年程度に及んでいると、婚姻関係が破綻していると認められやすくなります(ただし、後述の通り、離婚を請求する側に不貞行為などの有責行為がある場合は、別居期間は3年~5年では足りないと認定されることも多いです)。

なお、離婚に必要な別居期間は、同居期間との対比で決まってきますので、配偶者と性格が合わないケースすべてで、別居期間は3年~5年必要というわけではありません。

例えば、結婚してからの同居期間が1年しかない場合、別居期間がたとえ10か月であっても、同居期間の短さと比較すると別居期間が長いため、婚姻関係が破綻していると評価されることもあります。

他方で、結婚してからの同居期間が30年で、別居期間が3年である場合は、一時的な別居にすぎないとして、ケースによっては婚姻関係が破綻しているとはいえない(=離婚できない)と判断される可能性もあります。

別居期間だけで、一律に離婚できるかどうかが判断できるわけではないということに注意しておきましょう。

別居期間4:離婚を請求する側に「有責行為」がある場合

離婚を請求する側に不貞行為や暴力行為といった「有責行為」(婚姻関係を破綻させる行為)があった場合、別居期間が5年であっても、離婚が否定されることは少なくありません。

というのも、離婚をする側に有責行為がある場合は、別居期間のほかにも次の要件も考慮したうえで、離婚の可否を判断するのが通常だからです。

  1. 未成熟子(基本的には未成年のことを指します)の存否
  2. 離婚を請求されている側の配偶者が、離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれるか

未成熟子がいる場合や、離婚を請求されている側の配偶者が、離婚により過酷な状態に置かれる場合は、離婚は認められにくくなります。

裁判例の中には、20年間別居していても、有責配偶者からの離婚請求が認められなかった事案もあります(東京高裁平成9年2月20日判決)。

他方で、別居期間8年弱で、有責配偶者からの離婚請求が認められた事案もあります(最高裁第一小法廷平成2年11月8日判決)。

このように、ケースによって、離婚に必要な別居期間は大きく変わることになります。

離婚裁判をせずに離婚するための対処法

「離婚裁判をすると、大変そうだな」
このように考え、なるべく裁判までいかずに、離婚したいという方も多いことでしょう。
そこで、離婚裁判をなるべくせずに離婚するための対処法についてご説明します。

別居中の生活費の請求

離婚するまでは、基本的には、別居中の生活費(婚姻費用)を収入の多い方の配偶者からもらうことができます(婚姻費用を請求する方が有責配偶者の場合は、この有責配偶者の生活費についてはもらえないことがあります(ただし、この場合でも、未成熟子の生活費は基本的にはもらえます))。

収入の多い方の配偶者が離婚を拒んでいる場合は、収入の少ない方の配偶者から婚姻費用を請求することで、収入の多い方の配偶者が離婚に応じることがあります。

というのも、離婚が成立するまでは、基本的に収入の多い側は婚姻費用の負担を続けなければならないので、「この負担が続くのは嫌だな。離婚しよう」と、収入の多い側が離婚に応じるようになる可能性があるのです。

なお、婚姻費用の話し合いをしても相手方が応じない場合は、調停や審判手続き(裁判所での手続き)で婚姻費用を請求することになります。

特に調停や審判では、夫婦双方の収入のバランスで婚姻費用の金額が決まります。
そのため、相手方の収入をきちんと証拠とともに押さえておくことが重要になります。

離婚調停

夫婦間の話し合いでは離婚に応じてくれなくとも、離婚調停を行うことで、相手が離婚に応じるようになることもあります。

というのも、離婚調停では、調停委員という第三者が間にはいって、夫婦の話をそれぞれ聞いたり説得したりしてくれるからです。

ただし、調停委員はあくまで中立の立場ですので、必ずしもあなたの味方をしてくれるわけではないということに注意しましょう。

あなたが離婚したがっていても、場合によっては、調停委員から婚姻関係を継続してはどうかという説得を受けることもあるということです。調停をする場合は、自分の意見を法的に、そして理路整然と主張できるようにしておくとよいでしょう。

弁護士に離婚問題を任せる

夫婦間で直接話し合うと、感情的になり、離婚の話が進展しないこともあります。
夫婦間で直接話し合うのが難しいという方は、弁護士に離婚問題を依頼するという方法があります。
離婚問題に詳しい弁護士に依頼すると、次のようなメリットがあります。

  1. メリット1:話し合いがスムーズに進む可能性が高まる
  2. メリット2:相手の収入を調査できる可能性がある
  3. メリット3:交渉のストレスや労力が軽減される

メリット1 話し合いがスムーズに進む可能性が高まる

話し合いに第三者を入れると、感情的にならず話し合いができる可能性が高まります。
そして、離婚問題に詳しい弁護士であれば、離婚の交渉のノウハウを持っていますので、当初は相手方が離婚を拒否していても、弁護士が粘り強く交渉することで離婚に応じてくれるケースも少なくありません

また、配偶者が弁護士に依頼している場合、いつのまにかあなたにとって交渉が不利に進んでしまうことも少なくありません。
というのも、配偶者の弁護士は、配偶者の味方であり、あなたと対立する立場にあります。
そして、離婚問題に詳しい弁護士は、法律に詳しいだけでなく、交渉のテクニックも持っているのが通常です。
そのため、配偶者の弁護士と交渉すると、その弁護士の交渉のテクニックに押されてしまい、あなたにとって不利な展開になることも少なくないのです。

そのため、配偶者に弁護士がついているが、あなたが自分の交渉のテクニックに自信がないという場合は、あなたも弁護士に依頼することを検討するとよいでしょう。

メリット2 相手の収入を調査できる可能性がある

弁護士は、一般の方と異なり、「弁護士会照会(23条照会)」という調査を、交渉の段階からすることができます。
これば、弁護士が、弁護士会を通して、官庁や会社などの団体に質問をし、それに対して、これらの団体が答える義務を負うという制度です。

例えば、配偶者の収入が不明であるため、婚姻費用の請求に支障が生じている場合に、弁護士が、弁護士会照会を使って、配偶者が勤める会社や、官公庁に対し、給与の額を質問することで、配偶者の収入が判明する可能性があります。

なお、必要性・相当性を欠く照会と判断された場合については、回答を得ることはできません。

メリット3 交渉のストレスや労力が軽減される

離婚を自分で交渉するのはとてもストレスを感じる、という方は多くいます。
この点、弁護士に離婚の交渉を依頼すれば、弁護士が代わりに交渉してくれますし、示談書の作成も代わりにしてくれます
そのため、弁護士に離婚の交渉を依頼することで、交渉のストレスや労力を軽減することができます。

まとめ

今回の記事では、

  • 離婚するために必要な別居期間
  • なるべく裁判離婚せずに離婚するための対処法

についてご説明しました。

長く別居しているのにも関わらず離婚の話が進展しないと、ストレスが溜まって仕方がないという方もいらっしゃることでしょう。

弁護士に離婚を依頼することによって、離婚の話が前に進んで、新たな人生を歩めるようになるかもしれません。

アディーレ法律事務所には、離婚問題に関するノウハウを持つ離婚チームがあります。
離婚問題でお悩みの方はアディーレ法律事務所にご相談ください(※)。

※ケースにより、ご相談を承れない場合もございます。

監修者情報

林 頼信

弁護士

林 頼信

はやし よりのぶ

資格
弁護士
所属
東京弁護士会
出身大学
慶應義塾大学法学部

どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。

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