弁護士コラム

面会交流のルールの決め方・注意事項・拒否事例・約束反故の対処法を解説

面会交流のルールの決め方・注意事項・拒否事例・約束反故の対処法を解説
  • 公開日:2023年12月25日
  • 更新日:2024年07月22日

「面会交流について取り決めをしたいけど、相手と揉めていて話が進まない」という方もいらっしゃることでしょう。

親権と違い、面会交流は離婚時に取り決めしなくとも離婚できます。

しかし、離婚をする前にきちんと面会交流について取り決めをしておかないと、面会交流がされないままどんどん時が経ってしまうことも少なくありません。

そのため、離婚前にきちんと面会交流について取り決めをしておくとよいでしょう。

そして、面会交流の取り決めをする前に、知っておくべきことがいくつかあります。
知識が不足したまま面会交流の取り決めをしたがために、自分の望んだ面会交流がされないといった事態に陥らないようにする必要があります。

今回の記事では、面会交流の取り決めをする上で必要な知識について、弁護士が解説します。

この記事を読んでわかること

  1. 面会交流の内容(頻度・形態など)
  2. 面会交流の取り決めの方法
  3. 面会交流で決めるべきルール
  4. 面会交流の合意をする際の注意点
  5. 面会交流の合意の変更方法
  6. 面会交流の合意が守られない場合の対処法 など

面会交流とは

面会交流とは、婚姻中の別居や、離婚により、子と同居していない親が、子と会って食事などをしたり、電話や手紙などで交流することをいいます。

面会交流は、子どもが成人するまで(2022年の民法改正後は18歳まで)行われることなります。
子どもの成人後は、(元)監護親(子と同居等して養育する親)の意向に関係なく、子の意思で自由に会うことが可能になります。

面会交流の回数

面会交流は月1回程度であることが多いです。

2016年度の司法統計によりますと、一定の調停・審判で取り決められた面会交流の回数・割合は以下の通りです。

面会交流の回数 割合
(小数点第1位以下は四捨五入)
月1回以上 43.8%
別途協議 29.7%
月2回以上 7.7%
2・3か月に1回以上 5.8%
週1回以上 2.1%
4~6カ月に1回以上 1.8%
長期休暇中 0.5%
その他 8.6%

参考:裁判所|司法統計 検索結果一覧 年報

宿泊を伴う面会交流もある

ほとんどの場合は、宿泊無しの面会交流ですが、中には、宿泊ありの面会交流が取り決められることもあります。

先ほどの司法統計によると、一定の調停・審判で取り決められた面会交流の際の宿泊の有無・割合は以下の通りです。

宿泊の有無 割合
(小数点第1位以下は四捨五入)
宿泊無し 92.2%
宿泊有り 7.8%

参考:裁判所|司法統計 検索結果一覧 年報

祖父母も面会交流できる場合がある

面会交流は親の権利ですので、面会交流できるのは基本的に親のみです。
もっとも、監護(同居)親の反対がなければ、祖父母などが面会交流することも可能です。

監護(同居)親が面会交流に付き添う場合がある

「子どもが幼いため、子どもだけで非監護親に合わせるのは、不安」といった場合に、監護親が面会交流に付き添いを希望することがあります。

この点、監護(同居)親が面会交流に付き添うことは許さないといった取り決めがなければ、監護(同居)親が、面会交流に付き添うことは可能です。

とはいえ、当日いきなり監護(同居)親が付き添うと、「そんな話は聞いていない」とトラブルになる可能性があるため、事前に付き添いの可否について取り決めておいた方がよいでしょう。

第三者機関を使って面会交流する方法もある

「(元)夫婦間では、面会交流の調整が難しい」
「監護(同居)親が、面会交流中に子が連れ去られないか心配して面会交流を拒否している」
といった場合があります。
このような場合に、第三者機関が、面会交流の調整をしたり、面会交流の立ち合いをしたりすることで、面会交流を実現させる方法があります。

このような第三者機関の一覧を、法務省が公開しています(※すべての第三者機関が公開されているわけではありません)。

第三者機関の利用に伴う費用がいくらかは、利用を希望する第三者機関に事前に確認しておきましょう。

面会交流の取り決めの方法

さて、面会交流の取り決めの方法ですが、「話し合い➡調停➡審判」という順番に進んでいくのが通常です。

すなわち、まずは監護(同居)親と非監護(非同居)親との間で、面会交流の回数や面会交流の場所等について話し合いをします。
話し合いで面会交流について合意できた場合は、あとで揉めないように合意内容を書面にします(注意点は後述します)。

話し合いをしても合意できない場合は、通常は、家庭裁判所に調停を申し立てることになります(いきなり審判を申し立てしても、調停を先に行うことが多いです)。
調停では、調停委員という第三者が間に入って話し合いをしますが、調停でも双方の合意ができない場合には、自動的に審判に移ります。

審判では、双方の主張や証拠に基づいて、面会交流の可否や面会交流の内容について裁判官が決めることになります。

調停や審判で重視されること

では、次に、面会交流の調停や審判について解説します。

面会交流は、子が幸せに生きられるよう、子の福祉のために行われるものです。
そのため調停や審判では、主に次のことが重視されます。

  • 子の年齢
  • 子の性別
  • 子の性格
  • 子の生活環境
  • 面会交流をすることによる子への影響
  • 子の意向(10歳前後から、子の意向が尊重されることが多いです) 等

参考:面会交流調停|裁判所

家庭裁判所調査官の調査

面会交流の調停では、家庭裁判所調査官という人が、子どもや(元)夫婦とそれぞれ面談して、子どもの状況や(元)夫婦それぞれの状況等を調査することがあります。

この家庭裁判所調査官の調査結果をもとに、調停での話し合いがされたり、調査結果がその後の審判の重要な資料となります。

実務上、家庭裁判所調査官の意見が、「面会交流を認めるべき」といった肯定的な意見になっていると、審判でも、面会交流を認めるとの判断が出ることが多いため、非常に重要な調査となります。

試行的面会交流

また、面会交流の調停において、家庭裁判所調査官が、試行的面会交流を実施することもあります。

これは、家庭裁判所内の児童室において、子と非監護(非同居)親を試験的に面会交流させる手続きです。
児童室の中には、絵本やおもちゃなどが置かれており、なるべく子供がリラックスして過ごせるように工夫されています。

そして、この試験的面会交流に家庭裁判所調査官が立ち会って、その様子を観察し、面会交流に支障がないか、どのような課題があるかなどを調査します。

他方の親や代理人は、試行的面会交流の様子をマジックミラーやカメラを通して見ることができます。

実務上、試行的面会交流の調査結果も、先ほどと同様に、調停や審判での非常に重要な資料になります。

面会交流で決めるべきルール

面会交流の話し合いや調停で決めるべきルールは主に次のものです。

  • 面会交流の回数(例:月に1回)
  • 面会交流の場所(例:●●喫茶店)
  • 面会交流の時間(例:毎月第〇△曜日の●●時~●●時)
  • 面会交流時間の長さ(例:1時間)
  • 面会交流の際の子の引き渡し方(例:●●駅改札口△番で子の引き渡し)
  • 面会交流の日時の調整方法(例:日時の変更の必要がある場合は、〇日前までに連絡・調整)

面会交流が認められないケース

面会交流は、必ず認められる、というものではありません。
例えば次のような場合は、子の福祉に反する場合には、面会交流は認められないことがあります。

  • 子が非監護(非同居)親からDV(精神的・肉体的暴力)を受ける恐れがある
  • ある年齢歳以上(※)の子が、面会交流を拒否している(※年齢については、ケースにより異なりますが、15歳前後から子の意思が尊重される可能性があります)。
  • 子を連れ去る恐れがある

養育費が払われていないので、面会交流を拒否できるかという相談も多いですが、養育費と面会交流は別のものです。
そのため、養育費が払われていないことだけを理由に、面会交流を拒否することはできません。

面会交流の合意をする際の注意点

面会交流の合意をする際に注意すべきことがあります。

子どもの負担を考慮する

面会交流では子どもの福祉が最優先されます。
そのため、面会交流の合意の内容が子どもにとって過度の負担にならないように気を付ける必要があります。

乳幼児は、監護(同居)親等の同席が必要なことが多い

例えば、子どもが乳幼児の場合、「いつもと違う」という状況を苦痛に思うことも少なくありません。
そのため、乳幼児との面会交流の場合は、監護(同居)親かそれに代わる人(ベビーシッター等)の同席を認めた方が、子どもへの負担は少なく済むことが多いでしょう。

悪口を言わない

また、子どもは、たとえ親が別居しても、心の中では、両方の親のことが好きと思っていることも多いです(監護(同居)親に遠慮して、本当の気持ちを口には出さないことも多いです)。
そのため面会交流中に、他方の親の悪口を言われると、子どもが内心傷ついてしまうことがあります。そのため、面会交流中には他方の親の悪口を言わないという内容を定めるのも有効でしょう。

子どもには子どもの生活がある

子どもには、面会交流のほかにも、習い事や部活、友達との遊びに行く約束など、大切なスケジュールがあります。
そのため子どもの生活サイクルを無視した面会交流の日程を設定してしまうと、子どもの負担になってしまいます。
例えば、毎日18時に必ず面会交流をしなければならない、とすると子どもにとって負担になることも多いでしょう。
面会交流の合意の内容が、子どもの生活を過度に制限しないよう考慮する必要があります。

面会交流の合意に内容はできるだけ具体的なものする

面会交流の内容を曖昧なものにしてしまうと、主に次の2点で困ることになります。

  1. 曖昧な部分をめぐって、後日、揉めるおそれがある。
  2. 面会交流の合意が守られない場合に、強制執行ができないおそれがある

内容が曖昧だと、揉めるおそれ

例えば、面会交流の場所を定めなかったとします。この場合、非監護(非同居)親が自分の自宅で面会交流をしようとして、それに反対する監護(同居)親と揉めるといったことが考えられます。

内容が曖昧だと、強制執行ができないおそれ

面会交流の合意が守られない場合、間接強制(後述)という法的な手段を取ることができます。
しかし、面会交流の合意の内容が曖昧だと、特定不十分として間接強制ができないおそれがあるのです。

例えば、次の点で特定性を欠くとして間接強制が認められなかった判例があります(最高裁平成25年3月28日 第一小法廷決定)。

面会交流の頻度:
2箇月に1回程度
各回の面会交流時間の長さ:
半日程度(原則として午前 11時から午後5時まで)
ただし、最初は1時間程度から始めることとし、長男の様子を見ながら徐々に時間を延ばすこととする。
面接交渉の具体的な日時、場所、方法等:
子の福祉に慎重に配慮して、抗告人と相手方間(※)で協議して定める。

※両親間のこと

参考:平成24年(許)第47号 間接強制申立ての却下決定に対する執行抗告棄却決定 に対する許可抗告事件 平成25年3月28日 第一小法廷決定|裁判所

面会交流の合意の変更方法

面会交流を合意した後に、合意内容を変更したいという場合があります。
この場合は、まずは監護(同居)親と非監護(非同居)親との間で話し合います。
話し合いで決着がつかない場合は、調停・審判へと移っていくことになります。

面会交流の合意が守られない場合の対処法

さて、面会交流の合意が不当にも守られない場合、次の対処法があります。

  • 履行勧告
  • 間接強制
  • 慰謝料

履行勧告

履行勧告(家事事件手続法289条)というのは、家庭裁判所から、面会交流の合意を守るよう勧告してもらう手続きです。
ただ、履行勧告には強制力がないため、監護(同居)親が履行勧告に従わないと効果がありません。

間接強制

間接強制とは、履行義務者に対し、履行をするまで一定の賠償額を支払う義務を課す手続きです。

※前述の通り、間接強制が認められるためには、面会交流の合意が具体的である必要があります。

ただ、この間接強制が課されても、監護(同居)親が面会交流に応じない場合は、面会交流の実現はできません。

慰謝料

面会交流に不当に応じない監護(同居)親に対し、慰謝料を請求するという方法があります。

ただ、慰謝料が課されても、監護(同居)親が面会交流に応じない場合は、面会交流の実現はできません。

以上の通り、「勧告や金銭でプレッシャー」をかけることはできるものの、あくまで監護(同居)親が、面会交流を拒否する場合には、面会交流の実現ができないというのが実情です。

なお、面会交流が行われないからと言って、無理やり子どもを連れだして面会交流をさせるというのは子の福祉に反するため、認められていません。

面会交流の交渉等を弁護士に依頼するメリット

面会交流の交渉等を弁護士に依頼するメリットは次の通りです。

弁護士が粘り強く交渉

面会交流をめぐって、双方が激しく対立することも多くあります。

例えば、母親は「子どもは父親のことを嫌っている」と思い込んで面会交流を拒絶し、父親は「愛する子どもに是が非でも面会交流をしたい」と思っている場合です。

当事者同士で話し合うのは難しいという場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。
弁護士は、あなたの味方となります。
そして、あなたはもちろんのこと、なるべく相手も納得できるような着地点を目指して粘り強く交渉します。
相手も納得できる内容でないと、その後の面会交流の約束が守られない可能性があるからです。

弁護士が合意書を作成

どのような面会交流がよいかは、ケースごとに異なります。
そのため、インターネットに掲載されている面会交流のひな型だけでは、あなたのケースに合った合意書を作成するのが難しいこともあります。

この点、弁護士であれば、あなたのケースに合わせた合意書の作成をすることができます。

当事者同士の話し合いが難しい、合意書の作成が難しいという方は、弁護士への依頼を検討してみるとよいでしょう。

まとめ

面会交流の取り決めをする上で必要な知識についてご説明しました。
面会交流の取り決めをする上で、交渉が難航することは多くあります。
そして、なんとか合意にたどり着いたとしても、どういう合意書の内容にするかによって、その後約束が守られるかどうか、また、約束が守られない場合の間接強制の可否にも影響してきます。

きちんと知識をつけて慎重に話し合いを進めていくことが大切です。

アディーレ法律事務所では、離婚専属チームがご相談を承っております。
離婚にあたり、面会交流についてどのように取決めるべきかお悩みの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。

監修者情報

林 頼信

弁護士

林 頼信

はやし よりのぶ

資格
弁護士
所属
東京弁護士会
出身大学
慶應義塾大学法学部

どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。

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