離婚の財産分与の割合は「2分の1」が原則!変更できるケースと修正方法

- 公開日:2024年1月15日
- 更新日:2025年05月26日
離婚時の財産分与では、結婚生活のなかで夫婦が築いた財産を、原則として「2分の1」の割合で分配します。
この「2分の1」という割合は、特別な事情がない限り基本的に変更されることはありません。
しかし、具体的な事情によっては、割合を変更できるケースがあります。
この記事では、財産分与の割合に関する基本的なルールや、割合が修正される具体的なケース、割合の修正方法などをわかりやすく解説します。
財産分与で損しないためにも、ぜひ参考にしてみてください。
この記事を読んでわかること
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離婚の財産分与の割合はどう決まる?
離婚時の財産分与の割合は、夫婦それぞれの貢献度に応じて決まりますが、原則として「2分の1」ずつ分けることになります。
これは、「夫婦の婚姻中の貢献度は等しい」と考えられるためです。
一方で、夫婦で合意できるのであれば「2分の1」というルールにとらわれず自由に財産分与の割合を決められます。
また、合意さえあれば、財産分与をせずに離婚することも可能です(財産分与請求権の放棄)。
ただし、原則として取り決めた割合をあとから変更したり、財産分与請求権の放棄を撤回したりすることはできないため注意しましょう。
財産分与の割合に影響しない3つの要素
財産分与割合の原則である「2分の1」のルールは、特別な事情がない限り適用されます。
たとえば以下のような要素によって、ただちに財産分与の割合が修正されることはありません。
- 共働き・専業主婦(主夫)
- 子どもの有無
- 離婚原因の有無
それぞれ詳しく見ていきましょう。
共働き・専業主婦(主夫)
「夫婦の婚姻中の貢献度は等しい」という考え方は、夫婦共働きの場合や夫婦の一方が専業主婦(主夫)の場合も変わりません。
これは、夫が会社員として働き、妻が専業主婦として家事・育児をしている場合などでも、「夫は収入を得て、妻は家事・育児によって夫が収入を得るのをサポートした」と考えられるためです。
したがって、収入の有無や多少、役割に関わらず、原則として2分の1のルールが適用されます。
子どもの有無
子どもの有無にかかわらず、財産分与の割合は原則として2分の1です。
離婚後に子どもと一緒に暮らす場合も、それだけで財産分与割合が多く修正されることはありません。
ただし、子どもと暮らす親が長年、専業主婦(主夫)だったために、収入が安定せず生活に困窮するような場合には、もう一方の親が生計を補助する目的で2分の1を超えて財産分与をすることはあり得ます(扶養的財産分与)。
なお、子どもがいる場合には、財産分与とは別に養育費の取決めも必要です。
このとき、養育費と財産分与の取決めがそれぞれの条件に影響することはありません。
たとえば、養育費を受け取るという理由だけで、当然に財産分与割合が少なく修正されることはないということです。
離婚原因の有無
離婚原因の有無や内容によって、財産分与の割合が変わることはありません。
夫婦の一方に不貞行為などの離婚原因があったとしても、基本的には2分の1ずつ財産分与を行います。
ただし、離婚の際に慰謝料が問題になるケースで、慰謝料と財産分与を明確に区別せずに算定することは可能です。
たとえば、不貞行為のあった配偶者はもう一方の配偶者に対し、慰謝料を含めた金額の財産を多めに分けることになります(慰謝料的財産分与)。
財産分与の割合を修正できる5つのケース
一方で、例外的に財産分与の割合が修正されるケースもあります。
たとえば、以下のようなケースです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①夫婦の役割分担に大きな偏りがあるケース
夫婦の役割分担に大きな偏りがある場合、夫婦の財産形成に等しく貢献したとはいえません。
そのため、以下のような事情がある配偶者の財産分与割合は、少なく修正される可能性があるでしょう。
- 共働きだがまったく家事・育児をしなかった
- 正当な理由なく就労も家事・育児もしなかった など
②夫婦の一方の特殊な能力により財産を築いたケース
夫婦の一方の特殊な能力や技術などによって財産を築いた場合、一方の貢献度が極めて大きいと判断されることがあります。
たとえば、以下のような職業に就いて多額の財産を築いた配偶者の財産分与割合は、多く修正される可能性があるでしょう。
- 会社経営者
- 医師・弁護士などの専門職
- 芸術家・トップアスリート など
③夫婦の一方の特有財産を元手に財産を築いたケース
財産分与の対象となるのは、婚姻中に夫婦の協力によって形成・維持された実質的な「共有財産」に限られます。
夫婦の一方が結婚前から持っていた財産などは、「特有財産」として財産分与の対象になりません。
そして、特有財産を元手として財産を築いた「共有財産」がある場合、財産分与の割合が修正される可能性があります。
たとえば、以下のような事情がある配偶者の財産分与割合は、多く修正される可能性があるでしょう。
- 自宅の購入資金の大部分を結婚前に貯めたお金で支払った
- 結婚前から持っていた株式を運用して利益を得た など
④夫婦の一方の浪費で著しく財産を減少させたケース
夫婦の一方の浪費が原因で財産が減少したにもかかわらず、2分の1の割合で財産分与をするのは不公平です。
そのため、たとえば以下のように著しい浪費をしていた配偶者の財産分与割合は、少なく修正される可能性があるでしょう。
- パチンコや競馬などのギャンブルで財産を減少させた
- 過度にブランド品などを購入し財産を減少させた など
⑤婚前契約で財産分与の取決めをしていたケース
婚前契約とは、結婚後の生活に関するルールや離婚時の条件などについて、結婚前に取り交わしておく契約のことです。
この契約で取り交わした内容は、結婚したあとは原則として変更できません。
そのため、婚前契約で財産分与の割合を任意に取り決めていた場合には、契約の内容に沿って財産分与割合を修正することになります。
財産分与の割合の修正方法
財産分与の割合の修正方法について、法律上の明確な決まりはありません。
一般的には、以下のいずれかの方法で割合を修正することになります。
①すべての財産において割合を変更する
財産分与の対象となる実質的な「共有財産」の全体について割合を修正するのが、よくあるケースです。
たとえば、預貯金、株式、自動車、不動産などのすべての価値を合算したうえで、具体的な事情を踏まえ夫30%・妻70%などと取り決めることになります。
②特定の財産を切り分けて財産分与する
場合によっては、特定の財産についてのみ割合を修正する方法も考えられるでしょう。
たとえば、共有財産のなかで不動産だけは夫の貢献度が著しく大きいケースでは、不動産の分与割合のみ夫70%・妻30%などと修正し、その他の財産は2分の1ずつ分けるということもあり得ます。
離婚の財産分与は弁護士に相談するのがおすすめ
このように、夫婦や財産の状況によっては、複雑な財産分与が必要なケースもあります。
そのため、離婚の際は弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士に相談すると、以下のようなメリットがあります。
①財産分与の割合を適切に調整できる
財産分与の割合を修正すべきかどうかは、さまざまな事情を考慮して判断する必要があります。
また、適切な割合への修正ができないと、損をしてしまうことになりかねません。
弁護士であれば、個別の事情を考慮した適正な割合で交渉できます。
財産分与以外の離婚条件についても、できるだけ有利な取決めができるよう交渉してもらえるため、安心です。
②より正確な財産の調査ができる
より平等で適正な財産分与をするためには、夫婦の財産を正確に把握することが大切です。
しかし、持っている財産の種類が多岐にわたる場合、すべてを正確に把握するのは簡単なことではありません。
また、相手が財産の開示に応じないことや、財産を隠してしまうこともあり得ます。そのような財産を見逃すと、適正な財産分与ができずに損をしてしまいかねません。
弁護士に依頼すれば、「弁護士会照会」を利用して金融機関などに財産の情報開示を求めることができます。
照会には金融機関名など一部の情報が必要であり、必ず応じてもらえるわけではありませんが、より正確に財産を調査できる可能性が高まるでしょう。
③調停や裁判の対応を任せられる
財産分与などの離婚条件について話合いで合意できない場合、裁判所を通した手続である調停や裁判で解決を目指すことになります。
しかし、調停や裁判の手続には時間的・精神的に大きな負担がかかります。
弁護士に依頼すれば、万が一調停や裁判に発展してしまった場合にも対応を任せられるため、安心です。
弁護士が法的知識に基づいて適切な主張を行うことで、有利な条件で解決できる可能性も高まるでしょう。
まとめ
離婚時の財産分与の割合は原則として「2分の1」です。
この割合は、夫婦の役割や収入の差、子どもの有無、離婚原因の有無などによって変更されることは基本的にありません。
一方で、夫婦の貢献度に大きな偏りがある場合や、婚前契約などで財産分与割合を取り決めていた場合などには、例外的に割合の修正が認められるケースもあります。
ただし、ご事情によって複雑な判断が必要になるため、弁護士などに相談するのがよいでしょう。
アディーレ法律事務所では、離婚に伴う財産分与についてご相談を承っております。
「財産分与で損したくない」、「納得できる条件で離婚したい」とお考えなら、まずは一度ご相談ください。
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監修者情報

- 資格
- 弁護士
- 所属
- 東京弁護士会
- 出身大学
- 慶應義塾大学法学部
どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。