弁護士コラム

退職金が財産分与されるのはどんな場合?計算方法や注意点なども解説

退職金が財産分与されるのはどんな場合?計算方法や注意点なども解説
  • 公開日:2024年1月15日
  • 更新日:2024年07月22日

退職金の額は、人によっては数百万円であったり、数千万円であることがあります。
そのため、これを財産分与の対象にするかどうかによって、もらえる金額が大きく異なってくる可能性があります。

すべての退職金が財産分与の対象となるわけではありませんが、一定の条件を満たせば財産分与の対象となることがあります。

退職金の財産分与をする上で必要となる知識について、弁護士が解説します。

この記事を読んでわかること

  1. 退職金が財産分与の対象となるための条件
  2. 退職金の財産分与の時期
  3. 退職金の計算方法
  4. 退職金の財産分与の注意点
  5. 弁護士への依頼メリット

退職金が財産分与の対象となるための条件

すべての退職金が、財産分与の対象になるわけではありません。
いくつか条件があります。

退職金がまだ支給されていない場合

退職金がまだ支給されていない場合は、通常、次の条件を満たす必要があります。

条件1
夫婦双方または一方が、退職金が支給される会社で、婚姻期間中(※)に働いていること(※夫婦の協力関係がなくなった別居期間は除く)
条件2
将来その退職金が支給される可能性が高いこと

条件1 婚姻期間中の就労

財産分与の対象となるのは、「夫婦で協力して形成した財産」です。
そのため婚姻期間中(または婚姻~夫婦の協力関係がなくなった離婚前の別居時まで)に働いていた分に対する退職金のみが、財産分与の対象となります。

条件2 将来の支給確実性・裁判例

退職金が支給されるのが数年後といった場合には、将来支給される可能性が高いとして退職金が財産分与の対象となる可能性が高いです。

他方で、将来、退職金をもらえる可能性が高いとは言えない場合は、財産分与の対象とはなりません。長い年月の間に、企業自体が倒産してしまったり、解雇されたりするリスクがあるからです。

例えば、中小企業に勤めていて、退職金の支給が20年後といった場合は、財産分与の対象とはならない可能性が高いです。

どのくらい先の退職であれば財産分与の対象となるかは、ケースにより異なります。

中小企業勤務の場合は、退職金が支給されるのが数年先であると、退職金が財産分与の対象となる可能性が高くなります。

他方で、大企業勤務や公務員の場合は、退職までの期間が10年以上空いていても財産分与の対象となるケースもあります(なお、あまりに退職までの期間が長すぎると、やはり退職金は財産分与の対象とはなりません)。

将来の退職金が財産分与の対象になるのか、判断された裁判例を3つご紹介します。

信用金庫に30年以上勤務しているという事案において、退職金の支給を受ける蓋然性が高いため、当該退職金が財産分与の対象と認められました。

(東京家庭裁判所平成22年6月23日審判 平成21年(家)第8229号、平成21年(家)第8230号)

約2年後に退職予定である事案において、当該退職金が財産分与の対象と認められました。

(東京地方裁判所平成17年7月29日判決 平成15年(タ)第605号、平成16年(タ)第322号)

学校法人に勤務し、約9年後に退職予定という事案において、当該退職金が財産分与の対象と認められました。
ただし、今後確実に支給されるか、またその金額がいくらになるのか不確定要素があるとして、実際に退職金が支給されたときにはじめて退職金の財産分与を請求できると判断されました。

(東京地方裁判所平成17年4月27日判決 平成15年(タ)第341号)

退職金がすでに支給されている場合

退職金がすでに支給されている場合は、離婚時に残っている支給済みの退職金の内、婚姻期間(または婚姻~夫婦の協力関係がなくなった離婚前の別居時までの期間)に応じた金額が、財産分与の対象となります。

退職金が支給されてから長い時間が経っており、退職金が振り込まれた口座をみても、退職金がいくら使われて、いくら残っているのか判別できなくなっている場合は、その口座の預貯金額全額が財産分与の対象となることもあります。

入出金が頻繁にされている口座ほど、退職金とほかの預貯金の判別が難しくなる傾向にあります。
また、離婚時(または婚姻~夫婦の協力関係がなくなった離婚前の別居時)には退職金をすでに全部使い切ってしまっている場合には、財産分与の対象となる退職金はないということになります。

財産分与の時期、退職金の計算方法

まず、基本的には財産分与の対象となる財産の50%が、財産分与でもらえる額となります。
基本的には、夫婦の協力関係がなくなった別居時点(別居せず離婚した場合は離婚時点)が、退職金の額を評価する「基準時」となります。

では、いくらの金額の退職金が財産分与で清算対象となるのかご説明します。

退職金が支給前の場合

退職金が支給前の場合、裁判例上、財産分与の時期、財産分与で清算対象となる退職金の計算方法にはいく通りかあります。
例えば次のものがあります。

  1. 財産分与の時期
    将来退職金が支給されたとき
    退職金の計算方法
    (離婚時または別居時において任意退職すれば支給される退職金)×(夫婦が協力関係にあった婚姻期間÷当該勤務先での就労期間)

    ※夫婦の協力関係がなくなった別居期間は、通常婚姻関係には含みません。以下同じです。

  2. 財産分与の時期
    将来退職金が支給されたとき
    退職金の計算方法
    将来実際に支給された退職金の額×(夫婦が協力関係にあった婚姻期間÷当該勤務先での就労期間)
  3. 財産分与の時期
    現時点(離婚時、または離婚後の財産分与時)
    退職金の計算方法
    (定年退職時に支給される退職金予定額―中間利息(※))×(夫婦が協力関係にあった婚姻期間÷当該勤務先での就労期間)

    ※将来支給されるべきものを前倒しして財産分与として受け取るため、その分、利息として一定額が差し引かれます。そのため、将来受け取る場合に比べ、財産分与の額が少なくなる場合があります。

いずれかの方法で計算した退職金額の50%が財産分与としてもらえる金額になります。

話し合いで財産分与の額を決める際は、「退職金の予定額を、退職前に払えるのか」(払う側)、「将来本当に払ってもらえるのか」「現在受け取るともらえる金額が減る可能性があるがそれでいいのか」(もらう側)、という点を考慮して、計算方法を決めることになります。

訴訟の場合は、基本的には、判決確定時点で支払い義務が発生することが多いです。

退職金が支給後の場合

基本的には、夫婦の協力関係がなくなった時点(離婚時または別居時)に存在していた退職金の50%が、財産分与の対象となります。

例えば、2020年1月7日に、離婚を前提として別居したとします。
退職金は、2019年12月20日に婚姻後に就職した会社から500万円支給され、1月7日時点では450万円残っていたとします。
この場合、450万円が財産分与の清算対象となる退職金となり、この50%である225万円が財産分与でもらえる退職金の額となります。

退職金を財産分与するよう請求する方法

まずは、話し合いをして、退職金を財産分与するよう請求します。

話し合いでも合意できない場合は、通常、調停をすることになります。
離婚前ならば離婚調停の中で財産分与の話合いをし、離婚後であれば財産分与請求調停を申し立てて、その中で話合いをすることになります。
調停では、調停委員という裁判所から選任された人が間に入って、話し合いをすることになります。
調停では、財産分与に関する資料(退職金の金額を証明する資料など)の提出を求められることになりますので、準備しておきましょう。

調停でも話し合いがつかない場合は、審判や訴訟をすることになります。
審判や訴訟では、双方の主張や証拠を考慮して、裁判官が判断をします。

財産分与は、離婚から2年以内までに請求する必要あり

離婚した後に財産分与を請求する場合は、「2年」という請求期限に注意しましょう。
離婚した日の翌日から2年が経過すると、調停や審判で財産分与を請求する権利がなくなってしまいます(民法768条2項)。
話し合いにおいても、上記の請求期限が経過していることを理由に、財産分与を拒否されやすくなります。

また、現実的にも離婚してから時間が経てば経つほど、元配偶者と連絡不通になりやすくなったり、財産に関する証拠を手に入れることが難しくなります。

すでに離婚している場合は、早めに財産分与を請求するとよいでしょう。

退職金の財産分与の注意点:退職金の計算の難しさ

すでにご説明した通り、退職金の計算方法にはいく通りかあり、計算方法も複雑です。
そして、そもそも支給される(予定)の退職金の額はいくらか、ということ自体、調査が難しいことが少なくありません。

というのは、退職金の額は、勤務先に「退職金の額を教えてください」と質問しないと分からないことも多いですが、その質問をするのを嫌がる人は多いです。
退職金の額を質問すると、勤務先に退職したがっていると思われる可能性がありますし、私生活のごたごたを勤務先に言いたくないと考えている人も多いからです。

そのため、相手が提出したとしても、社内のネットワーク上で手に入れることができる、「退職金規程(就業規則)」であることが多いです。
この退職金規程は退職金の計算方法が書かれたものです。

ところが、この退職金規程は何条にもわたって記載されており、しかも記載されている内容が複雑である場合も少なくありません。
さらに、退職金規程だけでは足りず、給与明細やそのほかの明細も、相手に提出させて、それらを突き合わせて計算しなければならない場合があります。
(例:退職金額=ポイント×勤続年数 で計算する場合に、ポイントがいくらかというのが給与明細やそのほかの明細にしか書かれていない場合)。

相手が給与明細などの開示をしたがらない場合もあります。

このように、財産分与の清算対象となる退職金の計算の際は、

  • 退職金の計算に必要な資料を全部集める
  • 正確に退職金規程を読み取って計算する

ということが必要になることがありますので注意しましょう。

弁護士に退職金の財産分与を依頼するメリット

弁護士に退職金の財産分与を依頼するメリットとしては次のものがあります。

  • 相手(配偶者・元配偶者)と粘り強く交渉して、退職金計算に必要な資料を提出させる。
  • 相手が退職金計算に必要な資料を提出してこない場合でも、弁護士が23条照会(※)を使って、必要な資料を収集できる可能性がある。

    ※23条照会:弁護士が、弁護士会を通し、会社や官公庁などの団体に、照会(質問)をし、それに対して、原則として、照会を受けた側は回答する義務を負うというもの。
    ただし、強制力はなく、必要性や相当性を欠く照会の場合は、回答が得られない。

  • 複雑な退職金規程を正確に読み解いて、計算してくれる。
  • 退職金を財産分与としていつ受け取るのがよいか、それぞれの場合に応じて額がいくらになるのか、適切にアドバイスし、それを基に交渉してくれる。
  • 自身で相手方と直接交渉すると、ストレスや時間がかかるが、弁護士が代わりに交渉してくれるので、ストレスや時間を軽減できる。

財産分与の計算や請求が難しいと感じる方は、一度弁護士へ相談してみるとよいでしょう。

まとめ

今回の記事をまとめると次の通りです。

退職金がまだ支給されていない場合:退職金を財産分与の対象とするためには、次の条件を満たす必要がある。

条件1
夫婦双方または一方が、退職金が支給される会社で、婚姻期間中(※)に働いていること(※夫婦の協力関係がなくなった別居期間は除く)
条件2
将来その退職金が支給される可能性が高いこと

また、その退職金の財産分与をいつ(現時点か将来か)、いくらもらえるかはいく通りかの計算方法がある。

退職金が支給済みの場合:離婚時に残っている支給済みの退職金の内、婚姻期間(または婚姻~夫婦の協力関係がなくなった離婚前の別居時までの期間)に応じた金額が、財産分与の清算対象となる。

財産分与の対象となる退職金の計算は複雑で、手間がかかることが多いです。
自分の力だけでは難しいと感じた場合は、弁護士へ相談してみましょう。

アディーレ法律事務所には離婚専属チームがあります。
財産分与でお困りの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください(※)。

※相談内容によっては、ご相談を承れない場合があります。

監修者情報

林 頼信

弁護士

林 頼信

はやし よりのぶ

資格
弁護士
所属
東京弁護士会
出身大学
慶應義塾大学法学部

どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。

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