浮気・不倫の慰謝料請求の時効は何年?時効のパターンや時効を止める方法を解説
配偶者の浮気・不倫が発覚した場合、あなたが負った精神的苦痛に対して慰謝料を請求できますが、「請求すべきか悩む」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、長期間、浮気・不倫の慰謝料を請求しないままでいることはおすすめできません。
これは、慰謝料を請求する権利には時効があるためです。
このページでは、浮気・不倫の慰謝料請求の時効について解説します。
時効が完成する期間や時効を「止める」方法、時効前に慰謝料請求するためのポイントなどを知っておきましょう。
目次
浮気・不倫の慰謝料請求の時効とは
浮気・不倫の慰謝料を請求できる権利は、一定期間を経過すると消滅します(時効の完成)。
時効が完成すると慰謝料を支払ってもらうことが難しくなるため、注意が必要です。
浮気・不倫の慰謝料請求の消滅時効は3年または20年
浮気・不倫の慰謝料請求の時効は、法律上、以下のいずれか短いほうで完成します。
- あなたが配偶者の不貞行為および不倫相手を知ったときから3年間
- 不貞行為があったときから20年間(※)
つまり、上記のいずれかの期間を過ぎたとき、浮気・不倫の慰謝料を請求できなくなるということです。
なお、「不倫相手を知ったとき」とは、不倫相手の名前や住所などを特定できている状態を指します。
「不倫相手の顔を知っている」だけでは、3年という時効期間のカウントは開始されません。
※令和2年3月31日までに20年が経過している場合は、改正前の民法が適用され、除斥期間の経過により慰謝料は請求できません。
浮気・不倫の慰謝料請求の消滅時効の起算点
消滅時効は、以下のように何に対する慰謝料を請求するかによって、カウントが始まる時期(起算点)が異なります。
時効直前!浮気・不倫の慰謝料の時効を「止める」方法は?
消滅時効には、一定の方法をとることで完成を遅らせる制度(完成猶予・更新)が設けられています。
慰謝料を請求する際に時効の完成が迫っている場合は、以下のいずれかの方法で時効を止めましょう。
- 裁判を起こして慰謝料請求する
- 内容証明郵便などで慰謝料請求する
- 慰謝料について協議を行う旨の合意をする
- 不倫相手に慰謝料を支払うことを認めさせる
- 仮差押え・仮処分をする
それぞれ詳しく解説します。
裁判を起こして慰謝料請求する
裁判を提起すると、提起した時点で時効の完成が猶予され、一時的に時効の進行を止めることができます。
確定判決により権利が確定したとき、または裁判上の和解をしたときは時効が更新され、新たに時効が進みます。
内容証明郵便などで慰謝料請求する
内容証明郵便などを送付して慰謝料を請求(催告)することでも、時効の完成が猶予されます。
時効の進行が止まるのは、催告したときから6ヵ月間です。まずはその間に交渉で解決を図ります。
ただし、相手方が交渉に応じない場合などに再び内容証明郵便を送付しても、さらに時効の完成が猶予されることはありません。
そのため、交渉で解決できない場合は6ヵ月が経過する前に裁判を起こします。
慰謝料について協議を行う旨の合意をする
浮気・不倫の慰謝料の支払いについて話し合うことに合意ができた場合、その旨を書面または電磁的記録に残すことで時効の完成が猶予されます。
時効の進行が止まる期間は、以下のうちいずれか早いときまでです。
- 合意があったときから1年間
- 合意において定められた協議期間(1年未満)
- どちらかが協議の続行を拒絶する旨の書面による通知をしたときから6ヵ月間
上記の期間で話合いがまとまらない場合、再び協議を行う旨の合意ができれば、時効の完成がさらに最長5年猶予されます。これは、催告との大きな違いといえるでしょう。
協議を行う旨の合意による時効の完成猶予の規定は、2020年4月の民法改正により新たに設けられたものです。
これまで話合いがまとまらず時効の完成が近づいた場合には、裁判所を通した手続を取らざるを得ませんでした。しかし、民法改正により、話合いを継続できるようになったのです。
不倫相手に慰謝料を支払うことを認めさせる
不倫相手に浮気・不倫の慰謝料を支払う義務があると認めさせる(債務承認)ことでも、時効の完成が猶予されます。
そして、不倫相手が慰謝料の支払いを認めた場合には、時効が更新されたとして、新たに時効が進行します。
不倫相手に慰謝料を支払うことを認めさせるのは口頭でも構いません。
しかし、言った・言わないでトラブルになることを防ぐためにも、書面に残しておくのがおすすめです。
なお、慰謝料を支払うと約束させる以外にも、以下の場合には「慰謝料の支払いを認めている」とみなされます。
- 不倫相手が慰謝料の一部を支払った場合
- 不倫相手が慰謝料の支払期限の延長を求めてきた場合
- 不倫相手が慰謝料の減額を求めてきた場合
強制執行・仮差押え・仮処分をする
すでに慰謝料を支払うことに合意しているにもかかわらず不倫相手が慰謝料を支払わない場合は、強制執行・仮差押え・仮処分によって時効の完成が猶予されることがあります。
手続の種類 | 手続の内容 |
---|---|
強制執行 | 確定判決や強制執行認諾文言付の公正証書で合意した慰謝料を支払わない場合に、不倫相手の財産を強制的に差し押さえる手続 |
仮差押え | 裁判を提起することを前提として、財産隠しを防止するために不倫相手の財産を仮に差し押さえる手続 |
仮処分 | 裁判を提起することを前提として、仮差押えができないものについて、仮に処分の禁止(現状維持の命令)を求めたり、一定の地位を認めさせたりする手続 |
なお、交渉で慰謝料を請求している段階や、支払いの合意をしていない段階でこれらの手続によって時効を止めることはできないため、注意しましょう。
時効の完成前に浮気・不倫の慰謝料を請求するためのポイント
消滅時効によって慰謝料請求できなくなることを防ぐためにも、配偶者の不倫や不倫相手がわかったら、できるだけ早く浮気・不倫の慰謝料を請求しましょう。
ただし、慰謝料を請求する前に、浮気・不倫の証拠を確保しておく必要があります。
証拠がないと、相手方が「不倫なんてしていない」と慰謝料の支払いを拒否してくるおそれがあるためです。また、裁判によって慰謝料を認めてもらうことも難しくなります。
証拠の具体例や集め方など、詳しくは以下のページも参考にしてみてください。
時効の完成後でも、浮気・不倫の慰謝料を受け取ることは問題ない
時効が完成したあとでも相手方に慰謝料を支払う意思があれば、慰謝料を受け取ることに法律上の問題はありません。
また、たとえば不倫相手が時効の完成に気づかずに慰謝料の支払いを認めた場合、あとで時効に気づいても、原則として時効の完成を主張して支払いを拒否することはできません。
そのため、時効が完成したあとに慰謝料を受け取ることになります。
浮気・不倫の慰謝料の時効に関するよくある質問
浮気・不倫の慰謝料の時効について、お客さまからよく寄せられる3つのご質問にお答えします。
最近発覚した10年前の浮気・不倫に対し、慰謝料は請求できますか?
現在から3年前までの期間に浮気・不倫の事実や不倫相手を知った場合には、慰謝料を請求できる可能性があります。
5年前に知った配偶者の浮気・不倫が現在も継続している場合、今からでも慰謝料請求できますか?
現在も不倫が継続している場合には、慰謝料を請求できる可能性があります。
5年前にも不倫が発覚したことで、5年より前の部分はすでに時効が完成していますが、最終的に不倫が発覚したときから新たに時効がカウントされることにより、継続中の不倫の時効は完成していないためです。
浮気・不倫が原因で離婚した場合、離婚から3年以内なら不倫相手に慰謝料を請求できますか?
浮気・不倫の事実と不倫相手を知ってから3年を過ぎている場合、離婚から3年以内でも不倫相手への慰謝料請求はできません。
これは、不倫相手への慰謝料請求の時効は、浮気・不倫の事実と不倫相手を知ったときから3年、または不貞行為があったときから20年で完成するためです。
ただし、離婚から3年以内であれば元配偶者への浮気・不倫の慰謝料請求はできます。
あなたの状況によって、具体的な解決方法や適切な慰謝料請求の進め方は異なります。自分で判断せず、まずは弁護士ご相談ください。
浮気・不倫の慰謝料の時効が気になる場合は、弁護士に相談しよう
浮気・不倫の慰謝料は、原則として不倫相手を特定してから3年間を過ぎると請求できなくなります。
そのため、不倫が発覚したらできるだけ早く慰謝料を請求しましょう。
3年間は意外と早く過ぎてしまいます。自分で対応しようとしても、証拠集めや交渉がスムーズに進まない場合もあるでしょう。
そのため、不倫相手への慰謝料請求をお考えであれば、弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士に相談すれば、状況に合わせて適切に対応してもらえるため、時効が完成する前にスムーズな解決を目指すことができるでしょう。
アディーレ法律事務所では、浮気・不倫の慰謝料請求に関するご相談は何度でも無料です。浮気・不倫の慰謝料請求でお悩みの方や、時効の完成が迫っている方がいらっしゃれば、まずはお気軽にご相談ください。
監修者情報
- 資格
- 弁護士
- 所属
- 第一東京弁護士会
- 出身大学
- 法政大学法学部、学習院大学法科大学院
私が弁護士を志したきっかけは、日常生活の中で時々、法的な問題に直面することがあったことです。法律というものは難解なものであると思われている側面が強いと思います。私も勉強するまでは、ちょっと近づきがたいものだと思っていました。しかし、弁護士となったからには、依頼者の方が何に悩んでいて何を求めているのかをしっかりと共有し、少しでも分かりやすく法的な問題点をご説明し、今後どのように問題解決に向けていくことが出来るのかを一緒に考えていきたいと思っております。