婚姻費用の分担請求調停の流れは?聞かれることや有利に進めるポイント

- 公開日:2025年10月9日
- 更新日:2025年10月09日
夫婦が別居する際の生活費(婚姻費用)について、話し合っても「支払いに応じてもらえない」、「金額が決まらない」という場合には、婚姻費用の分担請求調停を申し立てることになります。
しかし、婚姻費用の分担請求調停をどのような手続で、どのように進めていけばいいのかわからず不安に思われている方も多いのではないでしょうか。
そこでこのコラムでは、婚姻費用の分担請求調停に必要な書類や費用、手続の流れをはじめ、手続のなかで聞かれることなどを解説します。
婚姻費用の分担請求調停を有利に進めるポイントも紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
この記事を読んでわかること
\専門スタッフが丁寧に対応します!/
婚姻費用の分担請求調停とは
婚姻費用の分担請求調停とは、婚姻費用(別居中の生活費)の分担について家庭裁判所を介して話し合い、合意を目指す手続です。
婚姻費用について夫婦で話し合ったものの、「支払いに応じてもらえない」、「金額が決まらない」という場合は、婚姻費用の分担請求調停を申し立てることになります。
婚姻費用の分担請求調停に必要な費用
婚姻費用の分担請求調停を申し立てる際には、以下の費用がかかります。
項目 | 金額 |
---|---|
収入印紙代 | 1,200円 |
郵便切手代 | 1,000円程度(裁判所によって異なる) |
戸籍謄本取得費用 | 450円 |
また、弁護士に依頼する場合には、上記に加えて弁護士費用もかかります。
具体的な金額は依頼する弁護士や法律事務所などによって異なりますが、おおよその目安は以下のとおりです。
項目 | 金額(目安) |
---|---|
相談料 | 30分5,000円~1万円程度 |
着手金 | 10万円~40万円程度 |
報酬金 | 20万円以上(※) |
※固定報酬金に加え、得られた経済的利益に対して10〜20%程度の変動報酬金が発生することが多いです。
そのほか、日当や実費、事務手数料などが発生する場合もあります。
婚姻費用の分担請求調停に必要な書類
婚姻費用の分担請求調停を申し立てる際には、以下の書類が必要です。
書類 | 入手場所 |
---|---|
申立書 | 裁判所ホームページ |
申立書の写し | - |
夫婦の戸籍謄本 (全部事項証明書) |
市町村役場 |
申立人の収入がわかる資料 (源泉徴収票、給与明細、確定申告書等) |
- |
このほか、裁判所によっては事情説明書、進行に関する照会回答書、連絡先等の届出書などの提出を求められる場合もあります。
詳しくは、調停を申し立てる家庭裁判所のホームページなどをご確認ください。
婚姻費用の分担請求調停の流れ
婚姻費用の分担請求調停は、おおまかに以下の流れで進みます。
婚姻費用の分担請求調停の流れ

以下で詳しく見ていきましょう。
家庭裁判所への申立て
まずは家庭裁判所へ必要書類を提出し、婚姻費用の分担請求調停を申し立てます。
一般的には、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てますが、夫婦間で合意できれば、ほかの家庭裁判所に申し立てることも可能です。
裁判所の管轄区域は、裁判所のホームページでご確認ください。
申立てが受理されると、裁判所から第1回期日を知らせる調停期日通知書(呼出状)が届きます。
第1回の調停期日は、申立てからおよそ1ヵ月後に指定されることが多いです。
第1回期日
調停期日には、調停委員が夫妻それぞれから話を聞き、意見の調整をしていきます。
1回の調停期日は2時間程度かかることが多いです。
なお、調停では夫婦が顔を合わせないよう、それぞれ別の待合室に待機し、別々に調停室に入るなどの配慮がなされています。
鉢合せを防止するため、調停の開始・終了時間をずらしてもらえる場合もあります。
第2回以降の期日
事前に十分な話合いができていたようなケースでない限り、1回の期日で解決することはあまりありません。
そのため、調停期日は月1回程度のペースで複数回開かれることが一般的です。
必要に応じて、およそ1ヵ月~1ヵ月半後に次回の期日が設けられます。
【合意できた場合】調停成立
話合いがまとまり、婚姻費用の金額や支払方法などについて合意できた場合、「調停成立」です。
合意した内容は「調停調書」という書面にまとめられます。
この調停調書は、確定した判決と同じ効力を持つもの(債務名義)です。
債務名義があれば、もし配偶者が婚姻費用の支払いを怠った場合も、調停調書に基づいて給与の差押えなどの手続をとることができます。
【合意できない場合】審判へ移行
何度か調停期日を重ねても合意できる見込みがない場合、「調停不成立」となり、自動的に「審判」という手続に移行します。
審判は、裁判所が双方の主張や提出された資料など、一切の事情を考慮して、支払うべき婚姻費用の金額などを判断する手続です。
裁判所による判断(審判)に不服がなければ、審判は確定します。
婚姻費用の分担請求調停で聞かれること
婚姻費用の分担請求調停では、調停委員から以下のようなことを聞かれることが多いです。
- 婚姻費用に関する希望
- 夫婦の収支や資産の状況
- 子どもの有無
- 結婚生活の状況
- 調停の申立てに至った経緯
それぞれ詳しく解説します。
婚姻費用に関する希望
婚姻費用の分担請求調停では、裁判所が公表している「婚姻費用算定表」を使用して婚姻費用の金額を決めるのが一般的です。
ただし、お互いに合意できればその限りではありません。
そこで、まずは希望する金額や支払方法、支払期間などについて聞かれます。
そのため、具体的な事情をふまえてご自身の主張をまとめておきましょう。
なお、標準的な生活状況を想定した婚姻費用の金額の目安は、以下の「婚姻費用かんたん自動計算ツール」でも確認できます。
夫婦の収支や資産の状況
婚姻費用の金額は、夫婦の収支や資産の状況を考慮して決まります。
そのため、調停では以下のようなことを聞かれるでしょう。
- 夫婦それぞれの収入
- 夫婦それぞれの職業(給与所得者または自営業者)
- 住宅ローンなどの有無
- 教育費や医療費などの支出 など
具体的な資料の提出を求められることもあるため、源泉徴収票や確定申告書などを用意しておくことをおすすめします。
子どもの有無
婚姻費用の金額は、子どもの有無によっても変わります。
そのため、以下の質問に答えられるようにしておきましょう。
- 子どもの人数
- 子どもそれぞれの年齢
- 夫婦のどちらが子どもと暮らすか
また、「子どもが私立学校に通っている」、「子どもに病気がある」など、特別な費用がかかる状況かどうかも確認されます。
特別な教育費や医療費は、裁判所による婚姻費用の算定基準では想定されておらず、別途支払いを検討する必要があるためです。
結婚生活の状況
婚姻費用の分担請求調停では、結婚生活の状況について以下のようなことを聞かれます。
- 同居期間中の生活費の負担状況
- 夫婦関係が悪化した理由
- 別居に至った経緯 など
たとえば、妻に収入がなく、主に夫の収入で暮らしていたような場合、妻から夫に対する婚姻費用の請求は認められやすくなるでしょう。
また、夫婦の一方に不倫やDVなど夫婦関係の悪化や別居に至る原因があった場合、原因を作った配偶者(有責配偶者)からの婚姻費用の請求は認められない、または減額される可能性があります。
ただし、別居の際に有責配偶者が子どもと暮らす場合、子どもの養育費に相当する額は認められるでしょう。
調停の申立てに至った経緯
婚姻費用の分担請求調停では、以下のようになぜ調停の申立てに至ったのか聞かれることもあります。
- 夫婦間の話合いをしたかどうか
- 話合いをした場合は、話合いがまとまらなかった理由
- 話合いをしていない場合は、話合いができなかった理由
裁判所はこれらの経緯を踏まえ、合意へ向けた調整をしていきます。
婚姻費用の分担請求調停は離婚調停と同時に申立てできる
婚姻費用の分担請求調停は、離婚調停と同時に申し立てることも可能です。
離婚調停と同時に申立てを検討するケース
離婚調停を申し立てたタイミングで別居を開始する場合は、同時に婚姻費用の分担請求調停を申し立てるとよいでしょう。
このようなケースでは、争いが長期化すると別居期も長引き、生活が困窮してしまう可能性があるためです。
同時に婚姻費用の分担請求調停を申し立てることで、まずは別居中の生活費について話合いの場を設けられます。
婚姻費用の支払いが認められれば、離婚までのお金の不安が軽減され、落ち着いて離婚調停に臨めるようになるでしょう。
離婚調停と同時に申立てをするメリット
離婚調停と婚姻費用の分担請求調停を同時に申し立てるメリットは、別々のタイミングで申し立てるよりも時間や労力がかからないことです。
たとえば、戸籍謄本や収入がわかる資料など、婚姻費用の分担請求調停の申立てに必要な書類の多くは、離婚調停の申立てにも使えます。
そのため、同時に申立てを行えば、必要書類を何度も用意する必要がなくなります。
また、離婚調停と婚姻費用の分担請求調停を同時に申し立てることで、配偶者が離婚に応じやすくなる可能性もあるでしょう。
あなたに対する婚姻費用の支払いが先に認められた場合、配偶者は毎月の婚姻費用を支払いながら離婚調停を続けることになり、金銭的な負担が大きくなるためです。
婚姻費用の分担請求調停を有利に進めるポイント
婚姻費用の分担請求調停を少しでも有利に進めるためには、以下の3つのポイントを押さえておくことが大切です。
- 事前に準備をしておく
- 感情的にならない
- 弁護士に相談する
それぞれ詳しく解説します。
事前に準備をしておく
まずは、「婚姻費用の分担請求調停で聞かれること」を参考に、ご自身の希望(婚姻費用の金額や支払方法)や、夫婦の状況などを整理しておきましょう。
希望する金額については、「なぜその金額が必要なのか」がわかるよう、具体的な事情をふまえて主張をまとめることが大切です。
また、夫婦それぞれの収入がわかる資料(源泉徴収票、給与明細、確定申告書など)も準備しておくと、話がスムーズに進みやすくなります。
感情的にならない
調停の場では、配偶者に対する不満から、感情的になってしまうこともあるかもしれません。
しかし、調停はあくまでも合意に向けて冷静に話合いを進める場です。配偶者の悪口を言ったり、自分の主張をまくしたてたりしても、調停委員によい印象は与えません。
感情的になってしまうと、あなたのお気持ちが正しく伝わらないおそれもあります。
そのため、できるだけ冷静に、筋道を立てて主張するよう心がけましょう。
弁護士に相談する
調停手続では、調停委員が間に入ってくれるものの、うまく意見を主張できないと不利な条件で調停成立してしまうこともあります。
そのため、自分だけで調停の手続を進めることに不安がある場合は、弁護士に相談・依頼することも検討するとよいでしょう。
弁護士であれば、あなたにとって有利な条件で合意できるよう、法的知識に基づいた適切な主張をすることが可能です。
また、裁判所に提出する書面の作成や調停への同席・代理出席(※)もしてもらえるため、時間的・精神的負担も軽減されます。
※電話会議やWeb会議による同席の場合もあります。
まとめ
婚姻費用は、別居中の生活を維持するための大切なお金です。
夫婦間の話合いで解決が難しい場合は、婚姻費用の分担請求調停を申し立てることも検討しましょう。
調停では、具体的な資料に基づきご自身の主張をしっかりと伝えることが重要です。
もし、ご自身で手続を進めることに不安やストレスを感じる場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
アディーレ法律事務所なら、別居に伴う婚姻費用の請求に関するご相談は無料です。
「適正な金額がわからない」、「自分で対応するのは不安」とお悩みであれば、まずは一度ご相談ください。
\専門スタッフが丁寧に対応します!/
監修者情報

- 資格
- 弁護士
- 所属
- 東京弁護士会
- 出身大学
- 慶應義塾大学法学部
どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。