慰謝料を請求しないほうがいいケースがあるのはなぜ?9つのケースを解説

夫や妻の浮気・不倫が発覚したけれど、「慰謝料を請求すべきかわからない。請求しないほうがいいケースはあるの?」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
不倫されたことで受けたショックに対して慰謝料を請求するのは正当な権利です。しかし、状況によっては、慰謝料請求しないほうがいいケースがあります。
たとえば、証拠が不十分な場合やW(ダブル)不倫の場合などは、慰謝料請求によってかえって自分が損をしてしまうおそれがあるため、請求しないほうがいいケースにあたります。
とはいえ、慰謝料請求しないことで怒りを引きずってしまったり、浮気・不倫が再発したりするデメリットもあるため、慎重な判断が必要です。
そこでこのコラムでは、慰謝料請求しないほうがいいケースの具体例に加え、請求しないメリット・デメリットや、請求しない場合に取るべき行動について解説します。ご自身が請求すべきか客観的に判断できるチェックリストもご用意しましたので、後悔のない選択をするためにぜひお役立てください。
目次
この記事を読んでわかること
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慰謝料請求しないほうがいい9つのケース
慰謝料請求をしないほうがいいケースとは、そもそも証拠が足りない場合や、W不倫、職場不倫の場合、DVのおそれがある場合などです。
状況によっては慰謝料を受け取るメリットよりも、金銭的マイナスや精神的・社会的リスク(職場での不利益など)が上回る可能性があるため、慎重な判断が必要です。
それぞれのケースについて、具体的に見ていきましょう。
証拠がない・不十分
浮気・不倫の証拠がない場合や不十分な場合、慰謝料請求が認められず費用だけがかかってしまうおそれがあります。
不倫相手が素直に不倫を認めて支払ってくれるのであれば、証拠がなくても慰謝料請求自体は可能です。しかし、相手が「不倫はしていない」と反論してきた場合、最終的には裁判で決着をつけなければならない可能性があります。
裁判で解決をする場合、慰謝料を請求する側が不倫の事実を証明できなければ、請求は認められません。請求が認められなければ、裁判にかかる費用や時間、労力のみがかかってしまいます。
そのため、有効な証拠が集められていない段階ですぐに慰謝料を請求することは避けたほうがいいでしょう。
慰謝料の金額が期待できない
支払ってもらえる慰謝料の金額が裁判などの費用を上回ってしまうケースでは、慰謝料を請求することで金銭的に損してしまうおそれがあります。
浮気・不倫の慰謝料の裁判上の相場は、およそ数十万円~300万円の範囲内であることが一般的です。実際の慰謝料の金額は、精神的苦痛の程度や離婚の有無など、個別の事情を考慮して決まるため、場合によっては数十万円にとどまることもあるでしょう。
そのため、請求にかかる費用や時間、労力を考慮して慰謝料を請求しないほうがいいと判断するケースもあり得ます。
浮気・不倫の慰謝料相場については、以下のコラムでご紹介している、過去の判例も参考にしてみてください。
自分の配偶者(夫・妻)に非がある
あなたの配偶者にのみ非がある場合、配偶者に対しては慰謝料を請求できても不倫相手に対して慰謝料を請求できない可能性があります。
たとえば、夫や妻が不倫相手に肉体関係を強制したケースや、不倫相手に「独身」だとウソをついていたケースなどが考えられます。この場合、反対に相手方から慰謝料を請求されるおそれもあるため、注意しましょう。
W(ダブル)不倫
あなたの配偶者の不倫相手が既婚者であるW不倫のケースで離婚をしない場合には、慰謝料を請求しないほうがいい場合があります。
これは、あなたが不倫相手に慰謝料を請求したことをきっかけに、あなたの配偶者が不倫相手の配偶者から慰謝料を請求される(反対請求)おそれがあるためです。

たとえば以下のような事情があるケースでは、あなたの配偶者が支払う慰謝料のほうが高くなってしまい、結果的に家計単位で見るとマイナス(損)になる可能性があります。
- あなたたち夫婦より相手夫婦の婚姻期間のほうが長い
- 相手方夫婦は不倫が原因で離婚するが、あなたたち夫婦は離婚しない
- あなたの配偶者が不倫を主導した など
ただし、反対請求されないよう法律上の対応をすることができる可能性もあるため、弁護士に相談するといいでしょう。
W(ダブル)不倫について詳しくは、以下のコラムでも紹介していますので参考にしてみてください。
配偶者と不倫相手が同じ職場(社内不倫)
社内不倫であなたが離婚をしない場合には、不倫相手に対して慰謝料請求を行うとあなたの配偶者の立場が悪くなる可能性があります。
不倫相手に慰謝料請求を行うことで、会社に不倫の事実が知れ渡る可能性があります。その結果、あなたの配偶者が会社に居づらくなり退職に追い込まれたり、降格や転勤命令を受けたりするなどの不利益を受ける可能性があります。
不倫前から夫婦関係が破綻していた
配偶者の浮気・不倫が始まる前から、すでに夫婦関係が完全に破綻していた場合、慰謝料は認められない可能性が高いです。
慰謝料は、円満だった夫婦関係を壊され、精神的苦痛を受けたことに対する損害賠償です。浮気・不倫をはじめた時点で長期間の別居状態にあるなど、浮気・不倫の時点で守るべき「円満な夫婦関係」が存在していなかったと判断されれば、請求しても時間や労力の無駄になってしまうおそれがあります。
夫婦関係を修復したい
夫婦関係を修復したいのであれば、配偶者に対する慰謝料請求は避けたほうがいいでしょう。
配偶者に対して慰謝料請求を行うと、配偶者の態度が硬化し、かえって夫婦関係に深い溝を作ってしまうリスクがあります。また、夫婦間で慰謝料のやり取りをしても、「家計のお金が右のポケットから左のポケットへ移動しただけ」となり、実質的な経済的メリットはほとんどありません。
このようなケースでは、配偶者に金銭を要求する代わりに、二度と不倫を繰り返さないことを明確に記した「誓約書」を作成してもらうことや「不倫相手にのみ慰謝料を請求する」という選択肢もあります。
離婚を優先させたい
1日でも早く配偶者と離婚したい場合、浮気・不倫の慰謝料請求の優先度を下げるという選択肢もあり得ます。
離婚の際はほかにも取り決めるべき条件が多く、慰謝料を請求することで離婚問題が長期化するケースもあるためです。
浮気・不倫の慰謝料は、証拠や条件が揃っていれば時効を迎えていない限りいつでも請求可能です。そのため状況によっては、離婚後に浮気・不倫の慰謝料を請求するという方法も考えられるでしょう。
相手から暴力や嫌がらせを受けるリスクがある
配偶者が日頃から暴力的であったり(DV)、不倫相手が攻撃的な人物であったりする場合、慰謝料請求をきっかけに危害を加えられる危険性があります。
この場合は、ご自身の身を守るために慰謝料請求を断念するか、慰謝料請求をするにしてもご自身で直接交渉することは避け、弁護士を通じて対応するようにしましょう。
【簡易チェックリスト】慰謝料請求すべきか迷ったときの判断基準
自分が慰謝料を請求すべきか迷った際は、以下のセルフチェックリストを活用してみてください。
- 浮気・不倫の証拠(肉体関係があったことがわかるLINEなど)をもっていない
- (離婚しない場合)W不倫による逆請求や、社内不倫による配偶者の降格・退職などのリスクがある
- 浮気・不倫が始まる前から長期間の別居など夫婦関係が冷え切っていた
- 慰謝料請求よりも離婚成立を優先させたい
- 配偶者や不倫相手から暴力(DV)や嫌がらせを受ける危険性がある
1つでも「はい」がある場合は、そのまま慰謝料請求に踏み切ると損をしてしまう可能性があります。慰謝料請求をする前に慎重な判断が必要でしょう。
慰謝料請求をしないメリット
慰謝料請求しないことで、それに伴うストレスや時間・お金がかからないなどのメリットがあります。
慰謝料請求に伴うストレスがない
慰謝料を請求しないという選択をした場合、相手方とやり取りする必要もないため、ストレスを感じることはないでしょう。
浮気・不倫の慰謝料を請求したからといって、相手方が素直に浮気・不倫を認め慰謝料を支払ってくれるとは限りません。お互いの主張が食い違ったり、感情的になったりすることでトラブルが長期化し、ストレスを抱えてしまうことがあります。
時間やお金がかからない
浮気・不倫の慰謝料を請求しない場合には、証拠の収集や相手方との交渉にかかる時間やお金がかかりません。
状況によっては裁判費用や、弁護士に依頼する場合には弁護士費用がかかる可能性もあるでしょう。支払われる慰謝料が、かかった費用を下回ってしまうケースもあるため、注意が必要です。
慰謝料請求をしないデメリット
確かに慰謝料を請求しないほうがいいケースがあり、請求しないメリットもあります。しかし、慰謝料請求しないことで怒りや悔しさを発散できず、さらには浮気・不倫が再発するなどのデメリットもあるため、覚えておきましょう。
怒りや悔しさを発散できない
慰謝料を請求しない場合には、あなたの怒りや悔しさを発散できないというデメリットがあるといえるでしょう。
そもそも浮気・不倫によって家庭を壊されたら、「許せない」、「悔しい」と思うのは当然です。「どうにかして不倫相手を懲らしめたい」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、あなたが受けた精神的苦痛に対して法的に責任を取らせることができるのは、慰謝料請求だけです。直接不倫相手に接触して危害を加えたり、周囲に不倫をばらしたりする行為は、反対にあなたが法的責任を問われてしまうおそれもあるため、やってはいけません。
そのため、慰謝料を請求しない場合には、あなたの怒りや悔しさを発散できないままとなり、気持ちに区切りをつけられないままとなってしまうおそれがあります。
浮気・不倫が再発するおそれがある
不倫を追及せずに終わってしまえば、不倫関係を続けたり、不倫を何度も繰り返されたりするおそれがあります。
慰謝料請求には、あなたの配偶者と不倫相手に対して強い反省を促す側面もあります。
また、慰謝料を請求して解決を図る際には、示談書(合意書)のなかに「今後二度と会わない・連絡を取らない」という接触禁止の条項や、約束を破った場合の違約金を盛り込むことで、浮気・不倫の再発防止にもつながっているのです。
しかし、慰謝料請求をしないままだと、相手に「バレても大事にはならない」「口先で謝れば済む」と甘く見られてしまいがちです。結果として、ほとぼりが冷めたころにまた別の相手と浮気・不倫を繰り返したりする危険性が高まってしまいます。
慰謝料請求をしない場合に取るべき行動
慰謝料を請求しないと決めた場合でも、将来のトラブルや不倫の再発に備えて「証拠の収集・保管」と「誓約書の作成」の2点は必ず行いましょう。
また、慰謝料と財産分与を明確に区別せずにまとめて請求するという方法もあります。
証拠の収集・保管をする
現時点で慰謝料を請求しないとしても、今後、「やっぱり請求したい」という気持ちが出てくるかもしれません。不倫の慰謝料請求には時効(原則として不倫の事実と相手を知ってから3年)がありますが、期間内であれば後からでも請求可能です。
そのため、できるだけ証拠を収集し、保管しておくことをおすすめします。
証拠になるものの例や証拠の集め方については、以下のページも参考にしてみてください。
誓約書の作成をする
離婚しない場合には、浮気・不倫の再発を防ぐためにも、配偶者や不倫相手に不倫関係を解消する旨の誓約書を作成してもらうことも検討するといいでしょう。
誓約書には、配偶者・不倫相手と話し合ったうえで以下のような内容を記載します。
- 不倫の当事者が認めた不倫の事実や内容
- 不倫関係を解消すること
- 今後二度と会わないこと
- 約束を破ったときの違約金 など
誓約書を作成しておけば、将来、不倫が原因で離婚する場合に有利な証拠になるというメリットもあります。
財産分与の条件で調整する
離婚をする場合には、慰謝料という名目ではなく財産分与の条件で調整するという方法もあります。
たとえば、夫婦の財産を分ける「財産分与」において、あなたの受け取る割合を相場より多くしてもらったり、慰謝料と財産分けを厳密に区別せずまとめて支払いを求めたりする(慰謝料的財産分与)ことも可能です。
不倫相手だけに慰謝料を請求する
「離婚はしたくないが、不倫相手にはどうしても責任を取らせたい」という場合は、配偶者には請求せず、不倫相手にのみ慰謝料を請求することができます。
この際、弁護士を代理人に立てて交渉すれば、夫婦関係にできるだけ波風を立てずに不倫相手にプレッシャーを与え、慰謝料を回収することができる可能性があります。
慰謝料請求しないほうがいいか迷ったら弁護士へご相談を
慰謝料を請求しないほうがいいか迷った場合は、後悔しないためにも弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士に相談すれば、個別の事情やあなたの希望を考慮してアドバイスをしてもらえるため、あなたにとって最善の選択ができる可能性が高まります。
相談した結果、慰謝料を請求する場合も、弁護士に依頼すれば解決へ向けて一貫してサポートしてもらえるため安心です。
弁護士であれば、あなたに代わり不倫相手との交渉や裁判になった場合の対応、書面の作成などができます。そのため、あなたの精神的・時間的な負担も軽減され、早期解決も目指せるでしょう。
まとめ
状況によっては、慰謝料を請求しないほうがいいケースもあります。
しかし、慰謝料を請求しないことで、怒りや悔しさを発散できなかったり、浮気・不倫の再発が懸念されたりするデメリットもあるため、慎重な判断が必要です。
もし、ご自身で「慰謝料は請求しない」と決めたとしても、将来のトラブルに備えて証拠の収集や誓約書の作成をしておきましょう。
また、少しでも「慰謝料を請求したい」という気持ちがあるのであれば、ご自身で判断せず、一度弁護士に相談することをおすすめします。
アディーレ法律事務所では、浮気・不倫の慰謝料請求に関するご相談は何度でも無料です。
弁護士が適切に解決できるようアドバイスいたしますので、一人で悩まず、まずはあなたのご状況をお聞かせください。
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監修者情報

- 資格
- 弁護士
- 所属
- 第一東京弁護士会
- 出身大学
- 法政大学法学部、学習院大学法科大学院
私が弁護士を志したきっかけは、日常生活の中で時々、法的な問題に直面することがあったことです。法律というものは難解なものであると思われている側面が強いと思います。私も勉強するまでは、ちょっと近づきがたいものだと思っていました。しかし、弁護士となったからには、依頼者の方が何に悩んでいて何を求めているのかをしっかりと共有し、少しでも分かりやすく法的な問題点をご説明し、今後どのように問題解決に向けていくことが出来るのかを一緒に考えていきたいと思っております。



