弁護士コラム

【2026年法改正】養育費の支払い義務とは?いつまで・支払わないリスク

【2026年法改正】養育費の支払い義務とは?いつまで・支払わないリスク
  • 公開日:2024年10月7日
  • 更新日:2026年06月09日

離婚時に取り決めておくべき条件の一つに、子どもの養育費があります。
しかし、「養育費は必ず支払ってもらえるの?」「いつまで?」「相手が支払わないとどうなるの?」など、疑問や不安を抱えている方も多いでしょう。

特に2026年施行の民法改正により、養育費を受け取る側に有利なルール(法定養育費制度など)が新設されています。

このコラムでは、最新の法改正情報を踏まえて、養育費の支払義務について、弁護士がわかりやすく解説します。
お子さまのためにも、請求できる金額や期間、相手が支払わない場合のリスク、増額・減額が認められる可能性があるケースなどについて理解を深めていきましょう。

目次

この記事を読んでわかること

  1. 2026年施行の民法改正による養育費の新ルール(法定養育費など)
  2. 養育費がもらえる期間と相場の目安
  3. 相手が養育費を支払わない場合のリスク(給与の差押えなど)
  4. 養育費の支払義務が減額・免除されるケース
  5. 養育費についてスムーズに取決める方法

養育費の支払いは法律上の義務

養育費の支払義務とは、親が自分の生活水準を落としてで自分と同等の生活を子どもにも確保させる「生活保持義務」に基づく法的な義務です。離れて暮らす親であっても子どもが自立するまでは子どもを扶養しなければなりません(民法第877条1項)。

養育費は、生活費・医療費・学費など、お子さまが成長するために欠かせない大切なお金です。民法上も離婚時には、養育費について夫婦の話合いで決めるべきとされています(民法第766条)。

「相手と関わりたくないから」と養育費の請求を諦めず、子どものための正当な権利としてしっかり受け取るようにしましょう。

【重要】2026年施行の民法改正で養育費のルールはどう変わる?

2026年4月に施行される改正民法では、養育費の未払い問題を防ぐために新たな制度が導入されます。受け取る側として絶対に押さえておくべきポイントは次の3つです。

離婚時に取決めがなくても養育費の請求が可能に

これまで養育費は離婚時に当事者間で「養育費に関する取決め」をしていないと離婚後に養育費を請求するまでの期間の養育費の支払いを求めることができませんでした。

しかし今回の民法改正によって、夫婦で養育費の取決めをしていなくても離婚の日から法定養育費(子ども1人あたり月額2万円)を請求できる制度が新設されました(民法第766条の3)。

ただし、法定養育費制度は、改正法が施行された後に離婚したケースにのみ適用されます。施行前(2026年3月31日まで)に離婚した場合は適用されない点に注意しましょう。

離婚協議書があればすぐに財産の差押えが可能に

これまで養育費の支払いがなかったときに養育費の支払義務を負う親の財産を差し押さえるためには、公正証書や調停調書、審判書などが必要でした。

しかし今回の民法改正によって、強制執行認諾文言付き公正証書などがない場合でも、養育費の取決めの際に父母間で作成した合意書があればすぐに財産の差押えの申立てが行えるようになります。

ただし、改正民法の施行前(2026年3月31日以前)に養育費の取決めがされていた場合には、4月1日以降に発生する養育費に限って適用されることに注意しましょう。

共同親権になっても養育費の支払義務は継続

今回の改正で離婚後「共同親権」も選べるようになりますが、実際に子どもと離れて暮らす親が養育費を支払う法的な義務に変わりはありません。

共同親権であることを理由に養育費の金額が増減することもありません。養育費の金額は、あくまでも父母の収入・職業、子の人数・年齢などによって決まるからです。

詳しくは、次のコラムも参考にしてみてください。

養育費はいくら支払う義務がある?

法定養育費制度ができたからといって、養育費が「月額2万円」でなければならないというわけではありません。実際のところ、子どもの生活費やこれからの教育費を考えると、「月額2万円」では不十分というケースがほとんどでしょう。

法定養育費は当面の生活を支えるための「つなぎ」として考え、最終的には夫婦で話し合い、お互いの収入や子どもの成長に合わせた適切な養育費の額と期間をしっかりと取り決めることが大切です。

実際には、裁判所が公表している「養育費算定表」を参考に金額を決めるのが一般的です。調停や裁判になった場合も、この算定表をもとに支払うべき養育費を算出します。

次のツールでもおおよその養育費の目安を算出することが可能ですので、参考にしてみてください。

養育費はいつから支払う義務がある?

養育費の支払義務は、原則として「請求があったとき」から発生します。
「請求があったとき」とは、養育費を受け取る側の親が明確に「養育費として1人あたり毎月○○円(あるいは相当額)支払ってほしい」と意思表示したときです。

ただし、法定養育費については「離婚した日」から発生します。法定養育費は、正式な養育費の取決めができるか、子どもが18歳になるまで発生し続けることになります。

養育費はいつまで支払う義務がある?

養育費の支払義務があるのは、一般的に「子どもが満20歳に達する日の属する月(経済的に自立していれば満20歳に達していなくても未成熟でなくなったとき)まで」とされています。

ただし、お互いの合意があれば、「子どもが大学を卒業するまで」などと取り決めることも可能です。

詳しくは、次のコラムも参考にしてみてください。

※2022年4月1日より、成人(成年)年齢は20歳から18歳に引き下げられました。ただし、子どもが「20歳」になるまで養育費を受け取る旨の取決めをしている場合は、子どもが20歳になるまで養育費を受け取ることができます。同様に、改正法施行前に、子どもが「成人」になるまで養育費を受け取る旨の取決めをしていた場合、引き続き、子どもが20歳になるまで養育費を受け取ることができると考えられます。

相手が養育費の支払義務を果たさない場合のリスク

養育費を支払わないと、遅延損害金が加算されたり未払い分の養育費の一括請求を受けたりするほか、最終的には給与や預貯金が強制的に差し押さえられるおそれがあります。

相手が「支払いたくない」と逃げようとしても、養育費の支払いを勝手に拒否することはできません。具体的に相手には次のようなリスクが生じます。

遅延損害金・一括請求を受ける

養育費を支払うことを約束したにもかかわらず養育費の支払いが遅れた場合、遅延損害金を支払わなければならない可能性があります。

遅延損害金の法定利率は、年3%(2020年3月31日以前は年5%)です。

支払いが遅れた日数に応じて加算されるため、長期間遅れると多額の遅延損害金が発生するおそれもあります。

また、滞納が続いた場合、養育費の未払い分を一括で請求することも可能です。

一括請求が認められれば、金銭的に大きな負担となる可能性があるでしょう。

裁判所から督促を受ける

調停・審判・裁判などで養育費の取決めをしたにもかかわらず養育費を支払わない場合、裁判所から養育費を支払うよう、直接、督促を受けることがあります(履行命令・履行勧告)。

履行命令・履行勧告にはいずれも強制力はありません。ただし、履行命令に正当な理由なく従わない場合は、10万円以下の過料に処せられます。

財産を差し押さえられる

養育費の取決めについて強制執行力のある書面(公正証書・調停調書・審判書など)を作成している場合、強制執行を申し立てることにより財産の差押えができます。

養育費に基づく差押えでは、未払い分だけでなく将来分の養育費についても、給与などを継続的に差し押さえることが可能です。

2026年の改正民法施行に伴い、強制執行力のある書面がなくても、夫婦が養育費について取り決めた合意書などがあれば、養育費に基づく差押えを申し立てることができるようになりました。

財産開示手続などに応じないと罰金などの刑事罰が科せられる

強制執行を申し立てるには、養育費を支払う側の親の住所や勤務先、財産などを把握していなければなりません。

2019年5月に成立した改正民事執行法の施行(2021年から全面施行)により、養育費を支払う側の親に対し、裁判所を通じて財産に関する情報の請求(財産開示請求)をしたにもかかわらず、養育費を支払う側の親が拒否したり、ウソの情報を開示したりした場合、6ヵ月以上の拘禁刑または50万円以下の罰金が科せられます。

さらに、裁判所を通じて市区町村役場や金融機関などに対し、養育費を支払う側の親の勤務先や財産について情報取得を求められるようになりました。

2026年4月からは、改正民法施行に伴い、養育費を支払う側の親に財産の開示を命じる「財産開示」、市区町村などへの給与情報などの提供を命じる「第三者からの情報取得手続」、判明した給与などを差し押さえる「差押え」という3つのステップを、1回の申立てでできるようになっています。

子どもの祖父母が扶養料を支払うことになる

法律では「直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められています(民法第877条)。

つまり、直系血族である父母の両親(子どもからみた祖父母)にも、孫の扶養義務があるということです。

しかし、養育費の支払義務は、法律上の親子関係によって生じます。そのため、養育費を支払う側の親が養育費を支払わなかったとしても、祖父母に養育費を支払う義務はありません。

ただし、養育費を受け取る側の親とその子どもが経済的に困窮しており、かつ祖父母が経済的に余裕のある生活をしている場合、請求があれば祖父母が「扶養料」を支払うことになる可能性があります。

養育費の支払義務が増額・減額・免除されるケースもある

原則として養育費は子どもが独立するまで「支払わなければならない」性質のものです。ただし、次のようなケースでは支払義務が免除されたり、一度取り決めた養育費の増額・減額が認められたりする可能性があります。

再婚したケース(減額・免除の可能性)

離婚後、父母がそれぞれ再婚した場合には、養育費の減額・免除が認められる可能性があります。ただし、再婚したからといってそれだけで減額・免除が認められるわけではありません。

養育費の減額・免除が認められる可能性があるのは、たとえば次のようなケースです。

  • 養育費を受け取る側の親の再婚相手が子どもと養子縁組をしたケース
  • 養育費を支払う側の親が再婚相手の連れ子と養子縁組をしたケース
  • 養育費を支払う側の親と再婚相手との間に子どもが生まれたケース

詳しくは、次のコラムでも解説していますので参考にしてみてください。

収入が変わったケース(増額・減額の可能性)

就職・転職・昇給・失業など、お互いの収入状況に大きな変化があった場合、養育費の金額をあとから変更できる可能性があります。

【増額が認められる可能性があるケース】

  • 養育費を支払う側の親の収入が、昇進や転職などで大幅に増えた
  • 養育費を受け取る側の親が、病気やリストラなどでやむを得ず収入が大きく減ってしまった

【減額が認められる可能性があるケース】

  • 養育費を受け取る側の親の収入が、就職や昇給で大きく増えた
  • 養育費を支払う側の親が、やむを得ない事情で無収入になった・減少した

収入が減少したケースにおける「やむを得ない事情」とは、会社が倒産して失業した、病気やケガで働けなくなった、といった事情を指します。

浪費やギャンブルによる借金で経済状況が悪化したり、自分の意思で仕事を辞めて収入が減ったりした場合には、増額・減額が認められない可能性が高いでしょう。

養育費以外の特別な費用が発生したケース(増額の可能性)

突発的な一時的な費用(特別費用)が発生した場合、当然に養育費の増額が認められるわけではありません。しかし、父母の話合いや調停・審判を通じて特別費用を一部負担してもらえる可能性があります。

たとえば、予期せぬ病気やケガの治療費が発生した場合、一部負担してもらえる可能性があります。

養育費を支払わないことに合意したケース(免除の可能性)

特別な理由がなくても、父母がお互いに合意すれば、「養育費を支払わない」と取り決めることも可能です。

状況によっては養育費を受け取る側の親が「養育費はいらない」といって養育費の請求権を放棄することもあるかもしれません。しかし、事情が変わったなどの場合であれば、あとから養育費を請求できるケースもあります。

養育費の請求権は実質的に子どもの権利です。そのため、親が養育費を受け取ることを放棄しても、事情が変わった場合には子ども自身が請求できる可能性もあります。

養育費の支払義務について覚えておくべきポイント

養育費をめぐるトラブルを防ぐために、次のポイントについても覚えておくとよいでしょう。

養育費の支払義務は自己破産してもなくならない

借金が返せなくなり自己破産するケースにおいて、仮に借金が免除されたとしても、養育費の支払義務は免除されません。

そのため、借金の返済に追われ養育費の支払いが滞っていた場合などでも、未払い分の養育費や将来の養育費も当然支払う必要があります。

離婚時に取り決めたとおり、養育費を支払い続けなければならないということです。

養育費の支払義務自体は相続されない

養育費を支払う側の親が亡くなった場合、養育費の支払義務は原則として亡くなった時点で消滅します。そのため、将来の養育費の支払義務が相続人に引き継がれることはありません。

ただし、未払いの養育費がある場合、借金などの債権と同じく相続の対象となります。

つまり、たとえば養育費を支払う側の親が再婚し、その後亡くなった場合には、再婚相手などの相続人が相続放棄をしない限り、未払い分の養育費を支払う必要があるということです。

養育費の支払いや増額・減額について取り決める方法

状況によって養育費の増額・減額などが認められるケースはあるものの、基本的に養育費はきちんと支払う必要があります。そのため一方的に養育費の支払いを拒否したり、勝手に金額を変更したりすることはできません。

養育費の免除や増額・減額を行うためには、いずれかの方法で適切に取決めを行いましょう。

  • 父母間で話し合う
  • 調停で話し合う
  • 審判で決定する

それぞれ詳しく解説します。

父母間で話し合う

まずは、当事者同士で養育費の支払条件や増額・減額について話し合います。
話合いで合意できた場合は、将来のトラブルを防ぐためにも、取り決めた内容を記載した合意書を作成しておきましょう。

調停で話し合う

当事者同士での話合いがまとまらない場合や、相手が話合いに応じてくれない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てましょう。

調停では、調停委員がそれぞれから話を聞き、意見の調整をしてくれます。

ただし、調停もあくまで話合いにより合意を目指す手続です。合意できれば調停は成立しますが、合意できなければ調停不成立となり、審判の手続に移行します。

審判で決定する

調停で合意できなければ、審判で養育費が決められます。
審判では、お互いの主張や資料などから、養育費の支払条件や金額の変更が相当であるかどうかを裁判官が判断します。

なお、離婚審判(調停に代わる審判)は離婚調停のなかで行われる手続であるため、自分で審判を申し立てることはできません。

養育費の支払義務に関するよくある質問(Q&A)

最後に、養育費の支払義務に関するよくある質問をまとめています。

過去の未払い分の養育費は、遡って請求できますか?

原則は「請求した時点」からの支払いとなりますが、離婚協議書など取決め(合意)が残っていれば、過去に遡って請求・回収することが可能です。

ただし、離婚時に養育費を取り決めておらず、法定養育費を支払ってもらっていない場合であれば、離婚後に養育費を請求するまでの期間の法定養育費について過去に遡って請求することができます(2026年4月1日以降に離婚した場合)。

相手が「子どもに会わせないなら支払わない」と言っています…。

養育費の支払いと親子交流(面会交流)は、まったく別の問題です。「会わせないなら支払わない」という相手の主張は通用しません。未払いの養育費がある場合には、差し押さえなどの手続きを進めるようにしましょう。

親子交流(面会交流)について詳しくは、次のコラムも参考にしてください。

面会交流とは?取り決める方法や認められないケース、
拒否するリスク

まとめ

養育費の支払いは、未成熟子をもつ親の義務です。離婚後の状況の変化に応じ増額・減額が認められる可能性はありますが、きちんと父母間で話合い、合意する必要があります。

父母間のトラブルを避け、お子さまの生活と成長を支えるためにも、離婚する際や離婚後に状況が変わった際には養育費についてきちんと取決めを行いましょう。

ご自身で適切な養育費を算定し、取決めを行うことが難しい場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士であれば、適切に支払うべき養育費を算定したうえで、あなたの代わりに交渉することが可能です。精神的・時間的な負担が軽減できるだけでなく、スムーズに話合いがまとまる可能性も高くなるでしょう。

アディーレでは、離婚に伴う養育費の取決めはもちろん、離婚後に未払いが発生した際の養育費の請求に関するご相談を承っております。お困りのことがございましたら、まずはお気軽にご相談ください。

監修者情報

林 頼信

弁護士

林 頼信

はやし よりのぶ

資格
弁護士
所属
東京弁護士会
出身大学
慶應義塾大学法学部

どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。

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