熟年離婚の原因と注意点とは?スムーズに離婚するための方法も解説
- 公開日:2023年12月07日
- 更新日:2023年12月07日
「子供が独り立ちすることになったけど、夫婦2人きりになったら息がつまりそう」
今まで耐えに耐えてきたものの、子どもの独立や配偶者の退職を機に、熟年離婚に至るケースがあります。
熟年離婚の場合、財産分与が大変になる傾向があるなど、注意すべき問題があります。
熟年離婚に至る原因や注意点などを弁護士が解説いたします。
目次
この記事を読んでわかること
熟年離婚の割合は増加傾向
熟年離婚には明確な定義はありませんが、同居20年以上の夫婦が離婚した場合は熟年離婚といえます。
厚生労働省の調べによると、離婚をした夫婦の内、同居20年以上の夫婦が占める割合は増加傾向にあり、2020年には21.5%となっています。
このように熟年離婚の割合は増加傾向にあるのです。
熟年離婚の原因
熟年離婚には様々な原因がありますが、長年不満がたまっており、子どもの独り立ちや配偶者の退職をきっかけに、離婚を切り出すということも多いようです。
長年の不満
熟年離婚の原因となる長年の不満としては例えば次のようなものがあります。
- 配偶者が家事や育児をしない。
- 夫婦で会話にならない。
- 脱いだ服をカゴに入れない等、配偶者がだらしない。
- 配偶者が勝手に予定を入れてくる。
そのため他方の配偶者は、自分の予定をなかなか入れることができない。 - 配偶者に生活態度などを注意すると、逆切れしてくる。
- 配偶者が煙草をやめてくれず、煙草の臭いが辛い。
- 配偶者が自分の考えだけが正しいと思いこんでおり、考えを押し付けてくる。
- 熱で寝込んでいるのに、食事を作れなどと言ってくる。
配偶者が長年不満をためていることにそもそも気づいていないケースも多く、これがより夫婦関係がこじれる原因となります。
熟年離婚の引き金
このように長年の不満がたまっているところへ、子どもの独立や配偶者の退職が発生すると、これが離婚の引き金になってしまうことがあります。
これまでは、「子供のために我慢しよう」「経済的に苦しくなるのは困るから我慢しよう」と頑張ってきた人も、子どもの独立や退職をきっかけに「これからは自分のための人生を送ろう」という気持ちになるからのようです。
熟年離婚を進める上で注意すべきこと3つ
さて、熟年離婚を実際に進めることになった場合、注意すべきことがあります。
注意点1 そもそも離婚が成立するのか
配偶者が離婚に合意してくれれば離婚は成立します。
他方で、配偶者が離婚に合意してくれない場合には、裁判で「離婚するように」という判決を得る必要があります。
裁判で離婚するためには、一定の条件を満たす必要があります。
【裁判で離婚できる可能性がある例】
- 配偶者が不貞行為をしたために、夫婦関係が完全に破綻した
- 配偶者が長期間行方不明であるために、夫婦関係が完全に破綻した
- 配偶者が首を絞めるなど度重なる暴行をしてくるために、夫婦関係が完全に破綻した
- 長期間別居しており、夫婦関係が完全に破綻した。
ところが、熟年離婚の場合、日常生活の夫婦の価値観のすれ違いが原因になっていることが多く、それだけでは裁判で離婚を認められにくいのが現状です。
また、別居期間は3年以上になると、裁判で離婚できる可能性も高まってきますが、ケースによっては、必要な別居期間はさらに長いこともあります(いくら別居期間が長くとも、他の事情により離婚が認められないこともあります)。
相手が離婚に合意してくれる見込みがなく、裁判で離婚できる可能性も低い場合、離婚が直ちには成立しない可能性があるので注意しましょう。
注意点2 財産分与が大変
夫婦が結婚している間に、夫婦の協力で得た財産は、原則として財産分与の対象となります。
例えば、結婚期間中に得た給料を貯めたお金は、財産分与の対象となります。
また、結婚期間中に得た給料で買った住宅も、基本的には財産分与の対象となります(住宅の購入資金の全部または一部を、親の贈与で払っている場合は、親の贈与相当分は財産分与の額から除きます)。
熟年離婚の場合、結婚期間が長いため、財産分与の対象となる財産が多くなりがちです。
そして、財産分与の対象となる財産が多いと、財産分与は大変になりがちです。
というのも、財産分与の一番難しい点は、いかに財産をきちんと開示してもらうか、というところにあります。
財産分与をする側は、財産をなるべく取られたくないと考える傾向にあり、財産を開示してくれないというケースも多くあります。
そのため、財産分与をしようとすると、年単位で時間がかかるということもよくあるのです。
離婚を切り出す前に、配偶者がどこに財産をもっているのか調べておくとよいでしょう。 また、配偶者が退職前の場合は、退職金も財産分与の対象となる可能性がありますので、その点も忘れないようにしましょう。
注意点3 子供の学費を誰が払うか
子供が社会人になっている場合はいいのですが、子どもがまだ学生の場合、離婚後、子どもの学費をどのようにして確保するのかきちんと考えておく必要があります。
通常、子どもの私立学校の学費や大学の学費は養育費としては払ってもらえません(相手が払うと合意すれば別ですが)。
熟年離婚で学生の子供がいる場合、子どもは高校生や大学生となっていることが多く、最もお金のかかる時期です。
離婚後、自分の収入だけで学費は足りるのか、奨学金を借りるにしても将来子供は返済できるのか、相手が学費を払ってくれそうなのか、など、見通しをきちんと立てておきましょう。
熟年離婚をスムーズに進めるためには
熟年離婚の話し合いは、なかなか前進しないことも少なくありません。
当事者同士の話し合いは、かえって話がもつれることも
熟年離婚では、相手の配偶者は、まさか離婚を切り出されるとは思っておらず、退職後はゆっくりと家庭の中で過ごそうと思っていることも少なくありません。
そのため、かたくなに離婚に応じてもらえないことも実際上よくあります。
また、当事者同士で離婚の話し合いを進めていると、感情的になり話がかえってもつれていってしまうことも少なくありません。
さらに、財産分与の点にしても、最近は、様々な資産がオンラインで管理されていることも多く、下調べをしても、すべての財産までは調べきれないこともあります。
弁護士に離婚の交渉を依頼するメリット
この点、離婚に詳しい弁護士に離婚の交渉を依頼すれば、第三者として冷静に相手に交渉をしてくれますし、これまでの交渉のノウハウを駆使してくれます。
また、交渉は弁護士がしてくれるので、自分が配偶者と離婚の話を直接しなくて済むのも大きなメリットでしょう。
さらに、弁護士は、一般の方には認められていない「弁護士会照会(23条照会)」という権限をもっています。
これは、弁護士が、弁護士会を通じて、会社や官庁等の団体に質問事項を送り、それに答えてもらうという制度です。
例えば、銀行に23条照会を出して、配偶者名義の預貯金口座の有無、金額などを回答してもらうという使い方があります。
23条照会があった場合、基本的には回答をする義務がありますが、必要性・相当性を欠く質問など、ケースによっては回答をしてもらえないこともあります(例えば、生存している配偶者の通帳の履歴を開示してほしいと質問しても、回答を拒まれることが多いです)。
さて、相手が財産の開示を拒んでも、23条照会により財産の調査をできる場合があります。こうした点も、弁護士に依頼するメリットといえます。
また、財産を開示してもらった後も、「これは自分の努力で獲得した財産だから財産分与の対象でない」「親からの贈与でもらったものだ」など、財産分与に関する法的な争いが待っていることも多くあります。この点、弁護士は法律の専門家ですので、法的な見地から交渉を進めていくことができます。
このように、
- 当事者同士の話し合いが難しそう
- 財産の開示をさせるのが難しそう
と感じている方は一度弁護士に相談するとよいでしょう。
まとめ
長年にわたり不満が積もった結果、子どもの独立や相手方の退職を機に熟年離婚に至るケースが多くあります。
熟年離婚では、離婚そのものや、財産分与、子どもの学費のことで揉める傾向にあるので注意が必要です。
当事者同士で話が難しい、財産分与の開示をしてくれないので困っているという方は、離婚に詳しい弁護士に相談してみましょう。
アディーレ法律事務所は、離婚問題に関する様々なノウハウを持っております。熟年離婚でお困りの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。
監修者情報
- 資格
- 弁護士
- 所属
- 東京弁護士会
- 出身大学
- 慶應義塾大学法学部
どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。