離婚問題の知識と法律

離婚はどう進める?4つの離婚方法と手続の流れ、決めるべき条件を解説

離婚をするには、話合いまたは裁判所を通した手続が必要です。手続によって、離婚を成立させる方法や流れは異なります。

そこでこのページでは、4つの離婚方法の概要や手続の流れを解説します。
スムーズに離婚を進めるためにも、離婚の手続について理解を深めていきましょう。

離婚の4つの手続方法

離婚には、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚という4種類の手続方法があります。

  1. 協議離婚とは、夫婦間の話合いによって合意を成立させ、離婚条件を取り決める方法です。裁判所を通さず、離婚届を提出するだけで成立します。
  2. 調停離婚とは、家庭裁判所で調停委員を通して話合いをすることで合意を成立させ、離婚条件を取り決める方法です。
  3. 審判離婚とは、調停が不成立となった場合に、家庭裁判所の判断(審判)によって離婚条件を取り決める方法です。しかし、当事者が異議を申し立てた場合、審判の効力がなくなってしまうこともあり、この手続が利用されることはまれです。
  4. 裁判離婚とは、調停が不成立となった場合や審判に異議が出た場合に、家庭裁判所に訴訟を提起し、裁判上の手続で離婚する方法です。裁判で離婚が認められるためには、「法定離婚事由」がある必要があります。

離婚成立までの流れ

離婚成立までは、以下のような流れで進みます。

離婚成立までの流れ

夫婦間で協議
調停の申立て
  • 調停不成立
  • 調停に代わる審判
訴訟提起
離婚不成立、または離婚が認容されるも、慰謝料額などに不満あり

控訴・上告

まずは、夫婦間で離婚や離婚の条件について話し合い、協議離婚の成立を目指します。

夫婦間の話合いで合意できない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停委員を通して離婚や離婚の条件について話し合うことで調停離婚の成立を目指します。

調停が不成立となった場合に、調停に代わり家庭裁判所の判断で離婚を認めるのが審判離婚です。異議申立てがなされずに2週間経つと、審判が確定し離婚が成立します。

調停が不成立となった場合、または審判に異議が申し立てられた場合には、訴訟を提起し裁判離婚の成立を目指します。裁判をするには、原則として事前に調停手続を経ていなければなりません。裁判所が離婚を認めるか、合意できれば離婚が成立します。

以下で、離婚の種類ごとに手続の流れを詳しく見ていきましょう。

協議離婚の流れ

協議離婚は、以下のような流れで進めます。

話し合う

まずは、配偶者に離婚の意思と希望条件を伝え、話合いを行います。
協議離婚の場合は、合意さえできれば、どのような理由でも離婚することが可能です。

配偶者に納得してもらうためにも、話合いの際には感情的にならず、冷静に自身の気持ちや離婚したい理由を伝えましょう。

離婚協議書を作成する

離婚することや離婚条件について合意できたら、合意内容をまとめた離婚協議書を作成しましょう。
口約束だけでは、離婚後に約束が守られないなどのトラブルが起こるおそれがあるためです。

離婚協議書を作成しておけば、たとえば養育費や慰謝料の支払いが滞った場合などにもスムーズに法的手続をとることができます。

ただし、離婚協議書に法的な強制力はありません。そのため、できるだけ公正証書にしておくことをおすすめします。

離婚届を提出する

離婚届に記入し提出することで、離婚が成立します。

協議離婚の場合、離婚届には夫婦双方の署名に加え、成人の証人2名の署名が必要です(押印は任意)。証人は、成人であれば誰でも構いません。

提出先は、届出人(夫婦)の本籍地または一番近い市区町村役場です。窓口へ持参するほか、郵送や第三者に提出してもらうこともできます。なお、提出の際の必要書類は以下のとおりです。

  • 離婚届
  • 本人確認書類
  • 戸籍謄本(本籍地でない市区町村役場に提出する場合)

詳しくは、提出先の市区町村役場のホームページなどをご確認ください。

協議離婚についてもっと詳しく見る

調停離婚の流れ

調停離婚は、以下のような流れで進めます。

調停を申し立てる

まずは、夫婦のうち「離婚したい」という意思のあるほうが、家庭裁判所に調停を申し立てます。
一般的には、配偶者の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てますが、夫婦間で合意できれば、ほかの家庭裁判所に申し立てることも可能です。

以下の必要書類を裁判所に持参または郵送で提出し、申し立てましょう。

  • 申立書とその写し
  • 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 年金分割のための情報通知書(年金分割を希望する場合)

また、離婚調停を申し立てる際には、以下の費用がかかります。

  • 収入印紙代 1,200円
  • 切手代 1,000円程度(裁判所によって異なる)
  • 夫婦の戸籍謄本の取得費用 450円

このほかにも、資料や手数料・実費などの費用が必要な場合があります。
詳しくは、調停を申し立てる家庭裁判所のホームページなどをご確認ください。

調停期日で話し合う

調停期日には、調停委員があなたと配偶者のそれぞれから話を聞き、意見の調整を試みます。
1回の調停期日は約2時間で、およそ30分ずつ、夫婦交互に話を聞くことが多いようです。

調停では夫婦が顔を合わせないよう、それぞれ別の待合室に待機し、別々に調停室に入るなどの配慮がなされています。鉢合せを防止するため、調停の開始・終了時間をずらしてもらえる場合もあるようです。

なお、一般的に1回の調停期日で解決に至るケースは少なく、必要に応じて月1回程度のペースで複数回の調停期日が設けられます。

調停が終了する

調停の結果、合意できた場合は調停が成立し、調停調書が作成されます。
調停が成立してから10日以内に、離婚届と調停調書謄本を市区町村役場に提出しましょう。

合意に至らない場合や、配偶者が調停に出席せず話合いができなかった場合などには、調停は不成立となるため、離婚裁判を提起することになります。

調停離婚についてもっと詳しく見る

審判離婚の流れ

審判離婚は、以下のような流れで進めます。

離婚調停を行う

前提として、まずは離婚調停を申し立てる必要があります。審判離婚は、離婚調停のなかで行われる手続であるためです。

たとえば、以下のような場合に審判離婚の手続をとることがあります。

  • 離婚には合意できているが、離婚条件について些細な意見の違いがある場合
  • 離婚や離婚条件には合意しているが、当事者の一方が調停に出席できない場合 など

裁判所による審判が行われる

裁判所により必要と判断された場合、調停に代わる審判が行われます。当事者が自ら審判の申し立てをすることはできません。
そのため、審判離婚をするための特別な手続は不要です。

夫婦双方の言い分や、調停委員の意見、裁判所の調査結果などから、離婚すべきかどうかや、離婚条件の判断がなされます。

異議申立てがなければ審判が確定する

審判が下されると、審判の内容を記載した「審判書」が作成されます。

審判の告知を受けた翌日から、2週間以内に夫婦のどちらからも異議申立てが行われなければ審判が確定し、審判離婚は成立です。
審判離婚が成立してから10日以内に、離婚届と審判書謄本を市区町村役場に提出しましょう。

審判離婚についてもっと詳しく見る

裁判離婚の流れ

裁判離婚をするためには、原則として離婚調停を経ている必要があります。
ただし、配偶者が行方不明である場合などは、裁判所の判断で例外的に調停を経ずに裁判離婚をすることも可能です。

裁判離婚は、以下のような流れで進めます。

訴状を提出する

まずは、夫婦どちらかの住所地を管轄する家庭裁判所に訴状を提出し、訴訟を提起します。
ただし、住所地と異なる家庭裁判所で離婚調停を行った場合、裁判所の許可があれば離婚調停を行った家庭裁判所に提出することも可能です。

以下の必要書類を裁判所に持参または郵送で提出しましょう。

  • 訴状 2通
  • 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)とその写し
  • 年金分割のための情報通知書(年金分割を希望する場合)
  • 源泉徴収票や預金通帳などの証拠書類の写し(養育費や財産分与を請求する場合) 2部

また、訴訟の提起には以下の費用がかかります。

  • 収入印紙代 13,000円~(請求内容によって異なる)
  • 切手代 6,000円程度(裁判所によって異なる)
  • 夫婦の戸籍謄本の取得費用 450円

このほかにも、資料や手数料・実費などの費用が必要な場合があります。
詳しくは、訴訟を提起する家庭裁判所のホームページなどをご確認ください。

口頭弁論・尋問が行われる

裁判期日には、夫婦がお互いの意見を主張し証拠を提出することで、争いの内容を整理していきます(口頭弁論)。
必要に応じて、月1回程度のペースで裁判期日が設けられるのが一般的です。

証拠や争点が整理されると、「証拠調べ」として当事者への尋問(本人尋問)が行われます。

本人尋問は、当事者本人が代理人や裁判官からの質問に答える手続です。
もっとも詳しく事情を把握しているのは当事者本人にほかならないため、とても重要な手続となります。

なお、本人尋問の前に、夫婦それぞれが自分の主張をまとめた「陳述書」を提出することも多いです。

判決が出るまたは和解する

夫婦がお互いに合意すれば、和解により離婚が成立し、離婚条件などが決まります(和解離婚)。

和解が成立しない場合は、裁判所が離婚の可否や離婚条件を判断し、離婚を認める判決が出れば離婚は成立です(判決離婚)。
判決離婚では、たとえ配偶者が離婚に同意していなくても離婚が成立します。これは、協議離婚や調停離婚と大きく異なる点です。

和解または離婚を認める判決が確定したら、10日以内に判決謄本と確定証明書を添えて離婚届を市区町村役場に提出しましょう。

裁判離婚についてもっと詳しく見る

離婚の際に取り決めるべき条件

離婚をする際には、お金や子どものことを取り決め、合意する必要があります。
不利な条件で離婚することにならないよう、事前にあなたの希望を決めておきましょう。

離婚の際に取り決めるべき条件は、以下の7つです。

  • 財産分与
  • 年金分割
  • 親権
  • 面会交流
  • 養育費
  • 慰謝料
  • 婚姻費用(※)

それぞれ詳しく解説します。

※具体的な婚姻費用分担義務が生じるのは「請求したとき」から「離婚または再び同居するまで」です。そのため、別居した時点でただちに請求する必要があります。

財産分与

財産分与とは、夫婦の財産を、原則として2分の1ずつ分割することです。

財産分与の対象となるのは、婚姻生活中に夫婦で協力して築いた「共有財産」に限られます。夫婦の一方が独身時代に貯めたお金などは、「特有財産」として財産分与の対象になりません。

具体的には、以下のようなものが財産分与の対象となり得ます。

  • 不動産
  • 現金・預貯金
  • その他経済的価値があるもの
  • 保険の解約返戻金
  • 退職金
  • 確定拠出年金・個人年金 など

財産分与について詳しくは、以下のページをご覧ください。

財産分与について詳しく見る

年金分割

婚姻期間中に夫婦の一方または双方が納付した厚生年金の保険料は、「夫婦の協力によって納付されたもの」と考えられています。
そのため、配偶者が厚生年金保険を納付している場合、離婚後に納付実績を受け取ることが可能です。

なお、「国民年金」や、「厚生年金基金・国民年金基金」などに相当する部分は分割の対象にはなりませんし、「婚姻前の期間」の分は反映されません。

また、年金分割は将来受け取る予定の年金金額の2分の1をもらえる制度ではなく、保険料の納付実績の分割を受けるという制度である点に注意しましょう。

年金分割について詳しくは、以下のページをご覧ください。

年金分割について詳しく見る

親権

未成年の子どもがいる場合、親権者を決めないと離婚できません。

親権者を決めるための法律上の基準や条件はありませんが、以下の点を考慮し、子どもの利益を第一に考えて決めることが求められます。

  • 子どもに対する愛情やこれまでの監護実績
  • 子どもを育てるための経済力や監護能力
  • 子どもの年齢・性別・発育状況
  • 子ども本人の意思 など

親権について詳しくは、以下のページをご覧ください。

親権について詳しく見る

面会交流

面会交流とは、子どもと離れて暮らすことになった親(非監護親)が、離婚後に子どもと面会し交流することです。
主に、以下のような内容を取り決めておく必要があります。

  • 面会交流の可否
  • 方法
  • 頻度
  • 日時・場所
  • 面会時の決まりごと など

離婚原因によっては「離婚後は子どもを配偶者に会わせたくない」という場合もあるかもしれません。しかし、面会交流はあくまでも「子どものため」を考えて決める必要があります。

面会交流について詳しくは、以下のページをご覧ください。

面会交流について詳しく見る

養育費

養育費とは、子どもを育てるために必要なお金です。養育費は離婚後でも請求できますが、一般的には、離婚の際に取り決めます。
主に、以下の内容について取り決めておきましょう。

  • 月々の支払金額
  • 支払期間
  • 支払方法(毎月の支払日、振込先など)

なお、養育費は、配偶者と合意できれば一括で支払ってもらうことも可能です。
ただし、利息分が差し引かれたり、余分な税金が発生したりするため、支払方法は状況に応じて慎重に検討する必要があります。

養育費について詳しくは、以下のページをご覧ください。

養育費について詳しく見る

慰謝料

配偶者の不法行為が原因で離婚に至った場合、慰謝料を請求できる可能性があります。
不法行為とは、たとえば以下のような行為です。

  • 不貞行為
  • DV・モラハラ

なお、「性格の不一致」や「価値観の相違」など、配偶者が一方的に悪いわけではない場合は、慰謝料を請求できない可能性があるため注意しましょう。

離婚の慰謝料について詳しくは、以下のページをご覧ください。

離婚の慰謝料について詳しく見る

婚姻費用

婚姻費用とは、夫婦と未成熟の子どもが、収入や財産に応じて、社会的地位にふさわしい生活をしていくために必要な生活費のことです。
具体的には、居住費、水道光熱費、食費、子どもの養育費、医療費などのことをいいます。

法律上、婚姻関係にある夫婦は、婚姻費用を分担しなくてはなりません。
そのため、離婚前に別居していた場合などには、婚姻費用を請求できることがあります。

ただし、あなたに別居や離婚に至った原因がある場合、請求が認められないおそれもあるため注意しましょう。

婚姻費用について詳しくは、以下のページをご覧ください。

婚姻費用について詳しく見る

離婚に関するよくある質問

離婚について、お客さまからよく寄せられる3つのご質問にお答えします。

もっとも多い離婚原因は何ですか?

「性格の不一致」です。
2021年の司法統計によると、男性の3割、女性の2割が「性格の不一致」を理由に離婚しています。

離婚原因について詳しく見る

離婚しているのは結婚何年目の夫婦が多いですか?

統計によると、平均同居期間が2~3年の夫婦がもっとも多いといえます。
なお、5年未満の離婚件数は全体の3割以上を占めており、この傾向は30年以上続いているようです。

参考:厚労省『令和4年 人口動態統計 年次別にみた同居期間別離婚件数及び百分率並びに平均同居期間

離婚を考えたとき、まずは何をすればいいですか?

話合いの前に、離婚したい理由や希望条件をまとめて状況を整理し、証拠を集めておきましょう。
準備せず離婚を切り出してしまうと、話合いが長期化したり、不利な条件で離婚してしまったりするリスクがあります。

離婚の話合い前の準備について詳しく見る

離婚を考えたら、まずは弁護士にご相談を

離婚には、協議離婚・調停離婚・裁判離婚・審判離婚という4つの方法があります。まずは話合いを行い、協議離婚を目指すのが一般的です。

離婚をする際には、さまざまな条件を取り決めなければなりません。そして、あなたにとって、より有利な条件で離婚するためには法的知識や交渉のノウハウが必要です。

そのため、離婚を決意したら弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、法的知識を駆使して交渉し、適切に離婚の手続を進めることができます。

アディーレ法律事務所では、離婚専属チームがご相談を承っております。スムーズに離婚を進めるためにも、まずは一度ご相談ください。

監修者情報

林 頼信

弁護士

林 頼信

はやし よりのぶ

資格
弁護士
所属
東京弁護士会
出身大学
慶應義塾大学法学部

どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。

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