た行 | 離婚用語集
た行の用語
た
- 第1号被保険者 [だいいちごうひほけんしゃ]
国民年金の加入者は、その職業等により3つの種別に分けられています。そのうち、第1号被保険者とは、自営業者・自由業者・農業者とその配偶者、学生、無職者である国民年金加入者を指します。
夫の扶養家族に入っていた妻が離婚する場合、離婚直後に正社員等の雇用形態で働き始め、厚生年金に加入しない限り、第1号被保険者の手続をする必要があります。また、第1号被保険者である夫と離婚する場合、年金分割を受けることができません。
- 待婚期間[たいこんきかん]
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妊娠中に離婚や夫の死亡などにより前婚を解消・取消しした女性は、その解消・取消しの日から100日が経過したあとでなければ、再婚することはできません(※)。この期間のことを待婚期間または再婚禁止期間といいます。
待婚期間が定められている理由は、女性が前婚を解消・取消しした直後に再婚し、数ヵ月後に子どもを出産した場合、その子どもが前夫の子どもとも後夫の子どもとも推定されてしまうからです。
なお、民法上、父親を推定する規定は、以下のとおり定められています。
- 結婚してから200日後以降に生まれた子どもはその夫の子どもと推定すること
- 婚姻の解消の日から300日以内に生まれた子どもは前婚の夫の子どもと推定すること
もっとも、父親推定の重複が生じない場合には、待婚期間なしで再婚することができます。
具体的には、以下のようなケースです。- 前婚の解消・取消しの際に妊娠していなかった場合
- 前夫との再婚の場合
- 夫が3年以上生死不明であるため離婚が認められた場合
- 妊娠できない年齢に達していた場合 など
※女性の再婚禁止期間を離婚後6ヵ月から100日に短縮する改正民法が平成28年6月1日に成立しました。なお、女性が離婚後、すでに出産をした場合は、離婚後100日以内でも再婚が認められます。
- 第3号被保険者 [だいさんごうひほけんしゃ]
国民年金の加入者は、その職業等により3つの種別に分けられています。そのうち、第3号被保険者とは、厚生年金または共済年金に加入している者に扶養されている配偶者を指します。
第3号被保険者が離婚する場合、離婚直後に正社員等の雇用形態で働き始め、厚生年金に加入しない限り、第1号被保険者の手続をする必要があります。
また、第3号被保険者は、離婚の際の年金分割において、3号分割制度を利用することができます。- 第2号被保険者 [だいにごうひほけんしゃ]
国民年金の加入者は、その職業等により3つの種別に分けられています。そのうち、第2号被保険者とは、厚生年金または共済年金に加入している国民年金加入者を指します。
第2号被保険者である夫と離婚する場合、厚生年金または共済年金(報酬比例部分)について、年金分割を受けることができます。もっとも、妻も第2号被保険者である場合は、夫の報酬比例部分と妻の報酬比例部分を比べ、より多い方がより少ない方にその差額を分割して与える(保険料の納付実績を付け替える)ことになります。
- 代理人許可申請 [だいりにんきょかしんせい]
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裁判上の行為は、法令により裁判上の行為ができる代理人(商法上の支配人等)のほかは、弁護士でなければ代理人となることができないのが原則です(民事訴訟法第54条1項本文)。
ただし、簡易裁判所においては、簡易裁判所の許可を得れば弁護士でない者を訴訟代理人とすることができます(民事訴訟法第54条1項ただし書き)。
よって、簡易裁判所の許可を得れば、家族や紛争の内容に詳しい者を代理人として裁判所に出頭してもらうことができます。
ち
- 嫡出子 [ちゃくしゅつし]
婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子どものことをいいます。嫡出子には以下の2つの分類が存在します。
嫡出子は、非嫡出子(婚姻関係にない男女の間に生まれた子ども)と比較して、さまざまな点で優遇されています。
嫡出子は、法律で親子関係の存在が推定される制度(嫡出推定制度)があるため、簡単に父との間の親子関係が覆されないようになっています。
非嫡出子については、認知されなければ父との間の法律上の親子関係が認められず、父を相続できません。
- 嫡出推定制度 [ちゃくしゅつすいていせいど]
妻が婚姻中に妊娠した子どもについて、夫と子どもとの間に実際に血縁関係が存在するか否かを考慮することなく、法律上の夫との親子関係を推定する制度のことをいいます。民法には、次のような規定が置かれています。
そうすると、たとえば、婚姻成立からちょうど200日経過した日に、妻が子どもを出産した場合、その子どもは、まず上④により婚姻中に妊娠したものと推定されます。すると、妻が出産したその子どもは、①により婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子ども、すなわち夫の子どもであると推定されます。夫がこの推定を覆すためには、嫡出否認の訴えによる必要があります。
これに対して、婚姻成立から200日を経過した後に生まれたものの、夫の子どもであることが現実的にありえない場合(たとえば、妊娠可能な時期に夫が刑務所にいた等)については、上記のような推定は働きません。そのような場合には、夫は、嫡出否認の訴えではなく、親子関係不存在の訴えによって、親子関係を否定することができます。
- 嫡出否認の訴え [ちゃくしゅつひにんのうったえ]
嫡出推定制度によって、夫との親子関係が推定されている子ども(推定される嫡出子)について、婚姻関係にある男女から生まれた子どもではないと裁判を起こすこと、または、子ども自身が婚姻関係にある男女から生まれた子どもではないと裁判を起こすことをいいます。
また、再婚後の夫の子どもと推定される子どもについて、前夫が再婚後の婚姻関係にある男女から生まれた子どもではないと裁判を起こすことをいいます。これまで、嫡出否認の訴えができるのは、推定される嫡出子を出産した母親の夫だけであり、ほかの者は訴えることができない制度でした。しかし令和6年4月1日以降は、母親と子どものほか、場合によっては前夫にも嫡出否認権が認められます。
嫡出否認の訴えを提起できる期間は、以下のとおりです。
- 父は子どもが生まれたことを知ったときから3年以内
- 子どもや母は子どもが生まれたときから3年以内
- 前夫は前夫が子どもの出生を知ったときから3年以内
なお、子どもが嫡出子であることを父(母)が承認した場合は、たとえ夫が子どもが生まれたことを知ったとき(子どもが生まれたとき)から3年以内であっても、嫡出否認の訴えを提起することができなくなります。
- 調停委員 [ちょうていいいん]
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離婚や親権・養育費・財産分与など離婚の際に決めておくべき問題について、当事者間だけでは話合いがまとまらない場合、その問題について家庭裁判所に対して離婚調停を申し立てることになります。調停では、調停委員と呼ばれる裁判所の非常勤職員が中心となって、夫婦双方の言い分をよく聞きながら妥協点を探り、離婚の合意や財産分与など離婚の条件についてそれぞれの意見の調整を行ってくれます。
調停委員は、調停に一般市民の良識を反映させるため、原則として40歳以上70歳未満の人で、社会生活上の豊富な知識経験を持つ人のなかから選ばれます。家事調停では、夫婦・親族間の問題であるため、男女1人ずつの調停委員が指定されることが多いです。
- 調停期日 [ちょうていきじつ]
調停が実施される日のことをいいます。
裁判所は、調停の申立てがされたあと、調停期日を決定し、事件当事者に対して期日呼出状を送付します。期日呼出状の送付を受けた当事者は、裁判所が指定した調停期日に裁判所へ出頭する必要があります。弁護士が代理人としてついた場合でも、原則として当事者本人も弁護士と一緒に裁判所へ出頭する必要があります。
調停期日に理由なく出頭しなかった場合には、5万円以下の過料に処せられることになります。実際に過料が科されるケースはほとんどないようですが、法律上科すことができるとされている以上、科されないとは限りませんし、無断で欠席すれば裁判官や調停員に悪い心証を与えかねません。また、調停手続のなかには、調停が不成立となった場合には自動的に審判手続に移行してしまうものもあり、知らない間に自分に不利な審判が下されてしまう可能性もあります。そのため、調停期日にはきちんと裁判所に出頭をし、やむを得ない事情で調停期日に出頭できない場合には、調停期日の変更を裁判所に申し出た方が賢明であるといえるでしょう。
- 調停期日呼出状 [ちょうていきじつよびだしじょう]
裁判所が指定した調停期日に裁判所へ出頭するよう記載されている書面のことをいいます。
調停期日呼出状には、調停期日の日程、出頭すべき裁判所、出頭すべき部屋が記載されています。また、調停期日呼出状には通常、調停がどのような手続であるかを説明した書面が同封されています。
調停期日呼出状は、そのときの裁判所の混み具合などの状況にもよりますが、調停が申立てされてから通常1~2週間後くらいに事件の当事者に送付されます。
- 調停前置主義 [ちょうていぜんちしゅぎ]
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婚姻の無効・取消し、離婚、協議上の離婚の無効・取消し等については、夫婦の意思にかかわらず、訴訟を提起すれば判決で結論を求めることができます。
しかし、いきなり訴訟を提起することはできず、まずは家庭裁判所の調停(夫婦間での話合い)を経なければならないとされています。これを調停前置主義といいます。調停前置主義がとられている理由は、離婚等は人間関係の調整が必要な問題であり、法廷で争うよりも互譲による円満かつ自主的な解決が望ましいと考えられるからです。
もっとも、相手方が行方不明であったり、外国に居住していたりして話合いをすることができない場合には、調停を経ずただちに離婚訴訟を提起することができます。
- 調停調書 [ちょうていちょうしょ]
当事者が調停で合意に至った内容を記載した書面のことをいいます。
離婚調停の場合には、離婚についてお互い合意に至ったことや、どちらが親権者になるのか、どちらがどれだけお金を支払うことになったか等が記載されることになります。
いったん調停が成立し、調停調書が作成されてしまうと、調停調書の内容に対して後日異議を申立てすることはできません。そのため、調停調書の内容が間違っている場合には必ず訂正してもらう必要がありますし、また当事者間で合意に至ったことが記載されていない場合には、きちんと記載をしてもらう必要があります。
相手方が調停調書の内容を守らなかった場合には、調停調書をもとに相手方の財産を差し押さえるなどの強制執行をすることができます。
- 調停前の仮の処分 [ちょうていまえのかりのしょぶん]
調停を申し立てたあと、調停が終了するまでの間に、裁判所が事件の当事者に対して、勝手に財産を処分したり、隠したりすることの禁止を命じる、金銭の支払いを命じるなど、「調停のために必要であると認められる処分」を命ずることをいいます。
調停前の仮の処分をするか否かについては裁判所に決定権がありますが、事件の当事者は裁判所に対して調停前の仮の処分をするよう働きかけることができます。調停前の仮の処分を命じられた者が、正当な理由なく処分の内容に従わなかった場合には、10万円以下の過料に処せられます。
もっとも、たとえ裁判所が調停前の仮の処分を命じたとしても、強制力はありません。命令に反して不動産を売却しても元に戻す効果はなく、また、金銭の支払いについても任意に支払いに応じない場合には支払いを強制することはできないのです。あくまでも過料に処せられるという心理的な圧迫を加え、任意に命令に応じることを期待する効果しかないため、あまり利用はされていません。
- 調停離婚 [ちょうていりこん]
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調停離婚とは、夫婦の一方が離婚調停を申し立て、調停における話合いで離婚することです。離婚調停では、調停委員(男女1名ずつの場合が多い)と呼ばれる人が中心となって夫婦双方の話を聞き、離婚の合意や財産分与など離婚の条件について、それぞれの意見の調整を行ってくれます。離婚調停では、離婚についてだけではなく、離婚した場合の財産分与・慰謝料・養育費・親権者の指定・子どもとの面会交流などについても話し合うことができます。
調停での話合いの結果、夫婦が合意に達した場合は、調停成立となり、離婚が成立します。他方で、夫婦が合意に達しない場合は、調停不成立となり、場合によっては、離婚訴訟を提起して離婚を求めることになります。
- 陳述書 [ちんじゅつしょ]
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裁判において提出される証拠のなかの一つで、事件についての当事者や証人予定者が紛争の経緯や背景事情等に関して認識している事実を、主に時系列でまとめた書面のことをいいます。
通常、事件の判断を下す裁判官は、事件当事者の主張・言い分については、当事者尋問という手続のなかで直接質問をし、話を聞くことになりますが、事件のことをまったく知らない裁判官がいきなり当事者の話を聞いても、理解できない場合があります。この点、陳述書を事前に提出をしておけば、当事者尋問が行われる前に、事件の全体像や、事件当事者の言い分を裁判官にある程度把握してもらうことができるという効果があるのです。
陳述書は、争いが起こってから作成されるものであるため、証拠としての価値は低いといわれています。実際、裁判官も陳述書の内容のみによって判断を下すことはなく、裁判の勝敗を分けるのは陳述書以外の証拠によるところが大きいということになります。
て
- 貞操義務違反 [ていそうぎむいはん]
貞操義務とは、夫婦は互いに配偶者以外の者と性交渉をもってはいけない、つまり純潔を保つ義務です。民法は貞操義務を明文で定めていませんが、貞操義務に違反した場合、つまり、不貞行為は離婚原因となります。
協議離婚や調停離婚と異なり、離婚訴訟を提起して判決によって離婚する場合は、合意による離婚は認められず、民法が定める5つの離婚原因のうち、いずれかがない限り離婚することはできません。その離婚原因の一つとして不貞行為が挙げられています。
- DV [でぃーぶい]
DVとは、英語の「Domestic Violence(ドメスティック・バイオレンス)」の略であり、一般的には配偶者や恋人など親密な関係にある者、またはそのような関係にあった者から振るわれる身体的・精神的・性的暴力を意味します。
離婚訴訟において離婚が認められるためには、離婚原因が必要ですが、DVは、それによって婚姻関係が破綻した場合には、離婚原因と認められます。また、DVによって受けたケガや精神的ショックについては、程度によっては慰謝料を請求することができます。
配偶者から暴力により身の危険が迫っている場合や、身の危険を脅かすような脅迫を受けている場合などには、配偶者暴力防止法による保護を受けることができます。具体的には、裁判所から、被害者やその親族に対するつきまといや勤務先・自宅付近の徘徊を禁止する命令を出してもらえたり、被害者に対する面会要求や無言電話を禁止する命令を出してもらえたりすることができます。
また、配偶者からストーカー行為を受けている場合は、最寄りの警察に相談し、ストーカー行為をやめるよう命じてもらうこともできます。
もっとも、身の危険が迫っている場合は、配偶者に見つからない場所に避難することがもっとも重要です。まずは、婦人相談所、女性センター、福祉事務所など都道府県が設置している配偶者暴力相談支援センターに相談することをおすすめします。これらの施設では、身の安全を確保するため、婦人保護施設や母子生活支援施設への入所等ができるまでの間、一時的な保護を受けることができます。また、公益法人、NPO法人などの民間団体によって運営されているシェルターに相談することもできます。民間のシェルターでは、被害者の一時保護だけにとどまらず、相談への対応、被害者の自立へ向けたサポートなど、被害者に対するさまざまな援助を行っているようです。
と
- 同居義務違反 [どうきょぎむいはん]
民法は、夫婦には同居義務があることを明文で定めています。配偶者が正当な理由もなく同居を拒んだ場合(別居した場合)、同居を請求することができます。もっとも、本人の意思に反して強制することはできません。
また、配偶者が正当な理由もなく別居を開始した場合、夫婦の同居義務に反することになり、離婚訴訟においてむしろ不利に働くことがあり得ます。他方で、配偶者の暴力や冷却期間のために別居することは、正当な理由のある別居ですから、不利に働くことはありません。
- 答弁書 [とうべんしょ]
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答弁書とは、訴訟において被告が最初に提出する準備書面です。通常は、訴状に記載されている請求や事実の認否および被告の主張が記載されています。通常の民事訴訟では、答弁書が提出された場合は、第1回目の期日に限り訴訟期日に被告が出席しなくても、答弁書の内容が訴訟期日に陳述されたものとして、訴訟手続が進むことになります。
- 特別児童扶養手当 [とくべつじどうふようてあて]
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精神または身体に障害を有する20歳未満の子どもを家庭で監護、養育している父母等に支給される手当です。
原則として毎年4月、8月、12月に、それぞれの前月分までが支給されます。支給額は、以下のとおりです。
- 1級 月額53,700円
- 2級 月額35,760円
※2023年4月時点
特別児童扶養手当には所得制限があり、受給者、その配偶者または扶養義務者の前年の所得が一定の額以上であるときには支給されません。
なお、「扶養義務者」とは受給者の両親や兄弟姉妹をいい、元配偶者はこれにあたりません。また、離婚して元配偶者から養育費をもらっている場合、その養育費は「所得」とはみなされません。 - 特有財産 [とくゆうざいさん]
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特有財産とは、以下の財産のことをいいます。
2には、婚姻期間中に相続や贈与で得た財産のほか、婚姻共同生活のなかで各自が得た収入や、その収入で得た財産のうち取得や維持をするのに夫婦の他方がまったく協力(寄与)していないものも含まれます。
なお、夫婦のどちらの財産かわからない財産は、夫婦の共有財産となります。財産分与の対象は、夫婦の共有財産のみであり、特有財産は財産分与の対象とはなりません。
もっとも、離婚実務においては、名義のいかんにかかわらず、婚姻期間中に取得した財産は、一応夫婦の共有財産であると考えています。そのため、夫単独名義の不動産や、夫名義の預金・保険・株、夫の退職金なども、婚姻期間中に取得した財産であれば、一応夫婦の共有財産と考えます。もし、婚姻期間中に得たある財産について、財産分与の対象としたくないのであれば、それが特有財産であると認めるに足りる資料を提出する必要があります。
- ドメスティックバイオレンス [どめすてぃっくばいおれんす]
「Domestic Violence(ドメスティック・バイオレンス)」を略して「DV」と呼びます。詳しくはこちらを参照してください。