第3回「若年離婚 VS 熟年離婚!正しい離活のススメ」
ここ数年増えているのが、20年以上連れ添った夫婦が突然離婚する、いわゆる「熟年離婚」です。
夫の定年退職と同時に妻から別れを切り出されるケースに加え、最近では、子どもが進学・就職・結婚などで独立し、夫婦が二人きりになったあとに、妻が離婚を決心するケースもあります。子どもの独立がきっかけとなるケースでは、「夫の退職金を待つより、自分が働けるうちに少しでも早く夫と別れて新しい人生をスタートさせたい」という考えがあるようです。
一方で、29歳以下の夫婦が離婚する「若年離婚」も少なくありません。大人として十分な経験を積んでいるとはいえない時期にパートナーを決めてしまったことで、あとになって「こんなはずじゃなかった…」と後悔する夫婦も多いようです。
今回の「気になる!隣の離婚事情」第3回では、そんな「熟年離婚」と「若年離婚」の現状を覗いてみましょう。
熟年離婚の件数が急増!
- ※上記グラフは、厚生労働省『人口動態統計』に基づき、当事務所が独自に作成したものです。
- ※%=小数点第二位以下四捨五入。
統計データによると、2020年に離婚した50歳以上の夫婦は94,753件でした。
注目すべきは、1995年から2000年にかけて約45,000件から約94,000件と、およそ2倍以上に急増していることです。熟年離婚がこの5年で急増した原因は一体何なのでしょうか。
その理由の一つに、第一次ベビーブームのころに生まれた世代(いわゆる「団塊の世代」)の夫婦が、子どもの独立や夫の定年退職の時期を迎えたことが挙げられます。団塊の世代は、ほかの世代に比べて人口が多いだけでなく、「夫が外で稼ぎ、妻は家庭を守る」という家庭像の影響を強く受けていた世代です。仕事中心の生活を続け、家庭のことは妻に任せきりという夫も多く、そうした生活を何十年と続けてきたことで、夫には思いもよらない形で妻の不満が蓄積。その結果、子どもの独立や夫の定年を一つの区切りとして妻が離婚を決断するケースが増えたと考えられます。
さらに、90年代以降、パートや派遣など女性が社会進出する機会が増加し、女性自身の経済力が上昇。2007年4月からは、婚姻期間中の年金保険料納付実績が年金分割の対象となる「年金分割制度」も開始しました。
このような状況も、熟年離婚を後押しする要因となっているようです。
若年離婚は減少傾向に。ただし、離婚件数・割合は依然として1位
増える熟年離婚に対して、若者の離婚の現状はどうなっているのでしょうか。ここで熟年離婚と比較してみましょう。
- ※上記グラフは、厚生労働省『人口動態統計』に基づき、当事務所が独自に作成したものです。
- ※%=小数点第二位以下四捨五入。
29歳以下の若年離婚件数は1970年から増え続け、2000年にピークの14万3,689件を記録しました。その後、2020年には47,972件となり、ピーク時の半数以下に減少しています。
2000年以降、若年離婚が減っている理由にはさまざまな要因が考えられますが、その一つに「晩婚化」があります。
統計によると、1985年の初婚年齢は男性が28.2歳、女性が25.5歳だったのに対し、2020年の初婚年齢は男性が31.0歳、女性は29.4歳です。この数値からわかるとおり、初婚年齢が上昇したことで29歳以下の夫婦の数そのものが減少傾向にあるため、若年離婚の件数も減少していると考えられます。
熟年離婚と比較しても、若年離婚のほうが件数が少なく、離婚率も低くなっています。しかし、減少傾向にあるとはいえ、軽い気持ちで結婚したためにトラブルが絶えず、離婚に至ってしまう若い夫婦は多いのが現状です。
晩婚化は大きな問題ですが、単純に早く結婚すればよいというわけではありません。また、長く連れ添ったからといって、その夫婦が円満だとも限りません。結婚というものは本当に複雑で難しいですね。
条件を決めずに離婚するのは大きなトラブルのもと!
一日でも早く離婚したいという思いから、「条件は離婚してから決めればいい」と考える方もいるかもしれません。しかし、「熟年離婚」でも「若年離婚」でも、離婚する際にきちんと条件を決めておかないと、あとで大きなトラブルになります。
熟年離婚と若年離婚でトラブルになりがちな問題
「熟年離婚」の場合、すでに子どもが独立している家庭が多いため、親権や養育費など、子どもに関する条件でトラブルとなるケースは少ないでしょう。一方、年金分割や財産分与に関してトラブルとなるケースは非常に多いといえます。
「若年離婚」の場合、夫婦で持っている資産が少ないため、財産分与に関して大きなトラブルとなるケースはあまり見られません。一方で、親権や養育費など子どもに関する条件でトラブルとなるケースは多く見られます。
同じ「離婚」でも、夫婦の年齢層によってそれぞれ抱える問題は違ってくる点に注意が必要です。
離婚後のトラブルを防ぐために大切なこと
離婚後のトラブルを防ぐためには、離婚する際に、条件について夫婦で十分に話合いをすることが重要です。
そして、合意した内容は、公正証書として作成しておくことをおすすめします。
また、あとで「不利な条件で合意してしまった」、「合意書の書き方が曖昧で法的に効果がなかった」ということにならないために、弁護士へ相談することも検討するとよいでしょう。弁護士に相談すれば、離婚の条件について漏れなく、適正に取り決めることができます。
離婚問題を弁護士に相談するそのほかのメリット
弁護士に相談するメリットは、離婚の条件を適切に取り決められることだけではありません。
たとえば、離婚の話合いでは、突然相手が感情的になり「一銭も支払わない」と言い出して、交渉が難航することも多々あります。このような場合、書籍やインターネットで調べた知識だけでは、交渉を進めることが困難です。
しかし、弁護士であれば、技術や経験、法的知識をもとに、スムーズに交渉を進められます。
また、直接交渉することにより、多大なストレスを感じる方も大勢いらっしゃいます。
なかには、ご自身での交渉を始めたものの、あまりのストレスに耐えきれなくなり、「思わず不利な条件で離婚をしてしまった」という方もいらっしゃいます。
弁護士に依頼すれば、相手とのやり取りはすべて弁護士が行いますので、直接相手と話す必要がなくなります。その結果、ストレスが軽減され新しい生活への準備に集中することができるでしょう。
弁護士への相談は、「親身になって相談に乗ってもらえるか心配」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、「すべての事情を知っている弁護士にいつでも相談できて、心強かった」という声もよく耳にします。後悔しない離婚のためにも、まずは弁護士へのご相談をおすすめいたします。
監修者情報
- 資格
- 弁護士
- 所属
- 東京弁護士会
- 出身大学
- 慶應義塾大学法学部
どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。