特集:気になる!隣の離婚事情

第4回「ホントのコトが知りたい!妻の財産分与額」

離婚を決断する際に、やっぱり気になってしまうのが「お金」の問題。
慰謝料、養育費など、離婚の際に発生するさまざまなお金の問題について関心がある人も多いはずです。

しかし、実際にどのような仕組みになっているのか、完全に理解している人は少ないのではないでしょうか。

なかでも、最近増加傾向にある熟年離婚の場合にトラブルとなりやすいのが「財産分与」です。
財産分与では、対象となる財産や分配する割合の決め方などが複雑で、それぞれの夫婦の事情によってもらえる財産や金額が大きく異なります。場合によっては「もらえるはずのものがもらえなかった!」なんてことも。

「気になる!隣の離婚事情」第4回では、そんな「財産分与」について覗いてみましょう。

財産分与の対象は夫婦の「共有財産」だけ!

財産分与の対象となり得るのは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた以下のような財産です。

  • 現金・預金
  • 家具
  • 不動産(土地・建物)
  • 生命保険金、有価証券(投資信託)
  • 各種会員券
  • 退職金
  • 公的年金以外の年金(個人年金保険など)
  • 営業用財産(個人事業主など)
  • 借金(ギャンブルや浪費で作った借金は除く)

たとえば、夫婦で貯めた貯金や購入した不動産などは財産分与の対象となりますが、独身時代に貯めた貯金や結婚する前に購入した不動産などは、原則として財産分与の対象になりません。
また、婚姻後に相手方が相続や贈与によって得た財産も、原則として財産分与の対象にはなりません。

財産分与では「夫から妻へ」の支払いが8割以上

財産分与支払者の内訳

  • ※上記グラフは、『令和3年 司法統計年報(家事編) 第28表「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち財産分与の取決め有りの件数―支払額別支払者及び支払内容別』に基づき、当事務所が独自に作成したものです。
  • ※%=小数点第二位以下四捨五入。

司法統計によると、財産分与は“夫から妻へ”行われるケースが8割を超えています。
“夫から妻へ”という形式が多くなる理由としては、昔と比べて女性の社会進出が進んでいるとはいえ、まだまだ専業主婦も多く、働く女性が得られる生涯賃金も男性と比べて低いままであることが挙げられるでしょう。
また、貯金や不動産が夫の名義になっているケースが多いことも理由の一つといえます。

財産分与の割合はどう決まる?

財産分与は、裁判所において、原則として2分の1ずつ財産を分けると判断されることが多いです。ただし、実際の割合は、「財産形成や維持にどのくらい寄与したか」によって変わります

妻が専業主婦で収入がない場合も、「家事労働によって夫の労働を支え、夫婦の資産形成に貢献した」と考えられるため、財産分与を請求することができます。
また、離婚によって専業主婦だった妻の生活が困難となることが予測される場合などは、一定の期間、夫が妻に金銭的援助を行うといった“扶養料としての財産分与”が認められることもあります。

なお、個別の事情によっても、割合は変わります。婚姻費用を夫と同様に負担し、妻が長年家事にも従事した場合など、妻の寄与度が夫よりも高い場合には、妻のほうが多額の財産分与を受けられることもあるのです。

気になる財産分与の金額は?

 婚姻期間別の財産分与額

  • ※上記グラフは、『令和3年 司法統計年報(家事編) 第27表「離婚」の調停成立又は調停に代わる審判事件数―財産分与の支払額別婚姻期間別』に基づき、当事務所が独自に作成したものです。
  • ※%=小数点第二位以下四捨五入。

司法統計によると、婚姻期間が1年以上~5年未満で離婚した場合、財産分与額が100万円以下の夫婦は約5割以上で、600万円を超える夫婦は1割以下です。
一方、婚姻期間が25年以上の場合では、財産分与額が100万円以下の夫婦は1割以下なのに対して、600万円を超える夫婦は約6割と、ほぼ逆転しています。

その理由として、財産分与の対象となるのはあくまでも“夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産”であることが挙げられます。

基本的に、婚姻期間が長ければ長いほど“夫婦で築いた財産”は増えていくものですから、その分、離婚する際の財産分与の額も大きくなるというわけですね。また、日本は年功序列によって年齢が上がるほど収入が増える傾向があったことも、婚姻期間と財産分与との関係に影響を与えているものと考えられます。

財産分与の思わぬ落とし穴。離婚から2年で請求できなくなる!

実は、離婚原因をつくった側であっても、財産分与を求めることができます。浮気や借金など、「自分の行為が原因で離婚に至ってしまった場合には財産分与は請求できない」というのは、誤解です

ただし、離婚原因をつくった側はその慰謝料を相手方に支払う必要があります。そして、慰謝料が支払えない場合には、その相当額が財産分与から差し引かれることもあるということを覚えておきましょう。

また、離婚が成立してから2年が経過すると、財産分与の請求ができなくなる点にも注意が必要です。
離婚後でも財産分与を請求することはできますが、相手が話合いに応じてくれないケースや、対象となる財産が処分されてしまうケースなど、思わぬトラブルに発展することもあります。

そういった事態に陥るのを防ぐためにも、まずは弁護士に相談し、できるだけ早く財産分与の請求をすることが重要です。たとえ相手の名義となっていたとしても、婚姻期間中に築いた資産はあなたのものでもあります。後悔のない離婚のためにも、万全の準備を行うことをおすすめいたします。

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監修者情報

林 頼信

弁護士

林 頼信

はやし よりのぶ

資格
弁護士
所属
東京弁護士会
出身大学
慶應義塾大学法学部

どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。

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