第7回「離婚届にサインする前に!協議離婚で後悔しないための注意点と不受理申出」
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協議離婚は、夫婦が合意して離婚届を1枚出せば成立する、手軽な離婚の方法です。その手軽さゆえに、離婚条件を決めないまま離婚届にサインしてしまったり、相手に勝手に提出されてしまったりと、思わぬトラブルにつながることもあります。
この記事では、離婚届にサインする前に知っておきたい注意点と、勝手な提出を防ぐ「離婚届不受理申出」について解説します。
この記事を読んでわかること
目次
協議離婚は「離婚届1枚」で成立する
協議離婚とは、裁判所を通さないで、夫婦が話し合って離婚に合意し、離婚届を提出して離婚する手続きです。
9割近くがこの協議離婚で離婚しており、一番オーソドックスな方法です。
協議離婚の流れ
離婚届の提出に必要なもの
- 離婚届
- 本人確認書類
- 戸籍謄本(本籍地以外の役所に提出するとき)
裁判所の関与がなく、費用は原則かかりません。手続き自体も、比較的手間が少ないです。
しかし、その分「しっかり考えず勢いで離婚してしまった」「子どものこと、お金のこと…離婚条件を詰めずに先に離婚届を出したけど、条件がまとまらない」といった問題が起きることもあるのです。
STOP!離婚条件が決まる前に離婚届を出すのはリスク
離婚届の提出には、離婚条件が決まっていることは求められていません。
これまでは、離婚時には絶対に父母のどちらかを親権者と定めなければいけませんでしたが、2026年4月からはこれも必須ではなくなりました。ですので、何も離婚条件がまとまっていない段階でも、離婚届を提出して籍を抜くことはできます。
しかし、離婚後に相手が話し合いに応じてくれなかったり、連絡が取れなくなったり、そんなこと言っていないと話が変わったり…後々のトラブルに繋がるリスクがあります。
離婚後でも交渉したり裁判所での調停で決めていくこともできますが、手間も時間もかかりますので、条件が決まらない段階で戸籍だけ抜くことは基本的におすすめしません。
離婚届にサインするのは、離婚条件をまとめた後に
相手から「先に離婚届だけ書いておいて」と頼まれても、離婚条件が決まる前にサインして渡すのは避けましょう。
サインされた離婚届を相手が役所に提出すると、その時点で形式的には離婚が成立してしまいます。
安全なのは、離婚条件について合意し、その内容を離婚協議書や公正証書にまとめるのと同時か、その後に離婚届を提出する、という順番です。
相手にとっては、離婚届へのサインが条件の話し合いに応じる理由になっていることも多く、先に渡してしまうと、条件の交渉が進まなくなるおそれがあります。
すでにサインした離婚届を渡してしまった場合は、後で説明する「離婚届不受理申出」をしておくことで、勝手に提出されるのを防ぐことができます。
先にサインしてしまったことで不利になった典型例
- 不倫相手と一緒になるために相手が離婚を急いでおり、相場より高い慰謝料を払うと言っていたので離婚に応じたが、離婚後に相手が態度を翻し、話し合いにも応じなくなった。
- 親権、養育費、財産分与、慰謝料といった離婚条件に大きな差があったが、離婚後相手と連絡が取れなくなり、改めて調停などの法的手続きが必要になった(手元にお金が入ってくるまでかなり時間がかかってしまい、苦しい生活を強いられた)
相手が用意した離婚協議書にサインする前に
相手(または相手の弁護士)から、離婚協議書の案が送られてくることもあります。一度サインすると、後から内容を変えるのは難しいため、署名する前に内容をよく確認しましょう。
特に注意したいのが「清算条項」です。
これは「この協議書に書いたこと以外に、お互いに何も請求しない」という内容の一文で、これが入っていると、後から財産分与や慰謝料などを求めることが難しくなります。
ただし、清算条項がある場合でも、以下のようなケースでは請求が認められる可能性もあります。
- 重要な事実(不倫の事実等)を知らないまま清算条項のある離婚協議書に署名してしまった場合。錯誤を理由に取り消し、別途慰謝料などを請求できる可能性があります。
- 子ども自身が親に生活費を求める権利(扶養請求権)は、親が勝手に放棄することはできないとされているため、子どもの立場から扶養料を請求できる可能性があります。
- 離婚後に収入が大きく変わるなど、事情が大きく変わったときは、養育費の増額や減額を求めることができる可能性もあります。
このほか、養育費の支払いが終わる時期があいまいになっていないか、公正証書にしておくなど、支払いが止まったときに強制執行(給与の差押えなど)ができる形になっているかも、確認しておきたいポイントです。
ただし、養育費については、離婚後に請求して取り決める場合、親権者および監護者にとって不利益となることには十分ご注意ください。
請求できる養育費の金額は、請求時点から算定することが通常だからです。請求が遅れると、その分受け取れる養育費が少なくなるおそれがあります。
署名前に確認するべき内容や、一見公平でも不利になりやすい書き方の例
離婚協議書に署名される前には、ぜひ以下の点について、確認されることをおすすめします。
- 支払金額、支払期限や分割払いの各回の支払日、支払方法、振込先は明確に書かれているか
- 「振込手数料は、支払義務者が負担する」という内容が記載されているか
- 記載された財産に漏れがないか
- 財産分与の対象財産は特定して記載されているか
- 名義変更手続きや税務上の問題が生じない記載になっているか
- 強制執行認諾文言付きの公正証書など、金銭の不払いに備えて強制執行ができる形になっているか
- 不倫相手と再婚しないこと、再婚したら違約金を払うことなど、法的効力が認められない可能性がある内容が含まれていないか
協議離婚で後悔が多い取り決め
協議離婚では夫婦だけで条件を決めるため、後から「こんなはずではなかった」となりやすい取り決めがあります。代表的なのが、住宅ローンが残っている家の扱いです。
たとえば「家には妻と子どもが住み続け、ローンは夫が払い続ける」と夫婦で合意しても、ローンの名義人や連帯保証人は、銀行の同意がなければ変わりません。
離婚後に相手が支払いをやめてしまうと、家に住み続けられなくなったり、連帯保証人として返済を求められたりするおそれがあります。
このほかにも、次のような取り決めは後悔につながりやすいので注意しましょう。
- 養育費の金額や、支払いが終わる時期をあいまいにした
- 退職金や年金分割のことを決めずに離婚した
- 「早く別れたいから何もいらない」と、財産分与や慰謝料をあきらめた
「離婚前に相談頂いていれば…」と感じる取り決めの例
実際にご相談を頂くなかで、「できれば、“離婚される前に”ご相談頂きたかった…」と感じることも少なくありません。たとえば、以下のようなケースです。
- 相手が財産管理をしていて詳細を知らなかったので、相手の言い値で財産分与を決めてしまった
- 離婚協議書の内容が抽象的で、無効とされてしまった。
- 公序良俗に反し、効力がない条項が含まれていた。
(「養育費を一切請求しない」、「親子交流を一切認めない」といった子どもの利益に影響する取り決めや、不倫相手と再婚しないこと、再婚したら違約金を払うことを約束するもの) - 取り決め内容を執行認諾文言付きの公正証書にしておらず、すぐに強制執行ができない部分があった。
せっかくご相談を頂いても、後から覆すことが難しい内容もあります。ご自身の判断だけで手続きを進めてしまう前に、ぜひ一度弁護士へのご相談も検討いただければと思います。
STOP!勝手な離婚届の提出を防ぐ「離婚届不受理申出」
「相手が離婚を急いでて、勝手に離婚届を出してしまいそう」
「離婚届にサインしていたけど気持ちが変わった」
「籍を抜くつもりはないのに喧嘩の勢いでサインしちゃった」
上記のように、離婚届を提出する明確な意思がないのであれば、法的に離婚は無効になりえますし、そもそも勝手に離婚届を作ったり提出することは犯罪にもなる許されない行為です。
しかし、役所はそんな細かい事情まで調べませんから、提出された離婚届に形式的な不備がなければ受理されてしまうことが多いのです。
そういった状況では、「離婚届不受理申出」という制度を検討されてもよいでしょう。「離婚届不受理申出」とは、夫婦の一方が無断で作成・提出する協議離婚届の受理を防ぐ制度のことです。
原則として、申出したい本人が役所(本籍地の市区町村役場)の窓口に行って手続きすることが必要ですが、「離婚届不受理申出書」をもらい、必要事項を記入して提出するだけなので比較的手間がかかりません。
申出をしても相手に通知はされないので、勝手に離婚届を出されるなどしない限り、相手に知られることはありません。また、取下げをしない限り、有効期限は無期限(平成20年5月1日以前の申出は最長6か月)です。
相手が別れたがっている、離婚を急いでいるなど勝手に離婚届を出されそうなとき、離婚したくないときや離婚の話し合いがまとまらないときなど、申出をしておくと安心でしょう。
ただし、この効果は絶対ではありません。裁判で離婚が確定すれば、申出をしていても離婚届は有効に受理されます。
夫婦だけの話し合いに区切りをつける目安
協議離婚ができない状況は多くあります。かといって、話し合いを続ければいつかまとまるとは限りません。
次のような状況が続いているときは、夫婦だけでの話し合いに区切りをつけ、調停や弁護士への相談を考えるタイミングです。
- 相手が別れてくれない・自分が別れたくないなど、意見が食い違って離婚自体合意できない
- お互いに離婚の方向でもいいけれど親権や財産分与など離婚条件がまとまらない
- 仲が悪すぎて冷静に話し合えない
- DVがあり、話すたびに怖さや強い圧迫感を感じる
- 相手が弁護士をつけた
夫婦だけの話し合いが長引くデメリット
また、話し合いが長引くほど、別居中の生活費の問題や、子どもへの影響が大きくなることもあります。
具体的には、以下のようなデメリットがあると言えるでしょう。
- 別居中に相手に支払う婚姻費用の支払いが続き、金銭的な負担が大きくなることがある
- 不安定な家庭環境によって、子どもの精神的負担が大きくなることがある
- 関係修復をしたかったが、話し合いで別居が長期化した結果、相手からの離婚請求が認められてしまうことがある
離婚の話し合いに不安があるときは、アディーレにご相談ください
「相手と冷静に話し合えない」「離婚条件をどう決めればいいかわからない」「離婚届にサインする前に、内容が不利になっていないか確認したい」。そんなときは、弁護士に相談することも一つの方法です。
弁護士に依頼すれば、相手との話し合いを代わりに進めたり、取り決めた内容を離婚協議書や公正証書にまとめたりと、離婚が成立するまでをサポートできます。
アディーレ法律事務所では、離婚に関するご相談をお受けしています。相手から離婚を切り出されて困っている方も、話し合いが進まずお悩みの方も、まずはお気軽にお問い合わせください。
監修者情報
- 資格
- 弁護士、行政書士(未登録)、宅地建物取引士(未登録)
- 所属
- 愛知県弁護士会
- 出身大学
- 南山大学法学部,南山大学法科大学院
一児のシングルマザーとしての経験を活かし、離婚、浮気・不倫の慰謝料問題、男女トラブルなどに精通している。テレビのコメンテーターなど、メディア出演の実績が多数。時事ニュースの法律解説にも対応し、難しい法律をわかりやすく的確に伝えることを大切にしている。

