第8回「離婚調停は自宅から参加できる?ウェブ会議の使い方と調停・審判の豆知識」
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離婚調停というと「裁判所に何度も足を運ぶもの」というイメージがあるかもしれません。実は現在、裁判所が認めれば、離婚調停には自宅などからウェブ会議で参加でき、調停の成立までオンラインで済ませることもできます。
この記事では、ウェブ会議での調停参加の方法や、あまり知られていない「審判離婚」の仕組みなど、離婚調停・審判にまつわる豆知識を解説します。
この記事でわかること
目次
話し合いがまとまらなければ、裁判所での「調停」へ
たとえば以下のように、「自分たち夫婦の話し合い(協議)だけでは、離婚話が一向にまとまらない…」といったケースがあると思います。
- 離婚するかどうかの意見が合わない(相手が別れてくれない、自分は別れたい等)
- お互いに離婚の方向で問題はないが、親権や財産分与など離婚条件がまとまらない
- 仲が悪すぎて冷静に話し合えない
- DVがあり、夫婦で話し合うのは無理
上記のような場合は、次のステップである「調停離婚」に進むことが一般的です。
「調停離婚」は、裁判所の「調停」という手続きを使って、専門家を交えて離婚の話し合いをして、合意を目指す手続きです。合意ができて調停成立になると、離婚も成立します。
調停離婚の特徴|非公開で、相手と顔を合わせずに話し合える
調停は、通常の裁判とは違い非公開の場で行われるので、内容を第三者に見られてしまうことはありません。
相手と直接話し合うわけではなく、それぞれが別の待合室で待機し、調停委員のいる部屋に交互に入って話をするので、基本的に相手と顔を合わせることはありません。DVなどの危険性があるときは、鉢合わせしないよう配慮を求めることもありますし、後に述べるようにリモートという選択肢もあります。
1ヵ月~2ヵ月に1回程度の頻度で、複数回行うのが一般的です。離婚するかどうかだけではなく、離婚の条件についても話し合いができます。
このように、調停は、場所は裁判所でも、あくまで話し合いの手続きです。当事者が納得して協議がまとまることで調停が成立し、その結果として離婚が成立します。
話がまとまらないときは調停不成立になるので、この時点で勝手に離婚が成立してしまうことはありません。
離婚調停の手続きの流れ
【注意】申立書は相手にも届きます
申立書の写しは、相手にも送られます。相手を責める言葉を書き連ねると、かえって話し合いがこじれるおそれがあるので、事実を淡々と書くようにしましょう。
また、DVなどで別居先の住所を相手に知られたくない場合は、住所などの秘匿を申し立てたり、裁判所に提出する一部の書類を相手に見せないよう申し出る手続きがあります。
必ず認められるとは限らないため、申立ての前に、裁判所や弁護士に相談しましょう。
合意する前に確認したい「調停調書」の内容
調停が成立すると「調停調書」が作られます。調停調書は確定した判決と同じ効力を持つため、後から「やっぱり納得できない」と思っても、原則としてやり直すことはできません。
その場で合意を求められても、迷うときは無理に決める必要はありません。「一度持ち帰って考えたい」と伝え、次回の期日まで検討することもできます。
また、養育費などお金の取り決めは、書き方によって、支払いが止まったときに強制執行(給与の差押えなど)ができるかどうかが変わります。
「〇〇円を支払う」とはっきり書かれているか、支払期限や振込先が具体的か、といった点を必ず確認しましょう。
調停成立後に「こう決めておけばよかった」と後悔した例
たとえば、以下のようなケースでは、調停成立後に後悔することになるかもしれません。
- 戸籍に調停離婚したことが記載された。離婚届を書いて、後日どちらかが提出する協議離婚の形で合意すればよかった。
- 離婚届を相手が提出して離婚すると合意していたが、相手が提出せず困ったので、調停離婚にしておけばよかった。
- 財産分与で自宅を取得したものの、記載内容が不十分で、相手に登記手続きに協力してもらわなければならず、大変だった。
- 離婚後子どもに会わせてもらえなかったが、親子交流の詳細な内容は詳しく取り決めなかったために、間接強制を利用できなかった。
上記のような状況を未然に防ぐためにも、ぜひ一度弁護士へのご相談をご検討頂ければと思います。
別居中の生活費は「婚姻費用分担調停」もあわせて申し立てる
離婚調停は、話し合いがまとまるまで数か月から1年以上かかることもあります。その間、別居中の生活費に困る方は少なくありません。
夫婦には、離婚が成立するまでお互いの生活を支え合う義務があり、収入の多い側に生活費(婚姻費用)を請求できます。
金額は、裁判所が公表している算定表が目安になり、仮に相手が支払わない場合は、離婚調停とあわせて「婚姻費用分担調停」を申し立てることができます。
婚姻費用は、実務上、請求した時点(調停を申し立てた時点など)からの分が認められることが多く、それより前の分をさかのぼって受け取るのは難しい傾向にあります。
生活費に不安がある方は、離婚調停と同時に、あるいは先に申し立てることを検討しましょう。
申立てが遅れて、受け取れる生活費が少なくなったケース
たとえば以下のようなケースでは、受け取れる生活費が少なくなってしまいます。
- 引っ越し後の生活が落ち着くまで、数ヵ月請求をしなかった。
- 別居後、婚姻費用を請求していたが、口頭での請求だったため、資料や証拠が残っていなかった。その結果、調停申し立て以前の分が認められなかった。
申立てが遅れたり、正式な請求ができていなかったりすると、過去分の支払いが認められない可能性があります。
すぐに調停が申立てられない場合も、請求した時期や内容が明確に残るよう、内容証明郵便で請求しておくとよいでしょう。
離婚調停はリモート(ウェブ会議)でも参加できる
調停は原則として本人の出席が求められていますし、弁護士をつけていても、弁護士と一緒に裁判所へ行くのが通常です。
しかし、コロナ禍以後ビジネスでもオンラインを利用する機会が増えましたが、裁判所でも、電話会議やオンラインのウェブ会議といったリモートが活用されるようになりました。
調停は相手の住所地に申し立てますが、別居後相手が離れた実家に戻っていることも多くあり、調停の度にそこまで赴くのは、時間的にも経済的にも負担が大きくなります。
外出が困難、DV被害を受けているなど、同じ場所にいることや対面での調停が難しいケースは色々あります。
そのため、裁判所が相当だと認めたときは、調停を申し立てた裁判所へ行かず、リモートで調停に参加することも可能です(録音・録画は禁止!)。自宅など、インターネットに接続できる静かな場所ならどこからでも参加できますし、これを使うと不利になる、ということもありません。
調停の成立もウェブ会議でできる
また、当事者の意向を対面で確認する必要があるということで、調停成立の期日には調停を申立てた家庭裁判所に出頭しないといけませんでした。
現在は、当事者の表情等を確認できるウェブ会議を利用して調停成立できるようになり、当事者の負担は大幅に軽減されています。
制度上は最初から最後までウェブ会議ということも可能ではありますが、微妙なニュアンスが伝わりにくいなど、ウェブならではのデメリットもありますので、対面の期日とウェブを上手に組み合わせることも想定するとよいでしょう。
ウェブ会議を利用するために必要なもの
- 静かでプライバシーが確保できる場所
- 安定したインターネット接続
- パソコン(推奨。スマホやタブレットも可能)
- ウェブカメラ(パソコン内蔵のものでも可)
- マイク(パソコン内蔵のものでも可)
- イヤホンやヘッドセット(他の人に聞こえる場合)
離婚裁判の前には調停が必要|「調停前置」の原則
離婚裁判を起こす前には、原則として先に離婚調停をしていなければならないというルールがあります。
ですので、「言い分の隔たりが大きすぎて話し合いでは絶対にまとまらないだろう」「最後までモメにモメるだろうから調停するだけ無駄」と思われるときでも、必ず調停を経る必要があります。
ただし、例外的に、相手の所在や生死がわからない、長期間刑事収容施設に収容されているなど、およそ調停ができないであろうという場合には、最初から裁判を起こすことができるケースもあります。
離婚の約9割が協議離婚、調停離婚が約1割弱とされています。このように多くの方が話し合いによって離婚していますが、中には、裁判所が「離婚する」と判断するケースもあります。
まれに使われる「審判離婚」の仕組み
調停を行ったけれど不成立になった、でも家庭裁判所としては離婚した方がいいと判断したときには、「審判離婚」が検討されます。
審判離婚とは、家庭裁判所が職権で離婚や離婚の条件を決める「調停に代わる審判」を行い、これによって離婚する手続きです。
調停不成立のとき、多くは裁判を提起することになるため、こちらはかなりレアな手続きといえます。聞き慣れない方も多いかもしれません。
ちなみに、審判は基本的に自分で申立てることはできませんが、裁判所に求めることは可能です。この点は後ほどご説明します。
審判離婚が使われるケース
審判離婚が、具体的には以下のようなケースで使われます。
- おおむね合意がまとまっているが、わずかな意見の食い違いがある
- 子どもに不利益なので、離婚問題の早期解決が必要
- お互いに離婚および離婚条件に合意しているが、病気などにより出席できず、調停ができない
- 合意がまとまらない理由が感情のもつれである
- 離婚に合意したのに、相手の所在がわからなくなってしまった
- 当事者が審判にすることに合意した
審判の流れと異議申立て
審判が始まると、裁判所は、調停に関与した調停委員から話を聞いたり、家庭裁判所調査官の調査などをもとに、離婚について判断を行います。
審判が出されると、審判書が当事者に送付されます。
内容が納得できなければ、審判書を受け取って、審判の告知を受けた日の翌日から2週間以内に異議申立てができます。異議申立書には理由の記載もいらないですし、作成は簡単です。
審判離婚のメリット・デメリット
審判は、非公開の手続きでプライバシーが守られやすく、裁判よりも迅速な解決が望める点が大きなメリットと言えるでしょう。
確定すれば効果は裁判と同じで、約束が守られないときは強制執行ができる点も特徴です。
しかし、内容に不服があれば異議申立てが可能で、どちらか一方が異議申立てをすると、理由を問わず、審判の効果が失われてしまうというデメリットもあります。
審判の効果が失われてしまっても離婚をしたいときは、改めて、最後の手段である「裁判離婚」を目指すことになります。
審判離婚を当事者側から求めるケース
審判は裁判所の判断で行われるものですが、実際には、当事者の側から「審判で解決してほしい」と裁判所に求めることもあります。審判の結果、特に異議申立てがなければ離婚が確定し、確定日に離婚が成立します。
たとえば以下のような場合は、審判による解決が検討されることがあります。
- おおむね離婚条件はまとまっているが、ごくわずかな条件の違いで合意に至らないとき
- 双方離婚に納得しているが、感情的な反発が理由でまとまらないとき
- 離婚および離婚条件に争いはないが、相手の出席が難しいとき
- 親権など、早期に結論を出すことが望ましいケース
- いったん離婚に合意したが、相手が意見を翻したとき
審判の結果に不満があるときは…?
審判の内容に不満があるとき、異議を出すかどうかは慎重に考える必要があります。
異議を出せば審判の効力はなくなりますが、それでも離婚したいときは裁判を起こすことになり、さらに時間と費用がかかります。
そのため、審判の内容が、裁判になった場合に予想される結果と比べてどうかを見極めることが大切です。
一例として、異議を出すかどうかの判断基準は以下となります。
- 審判の内容は法的に妥当か
- 自分や子どもの今後の生活にどのような影響があるか
- 離婚や離婚条件について、どのような点が納得できないのか
- 訴訟になった場合に、自分の主張が認められる見込みはどの程度か
- 裁判に必要な時間や費用、精神的負担をどの程度受け入れられるか
したがって、必要に応じて弁護士に相談しながら判断することが大切です。
審判が確定したあとの離婚届の提出
審判確定後は、以下の書類を10日以内に役所へ提出し、離婚の届出をしましょう。
- 離婚届(相手の署名、押印、証人は不要)
- 審判をした家庭裁判所で取得した審判書謄本
- 審判をした家庭裁判所で取得した審判確定証明書
- 戸籍謄本(本籍地以外の役所に届出する場合)
調停・審判でも離婚できないときは裁判離婚へ
なお、「調停がまとまらず不成立だった、審判が出たけど異議申立てで終わってしまった…」という場合に、それでも離婚したいときには、最終手段である離婚裁判に進むことになります。
離婚裁判では、法律で定められた離婚の理由(不貞行為など)があるかどうかを裁判所が判断し、離婚を認めるかどうかを決めます。
離婚調停に不安があるときは、アディーレにご相談ください
「調停で何を話せばいいかわからない」「相手の言い分に押されてしまいそう」「提示された条件に合意してよいか判断できない」。そんなときは、弁護士に相談することも一つの方法です。
弁護士に依頼すれば、申立書の作成から調停期日への同席、相手との条件の調整まで、離婚が成立するまでをサポートできます。
アディーレ法律事務所では、離婚に関するご相談をお受けしています。話し合いがまとまらずお困りの方も、相手から調停を申し立てられた方も、まずはお気軽にお問い合わせください。
監修者情報
- 資格
- 弁護士、行政書士(未登録)、宅地建物取引士(未登録)
- 所属
- 愛知県弁護士会
- 出身大学
- 南山大学法学部,南山大学法科大学院
一児のシングルマザーとしての経験を活かし、離婚、浮気・不倫の慰謝料問題、男女トラブルなどに精通している。テレビのコメンテーターなど、メディア出演の実績が多数。時事ニュースの法律解説にも対応し、難しい法律をわかりやすく的確に伝えることを大切にしている。

