離婚問題の知識と法律

離婚の慰謝料とは?相場や時効、請求のための条件・証拠などを解説

離婚の際には、離婚すること自体や離婚原因によって生じた精神的苦痛に対し、慰謝料を請求できることがあります。
ただし、離婚の慰謝料はどの夫婦にも必ず発生するものではありません。

そこでこのページでは、離婚の慰謝料を請求できるケース・できないケースに加え、慰謝料の相場や金額を決める際に考慮される要素、慰謝料請求の方法などを解説します。

このページでわかること

  • 離婚の慰謝料を請求できるケース・できないケース
  • 離婚の慰謝料の相場と金額に関わる要素
  • 離婚の慰謝料を請求する方法

離婚の慰謝料とは

離婚の慰謝料とは、離婚によって被る精神的苦痛に対して支払われるお金のことです。

離婚の慰謝料は、大きく以下の2つに分類されます。

慰謝料の種類 説明
離婚自体慰謝料 離婚すること自体(=配偶者の地位を失うこと)によって生じる精神的苦痛に対するもの
離婚原因慰謝料 不倫や暴力など離婚原因となる行為で被った精神的苦痛に対するもの

なお、実際に慰謝料を請求する際は、離婚自体慰謝料と離婚原因慰謝料が明確に区別されることはありません。

離婚慰謝料を請求する相手

離婚の慰謝料は、基本的に有責配偶者に対して請求することになります。

ただし、離婚原因を作った第三者がいる場合、配偶者だけでなく離婚原因を作った第三者に請求することも可能です。典型的な例としては、配偶者の不倫相手などが考えられます。

これは、有責行為を共同で行った加害者は、被害者に対し共同で責任を負うこと(不真正連帯責任)とされているためです。

したがって、不貞行為が原因で離婚に至ったようなケースでは、慰謝料として妥当な金額の範囲で、配偶者と不倫相手のどちらか一方、または双方に対して慰謝料を請求できます。

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離婚慰謝料を請求できる期間

離婚の慰謝料を請求する権利には、以下のように消滅時効があります。

慰謝料の種類 時効
離婚自体慰謝料 離婚が成立したときから3年
離婚原因慰謝料 以下のいずれか短いほう
  • 損害および加害者を知ったときから3年
  • 不法行為があったときから20年

上記の期間を過ぎると、時効が完成し慰謝料を請求できなくなります。
特に離婚原因慰謝料は、損害および加害者を知った時点で時効の期間のカウントが開始されるため、注意が必要です。

なお、夫婦間で慰謝料を請求する場合、離婚から6ヵ月を経過するまで時効は完成しません(民法第159条)。
一方で、損害および加害者を知ったときから長期間が経過しているケースでは、慰謝料が認められないことや、認められたとしても低額になることはあり得ます。

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離婚の慰謝料を請求できるケース・できないケース

慰謝料は、離婚の際に必ず支払われるものではありません。
以下で、離婚の慰謝料を請求できるケース・請求できないケースをそれぞれ見ていきましょう。

慰謝料を請求できるケース

裁判上、離婚原因に基づく慰謝料が認められる可能性があるのは、たとえば配偶者に以下のような行為があったケースです。

  • 不貞行為
  • DV・モラハラ
  • 悪意の遺棄
  • 一方的な性交渉の拒否 など

それぞれ詳しく見ていきましょう。

不貞行為

不貞行為とは、夫婦の一方が配偶者以外の異性と自由な意思で肉体関係を持つことです。

不貞行為があった場合、不貞行為を行った配偶者だけでなく、不貞相手に対しても慰謝料を請求できる可能性があります。

ただし、配偶者と不貞相手の両者に請求する場合、妥当な金額を超えて慰謝料を二重取りすることはできません。

たとえば、妥当な慰謝料が300万円の場合、合計金額が300万円になるよう請求する必要があります。
両者から300万円ずつ、合計600万円を支払ってもらうことはできないということです。

不貞相手からすでに十分な慰謝料を受け取っているようなケースでは、配偶者に対してそれ以上の請求ができなくなるため注意しましょう。

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DV・モラハラ

DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、一般的に、親密な間柄で一方的に振るわれる暴力のことをいいます。
モラハラ(モラルハラスメント)は、言葉や態度で相手を攻撃する精神的暴力のことです。

たとえば、配偶者から殴る・蹴るなどの身体的な暴行を受けていたケースや、無視・暴言などにより精神的に追い詰められていたケースでは、慰謝料を請求できる可能性があります。

悪意の遺棄

悪意の遺棄(あくいのいき)とは、正当な理由がないのに夫婦の同居義務・協力義務・扶助義務を果たさず、配偶者を放っておくことをいいます。

たとえば、以下のようなケースです。

  • 一方的に別居をする、家を追い出す
  • 家事や育児を一切しない
  • 働く能力があるのに働かない
  • 収入があるのに生活費を一切支払わない など

これらに当てはまる場合には、悪意の遺棄を理由に慰謝料を請求できる可能性があります。

一方的な性交渉の拒否

夫婦の一方が正当な理由なく性交渉を拒否し続けたことで夫婦関係が破綻し、もう一方が精神的苦痛を被った場合、慰謝料を請求できる可能性があります。

ただし、性交渉がなかった(セックスレスだった)だけで慰謝料を請求できるわけではないため、注意しましょう。
病気や高齢などの理由がある場合や、夫婦の同意があった場合などには、慰謝料は請求できません。

慰謝料を請求できないケース

一方で、以下のような理由で離婚するケースでは、夫婦のどちらかが一方的に悪いわけではないため、慰謝料を請求できない可能性があります。

  • 性格の不一致
  • 信仰上の対立
  • 健康上の問題
  • 相手の親族との不仲 など

なお、ご自身が離婚原因を作った側(有責配偶者)である場合、そもそも慰謝料は請求できません。

また、夫婦双方が離婚原因を作り責任の度合いが同程度である場合には、慰謝料を請求すること自体はできますが、相殺されて結果的に慰謝料が発生しない可能性があります。

離婚の慰謝料の金額はどう決まる?

離婚の慰謝料は、裁判上の相場を目安とし、さまざまな要素を考慮して決まります。

離婚慰謝料の相場

裁判上の離婚慰謝料の相場は、離婚理由にもよりますが、特に不貞行為がある場合には100万円~300万円程度であることが多いです。
個別具体的な事情によっては、50万円程度と認定されるケースや、300万円以上と認定されるケースもあります。

なお、交渉で慰謝料を請求する場合、相手が応じれば相場以上の金額を支払ってもらうことも可能です。
しかし、あまりに高額すぎる慰謝料の支払いを求めると、話合いが進まなくなってしまうおそれもあるため注意しましょう。

離婚慰謝料の増減に関わる要素

慰謝料の金額は「精神的苦痛の程度」によって変わります。
精神的苦痛の程度が大きいほど、慰謝料の金額も高くなるということです。

具体的には、以下のようなあらゆる要素を考慮して算定されます。

共通の要因
  • 有責行為の悪質性
  • 破綻に至る経緯
  • 婚姻期間(同居期間・別居期間)
  • 婚姻生活の実情
  • 家族関係
  • 子どもの有無・人数 など
請求する側の要因
  • 自活の能力 など
請求される側の要因
  • 婚外子の出生・認知の有無
  • 生活費不払いの有無
  • 関係修復の努力の有無 など

離婚の慰謝料請求に必要な証拠

慰謝料を支払ってもらうためには、証拠がとても重要です。
離婚原因によって、たとえば以下のようなものが証拠になり得ます。

離婚原因 証拠
不貞行為
  • 肉体関係があったと推測できる内容のメールやSNS、通話記録
  • ホテルなどに出入りしている写真・動画
  • 配偶者や不倫相手が不貞の事実を認めた録音 など
DV・モラハラ
  • 暴力を振るわれてケガをしたときに病院でもらえる診断書
  • 怒鳴り声や𠮟責中の音声・モラハラを受けている場面の動画
  • 相手の言動の具体的な記録 など
悪意の遺棄
  • 生活費が支払われなくなったことがわかる預金通帳
  • 家出をする旨を通知した手紙やメール など
一方的な性交渉の拒否
  • 夫婦関係を書き留めた日記やメモ
  • 夫婦間の言い争いの録音記録 など

上記のほかにも、証拠となるものがある場合がありますので、詳しくは弁護士に相談してみるとよいでしょう。

離婚の慰謝料を請求する方法

離婚の慰謝料は、話合いや裁判所を通した手続のなかで請求することになります。
以下で詳しく見ていきましょう。

夫婦間の話合い

まずは、離婚自体やほかの離婚条件の取決めなどとあわせて、夫婦間の話合いのなかで慰謝料を請求します。
配偶者が支払いに応じれば、金額や支払方法を自由に取り決めることが可能です。

なお、離婚慰謝料を請求した場合にも、まったく性質の異なるお金である財産分与や養育費などは別途請求できます。
財産分与については、慰謝料と明確に区別せずにまとめて請求することも可能です(慰謝料的財産分与)。

離婚調停

話合いがまとまらない場合や、配偶者が話合いに応じてくれない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てましょう。
離婚調停では、調停委員を介して離婚自体や慰謝料をはじめとする離婚条件について話し合います。

合意に至った場合は調停が成立し、取決めの内容をまとめた調停調書が作成されます。

離婚調停について詳しく見る

離婚裁判

離婚調停で合意できず、調停不成立になった場合は、離婚裁判を提起します。
裁判は、夫婦それぞれの主張や提出した証拠などをもとに、裁判所が判断を下す手続です。

最終的に、離婚や慰謝料の支払いを認める判決が出れば離婚が成立します(判決離婚)。

なお、裁判の途中で、裁判所から和解をすすめられることもあります。和解とは、裁判手続のなかで話合いによって問題を解決する方法です。

裁判所から提示される和解案に夫婦双方が合意すれば、離婚が成立し慰謝料などの離婚条件が決まります(和解離婚)。

離婚裁判について詳しく見る

離婚の慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット

離婚の際に慰謝料を請求するなら、弁護士へ依頼し、対応を任せるのがおすすめです。
弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。

適正な慰謝料の獲得を目指せる

離婚の慰謝料は、婚姻期間やお互いの収入などの要素だけでなく、交渉の方法などによっても支払ってもらえる金額が変わることがあります。

ご自身でうまく交渉ができないと、本来受け取れるはずの慰謝料よりも低い金額で合意してしまうことにもなりかねません。

弁護士に依頼すれば、具体的な事情をふまえた適正な慰謝料の獲得を目指せます。
相手から減額を求められたときなどにも、適切に対応してもらえるため安心です。

ほかの離婚条件も適切に取り決めてもらえる

離婚の際には、慰謝料以外にも財産分与や養育費など、さまざまな離婚条件を取り決める必要があります。

しかし、多岐にわたる離婚条件を漏れなく取り決めることは簡単ではありません。
適切な取決めができないと、金銭的に損をしてしまったり、将来トラブルになったりするおそれもあります。

弁護士に依頼すれば、さまざまな事情に配慮して漏れなく離婚条件を取り決めてもらえます。
将来を見据えた有利な条件で離婚できる可能性も高まるはずです。

交渉で解決できる可能性が高まる

離婚調停や離婚裁判は、想像以上に時間や労力がかかります。
そのため、よりスムーズかつ早期に離婚したいのであれば、交渉での解決を目指すことが大切です。

しかし、夫婦だけで話し合おうとするとお互いが感情的になってしまい、なかなか話が進まないケースも少なくありません。

弁護士に依頼すれば、法的知識をもとに冷静に話合いを進めてもらえるため、交渉で解決できる可能性が高まります。
万が一、調停や裁判に発展してしまった場合にも、対応を任せられるため安心です。

離婚の慰謝料に関するよくある質問

離婚の慰謝料について、お客さまからよく寄せられる3つのご質問にお答えします。

離婚しなくても慰謝料請求できる?

離婚をしなくても、不貞行為などの「不法行為に対する慰謝料」は請求することが可能です。
ただし、慰謝料の金額は離婚する場合と比べると低額になります。

また、夫婦関係を継続することを前提とするため、配偶者に対し慰謝料請求するのは現実的ではありません。基本的には、不倫相手などに対して慰謝料を請求することになるでしょう。

「離婚の決断はできないけど、不倫相手に今すぐ慰謝料を請求したい」とお考えであれば、浮気・不倫の慰謝料請求に特化した以下のページもぜひご覧ください。

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離婚の慰謝料に税金はかかる?

慰謝料が相当な金額である限り、原則として税金は課されません。

ただし、不動産など価値の増減する資産によって慰謝料が支払われる場合、支払う側に譲渡所得税(譲渡所得)が、受け取る側に不動産取得税が課せられることがあります。
不動産の登記申請をする際には、登録免許税もかかるため注意が必要です。

また、慰謝料が高額すぎる場合や、合意書などがなく不法行為に対する慰謝料だと証明できない場合などには、実質的な贈与だとして贈与税が課せられるおそれがあります。

離婚後に慰謝料を請求できる?

離婚後であっても、以下の条件を満たせば慰謝料を請求することが可能です。

  • 時効が完成していない
  • 離婚時に慰謝料の取決めをしていない
  • 離婚原因となった不法行為の証拠がある
  • 清算条項(※)のある離婚協議書の締結や公正証書の作成をしていない

なお、離婚時に「慰謝料の請求はしない」などと取り決めたとしても、当時は不倫の事実を知らなかったような場合には、合意の前提が異なるとして請求ができるケースもあり得ます。

また、配偶者に慰謝料請求できないケースでも、不倫相手に対しては慰謝料請求できる可能性もあるでしょう。

※離婚に関して当事者間には債権も債務もないことを相互に確認する条項のこと

まとめ

離婚慰謝料は、離婚自体や離婚原因となる行為によって被った精神的苦痛に対して支払われるお金です。

配偶者に不貞行為やDV・モラハラなどがあった場合には、財産分与や養育費などとあわせて慰謝料の請求も検討するとよいでしょう。

アディーレ法律事務所では、離婚に伴う慰謝料請求に関するご相談を承っております。
「適正な慰謝料の金額がわからない」「自分で請求するのは不安」とお悩みであれば、まずはお気軽にご相談ください。

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監修者情報

林 頼信

弁護士

林 頼信

はやし よりのぶ

資格
弁護士
所属
東京弁護士会
出身大学
慶應義塾大学法学部

どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。

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