協議離婚とは?手続の流れとスムーズな進め方、弁護士に依頼するメリット
「協議離婚」は、夫婦間の話合いによって合意を成立させ、離婚条件を取り決める方法です。離婚を考えたとき、まずは協議離婚を目指すことになります。
このページでは、協議離婚の概要やメリット・デメリットに加え、話合うべき内容や話合いをスムーズに進めるポイントなどについて解説します。
夫や妻にこれから離婚を切り出そうとお考えの方や、離婚をスムーズに進めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
このページでわかること
- 協議離婚とは何か
- 協議離婚のメリット・デメリット
- 離婚協議をスムーズに進めるポイント
協議離婚とは?
協議離婚とは、夫婦間の話合いで離婚条件を取り決め、離婚する方法です。
夫婦間で合意できれば、裁判所を通さずに離婚届を提出するだけで離婚が成立します。
協議離婚は、裁判所を通した離婚方法(調停離婚、審判離婚、裁判離婚)と比べて手続が簡単で、離婚理由も問われません。
そのため、日本では離婚した夫婦のほとんどが、協議離婚を選択しています。
離婚方法の割合

- ※上記グラフは令和4年度 離婚に関する統計の概況『離婚の種類別にみた離婚件数の年次推移』に基づき、当事務所が独自に作成したものです。
- ※%=小数点第二位以下四捨五入
協議離婚にかかる期間
協議離婚が成立するまでにかかる期間は、話合いの状況によってさまざまです。
理屈のうえでは、夫婦の合意があれば話合いを始めたその日のうちに離婚することもできます。
しかし実際には、さまざまな離婚条件を取り決めなければなりません。
離婚すること自体や離婚条件に対する争いがあると、なかなか話合いがまとまらないこともあり得ます。
そのため、場合によっては1年以上かかってしまうこともあるでしょう。
協議離婚にかかる費用
協議離婚の手続自体には、基本的に費用はかかりません。
ただし、合意内容を記載した離婚協議書を公正証書にする場合は、公正証書の作成費用・送達費用等がかかります。
具体的な金額は取り決めた養育費や財産分与などの金額によって異なりますが、5,000円~4万円程度であることが多いです。
また、夫婦間で話合いができない・まとまらない場合に弁護士に依頼するケースでは、弁護士費用が発生します。
詳しくは以下のコラムでも解説していますので、参考にしてみてください。
協議離婚と調停離婚の違い
離婚協議がまとまらない場合には、調停離婚を目指すことになります。
調停離婚は、家庭裁判所の調停手続のなかで調停委員を介して話し合い、離婚を成立させる方法です。
協議離婚と調停離婚は、どちらも話合いにより離婚を成立させる方法ですが、主に以下のような点で違いがあります。
協議離婚 | 調停離婚 | |
---|---|---|
話合いの方法 | 夫婦が直接話し合う | 調停委員を介して話し合う |
話合いの日時 | 自由に決められる | 家庭裁判所から指定される |
話合いの場所 | 自由に決められる | 家庭裁判所 |
話合いの期間 | 合意できればすぐに離婚可能 | 3ヵ月~1年程度が目安 |
費用 | 手続自体にはかからない | 裁判所への申立費用がかかる |
離婚理由 | 問われない | 問われない |
離婚時に作成する書面 | 離婚協議書 | 調停調書 |
強制執行の可否 | 執行受諾文言付の公正証書を作成すれば可能 | 可能 |
どちらの方法が適しているかは、夫婦の状況によって異なります。
協議離婚のメリット・デメリット
協議離婚には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
協議離婚のメリット
協議離婚の主なメリットには、以下の3つが挙げられます。
- 早期解決が目指せる
- 離婚理由を問わず離婚できる
- 手続や費用の負担が少ない
協議離婚の最大のメリットは、当事者間のみで離婚を進められることです。
裁判所を通さないため、より柔軟な解決を目指せるでしょう。
協議離婚のデメリット
一方で、協議離婚には以下のようなデメリットもあります。
- 合意がなければ離婚できない
- 配偶者と直接話し合う必要がある
- 不利な条件で離婚してしまうおそれがある
- 取り決めるべき離婚条件が漏れたまま気づかずに離婚してしまうおそれがある
協議離婚は裁判所が関与しない分、夫婦の関係性によっては対等な話合いや公平な取決めができないおそれもあります。
離婚条件について争いが激しい場合などには、話合いがこじれ問題が長期化するケースも少なくありません。
離婚協議で話し合うべき離婚の条件
話合いの際は、離婚するかどうかだけでなく、以下の離婚条件を取り決める必要があります。
これらの条件のうち、「親権」は離婚する際に必ず取り決めなければなりません。
これは、離婚届には親権者を記載する欄が設けられており、親権者を記載しなければ離婚届を受け付けてもらえないためです。
「親権」以外は離婚後に取り決めることも可能ですが、離婚後は相手が話合いに応じてくれない場合もあります。
そのため、離婚条件は離婚するタイミングできちんと取り決めておいたほうがよいでしょう。
離婚協議の流れと上手に進めるポイント
離婚協議は、大まかに以下のような流れで進めます。
以下で、進め方のポイントもあわせて見ていきましょう。
①離婚の準備をする
離婚することを決めたら、「すぐにでも話合いを始めて早く離婚したい」と思うかもしれません。
しかし、焦って離婚を切り出すと、話合いが長期化したり、不利な条件で離婚したりしてしまうおそれもあります。
そのようなリスクを避けるためにも、まずは状況や気持ちを整理して、話合いの準備をしましょう。
具体的には、以下のような準備をしておくことをおすすめします。
- 離婚理由をまとめる
- 離婚原因の証拠を集める
- 離婚の条件を明確にする
- 配偶者の収入や配偶者名義の財産を把握する
- 離婚後の生活の目途を立てる
- 精神的に自立する など
詳しくは以下のコラムでも解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
②離婚したいと伝える
準備が整ったら、配偶者に離婚したいことを伝えましょう。
離婚を切り出すときは、落ち着いて時間が取れるタイミングで、冷静に伝えることが大切です。
直接顔を合わせて話し合うことが難しければ、電話やメール・LINEなどで離婚を切り出してもよいでしょう。
なお、配偶者からDV・暴力を受けている場合などには、夫婦で話し合うことは現実的ではありません。
離婚を切り出すことで相手に逆上され、さらに酷い被害を受けてしまうおそれもあります。
そのため、まずは配偶者の目が届かない実家やシェルターなどに避難してご自身やお子さまの安全を確保してから、弁護士などに相談するのがおすすめです。
③離婚や離婚条件について話し合う
配偶者が応じてくれた場合は、離婚するかどうかや、離婚条件について話し合います。
離婚することに合意できた場合も、離婚後に後悔しないよう離婚条件について納得できるまで話合いましょう。
ただし、自分の希望だけを押し通そうとすると話合いがこじれてしまうおそれもあります。
そのため、相手に譲れる部分は譲ることも大切です。
なお、親権を争っているケースで、話合いが長引きそうな場合は離婚届の不受理申出を行うことも検討するとよいかもしれません。
不受理申出をしておけば、親権者を記載した離婚届を勝手に提出されることを防げます。
④離婚協議書を作成する
話合いがまとまったら、合意内容をまとめた離婚協議書を作成しましょう。
離婚協議書を作成しておけば、合意内容を守る義務が生じ、あとで「言った・言わない」のトラブルになることも防げます。
ただし、離婚協議書には強制執行力がありません。
そこで、離婚協議書を公正証書として作成しておくことをおすすめします。
公正証書は、公証役場の公証人が法律に基づいて作成する証明力が非常に高い文書です。
執行受諾文言(「約束を守らない場合は強制執行を受けてもよい」という条項)を付けて公正証書を作成しておけば、「約束どおり養育費や慰謝料が支払われない」といった場合に、相手の財産や給料などを差し押さえられるため、安心です。
⑤離婚届を提出する
離婚協議書を作成したら、離婚届に記入し提出することで、離婚が成立します。
協議離婚の場合、離婚届には夫婦双方の署名に加え、証人2名の署名が必要です(押印は任意)。
これには離婚意思がないまま離婚届が提出されることを防ぐ目的があり、証人の記載がないと離婚届を受理してもらえないため注意しましょう。
提出先は、届出人(夫婦)の本籍地または一番近い市区町村役場です。窓口へ持参するほか、郵送や第三者に提出してもらうこともできます。
なお、提出の際の必要書類は以下のとおりです。
- 離婚届
- 本人確認書類
- 戸籍謄本(本籍地でない市区町村役場に提出する場合)
詳しくは、提出先の市区町村役場のホームページなどをご確認ください。
離婚協議が進まないときの3つの対処法
離婚協議が進まないときには、状況に応じて以下の方法をとることも検討しましょう。
別居する
配偶者が「離婚したくない」と頑なな態度をとっている場合などには、別居を検討するのも一つの手段です。
別居をすることでお互いが冷静になり、話合いが進展するかもしれません。
また、ある程度の別居期間(3年以上が目安)があると、裁判で離婚が認められやすくなります。
なお、配偶者からDVを受けているような場合を除き、別居する場合には原則として配偶者の同意を得るようにしましょう。
勝手に家を出て行ってしまうと、離婚の際に不利になったり、責任を問われたりするおそれがあります。
離婚前の別居については、以下のコラムでも詳しく解説していますので参考にしてみてください。
離婚調停を申し立てる
話合いがまとまらない場合や、そもそも夫婦間での話合いが難しい場合には、離婚調停を申し立てることも検討する必要があります。
離婚調停では、裁判官や調停委員を介して話合いを行うため、お互いが感情的になることなくスムーズに話合いが進む可能性が高いです。
夫婦の一方にDVやモラハラがある場合にも、対等に主張を行うことができるでしょう。
ただし、離婚調停もあくまで話合いにより合意を目指す手続です。
合意できなければ離婚はできないため、再び離婚協議を行うか、最終的には裁判を提起する必要があります。
弁護士に依頼する
夫婦間で話し合うのが難しい場合や、上手く交渉できるか不安な場合には、弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、交渉や書面の作成を任せることが可能です。
法的知識や経験に基づいて交渉を行えるため、あなたにとって有利な条件でスムーズに離婚できる可能性も高まるでしょう。
離婚の話合いは、最初が特に肝心です。口頭であっても不利になる発言や約束をしてしまうと、あとから覆すことは難しくなってしまいます。
話がこじれてしまうと、調停や裁判に発展し問題が長期化するおそれもあるため、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが大切です。
協議離婚のよくある質問
協議離婚について、お客さまからよく寄せられる3つのご質問にお答えします。
協議離婚の証人になれるのはどんな人ですか?
証人になれるのは、成人(18歳以上)の方です。
夫婦どちらかの両親や兄弟姉妹、友人などに依頼することが一般的ですが、成人であれば誰でも構いません。
証人を頼める人がいない場合、費用はかかってしまいますが、弁護士や行政書士などによる証人代行サービスを利用することも可能です。
離婚協議中に恋愛をすると不貞行為になりますか?
原則として、肉体関係を一切伴わない場合は、不貞行為にはあたりません。
また、肉体関係があったとしても、夫婦関係が完全に破綻していた場合には不貞行為とみなされないケースもあります。
ただし、「夫婦関係が破綻していた」と認められるのは離婚を前提に長期間別居しており、夫婦双方に離婚の意思があるようなケースに限られます。
具体的な状況によっては慰謝料を請求されたり、離婚の交渉の際に不利になったりするリスクもあるため、注意しましょう。
離婚協議に第三者が同席することはできますか?
可能です。
夫婦がお互い感情的になってしまう場合などには、第三者に同席してもらうことで話合いがスムーズに進む可能性もあります。
ただし、第三者が不用意に口をはさんでしまうと、公平な話合いができなくなりトラブルにも発展してしまいかねません。そのため、第三者の同席は慎重に検討すべきです。
夫婦の状況によっては、弁護士に交渉を任せてしまったほうがよいケースもあります。
離婚協議をスムーズに進めるなら弁護士へご相談を
協議離婚は、夫婦間の「話合い」で離婚条件を取り決め、離婚する方法です。
裁判所を通した離婚方法と比べて、手続きが簡単で柔軟な解決が図れるため、日本で離婚した夫婦の多くは、協議離婚を選択しています。
一方で、夫婦がお互い感情的になってしまい、話合いが進まないケースも少なくありません。
そのため、少しでも不安があれば、できるだけ早めに弁護士へ相談するのがおすすめです。
弁護士なら、法的知識や経験に基づいて交渉し、離婚協議書の作成まで一貫して行えるため、よりスムーズな解決を目指せます。
アディーレ法律事務所には、離婚問題について経験豊富な弁護士が在籍していますので、お困りのことがあればお気軽にご相談ください。
監修者情報

- 資格
- 弁護士
- 所属
- 東京弁護士会
- 出身大学
- 慶應義塾大学法学部
どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。