離婚問題の知識と法律

離婚時の財産分与で家や土地などの不動産はどう分ける? 分割方法と注意点

家や土地などの不動産は、預貯金や現金などのように単純に分けられる性質のものではないため、財産分与が複雑になりがちです。

どのように財産分与すればよいのか、住宅ローンが残っている場合はどうなるのかなど、疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

そこでこのページでは、家が財産分与の対象となるケースや具体的な財産分与の方法・流れや注意点について詳しく解説します。
住宅ローンが残っているケースについても解説していますので、ご自身の状況と照らし合わせながらぜひ最後までご覧ください。

このページでわかること

  • 家などの不動産を財産分与する方法・流れ
  • 住宅ローンが残っている家の財産分与の方法
  • 家などの不動産を財産分与する際の注意点

離婚時の財産分与とは?

財産分与とは、婚姻中に夫婦で協力して築き上げた財産を、離婚の際に原則として「2分の1ずつ」分けることをいいます。

財産分与の対象となるのは、夫婦の「共有財産」です。
婚姻中に夫婦の協力によって形成・維持された財産であれば、家や土地などの不動産も、実質的な「共有財産」として名義を問わず財産分与の対象となり得ます。

一方で、「婚姻前から一方が有していた財産」や「婚姻中に夫婦の協力とは無関係に取得した財産」は特有財産として財産分与の対象にはなりません。
たとえば、夫婦の一方が結婚前に買った家や、相続で得た土地などは財産分与の対象外です。

なお、家の購入資金の一部に特有財産が含まれる場合は、評価額から特有財産にあたる部分を控除することで財産分与を行えます。

財産分与について詳しく見る

離婚時の財産分与で家を分ける方法

離婚時に財産分与で家を分ける方法には、主に以下の3つが考えられます。

  • 家を売って現金で分ける(換価分割)
  • 一方が家を取得して金銭を支払う(代償分割)
  • 夫婦の共有名義にする

それぞれ詳しく見ていきましょう。

家を売って現金で分ける(換価分割)

換価分割は、家などの不動産を売り、その代金を原則として2分の1ずつ現金で分ける方法です。

換価分割

換価分割

現金を分けた時点で清算が完了する換価分割は、公平かつ明確に財産を分けることができ、将来のトラブルにもなりにくい方法といえます。
そのため、夫婦のどちらも自宅に住み続けることを希望しない場合などには、換価分割を検討するとよいでしょう。

一方で、不動産の売却には時間や手間がかかります。
場合によっては、希望の価格で売れないおそれもあるため、注意しましょう。

一方が家を取得して金銭を支払う(代償分割)

代償分割は、夫婦の一方が家などの不動産を取得し、もう一方に代償金(評価額の半分相当のお金)を支払うことで財産分与をする方法です。
たとえば、夫が家に住み続けるケースで家の評価額が1,000万円の場合、夫から妻に500万円を支払うことになります。

代償分割

代償分割

この方法であれば、家を取得する側は離婚を機に引っ越す必要がありません。
特にお子さまがいる場合には転校などもしなくて済むため、環境の変化による負担を軽減できるでしょう。

ただし、家を取得する側は、相手に支払う代償金を用意しなければなりません。
また、不動産の適正な評価額を巡ってトラブルになるおそれもあるため、注意が必要です。

夫婦の共有名義にする

不動産の売却や査定にかかる手間を省きたい場合などには、夫婦の共有名義にすることで家自体を分けるという方法もあります。

しかし、夫婦で家などを共有してしまうと、離婚後も不動産を通じて関係を続けなければなりません。

売却するタイミングでもめたり、一方が再婚した場合や亡くなった場合に権利関係が複雑になったりするリスクもあります。
将来のトラブルの原因となるおそれもあるため、基本的には避けるべきでしょう。

住宅ローンが残っている家は財産分与できる?

家の住宅ローンが残っている場合は、ローンの状況によって財産分与できるかどうかが変わります。

夫婦の実質的な共有財産が家しかないケースで、住宅ローンの残額よりも家の査定金額が低い「オーバーローン」の場合、基本的には財産分与の対象になりません。
通常は、ローンの名義人が返済を続けていくことになります。

オーバーローン

オーバーローン

一方で、住宅ローンの残額よりも家の査定金額が高い「アンダーローン」の場合、家を売ってローンを完済し、残額を分けることで財産分与が可能です。

アンダーローン

アンダーローン

なお、家を売らずにどちらか一方が済み続けることもできますが、ローンの支払いや所有権(名義)をどうするかによって財産分与の方法や具体的な手続が変わります。詳しくは以下のページをご確認ください。

住宅ローンについて詳しく見る

離婚時に家を財産分与するときの流れ

家の財産分与は、大まかに以下の流れで行います。

  • 家の名義人を確認する
  • 住宅ローンの名義人と残債を確認する
  • 特有財産を確認する
  • 不動産価格を査定してもらう
  • 財産分与の方法を取り決める

以下で詳しく見ていきましょう。

①家の名義人を確認する

家を売る場合は、名義人による手続が必要です。
そのため、まずは誰が家の名義人になっているか、「登記簿謄本(登記事項証明書)」を取得して確認しましょう。

登記簿謄本は、法務局の窓口へ申請して交付してもらうほか、郵送やオンラインでも取得できます。

②住宅ローンの名義人と残債を確認する

住宅ローンが残っている場合には、家を売る・売らないにかかわらず、ローンの名義人と残債を確認しておきましょう。

住宅ローンの名義人は、「金銭消費貸借契約書」に記載されています。
住宅ローンの残債は、「残高証明書」などで確認することが可能です。

③特有財産を確認する

家の購入資金に特有財産が含まれている場合、その分を差し引いて財産分与の金額を算出しなければなりません。
そのため、特有財産の有無や金額を確認しておきましょう。

特有財産は、たとえば以下のような資料から確認できます。

  • 家の購入費用がわかる資料(売買契約書、建築請負契約書など)
  • 住宅ローンの借入額がわかる資料(金銭消費貸借契約書など)
  • 特有財産による支払いがあったとわかる資料(預貯金の取引履歴など)

④不動産価格を査定してもらう

具体的な財産分与の方法や金額は、ローンの残債と不動産価格に基づいて取り決めることになります。
そのため、現在時点での不動産価格を査定してもらいましょう。

不動産価格は、不動産会社などに依頼すれば査定してもらえます。
家を売る場合には、複数の不動産会社に見積もりをもらうのがおすすめです。

なお、不動産鑑定士に査定を依頼することもできますが、一般的に費用が高額となります。

⑤財産分与の方法を取り決める

これまでに確認した情報をもとに、具体的な財産分与の方法を取り決めます。
まずは、お互いの希望や状況をふまえて話合いをしましょう。

話合いで合意できた場合は、離婚後のトラブルを防ぐためにも、合意内容を離婚協議書などの書面に残しておくことが大切です。

夫婦間の話合いがまとまらない場合は、離婚調停を行うことも検討する必要があります。

離婚時の家の財産分与に関する注意点

家などの不動産を財産分与する際には、以下の点にも注意が必要です。

家を取得した場合は速やかに登記手続が必要

財産分与で家を取得し、もとの名義人から所有権が移った場合、「所有権移転登記」の手続を行う必要があります。

登記を行わないままでいると、元配偶者が勝手に家を処分・売却したり、借金の担保にしたりしてしまった場合に、自分の権利を主張できなくなるリスクがあるためです。
離婚が成立したら、速やかに登記を行いましょう。

家の財産分与では税金がかかる場合がある

預貯金や現金などを財産分与しても、通常は贈与税や所得税はかかりません。
しかし、家や土地など不動産の財産分与においては、家を受け取る側・渡す側それぞれ以下のとおり税金がかかる場合があります。

家を受け取る側
  • 登録免許税
  • 不動産所得税
  • 固定資産税
  • 贈与税(財産分与額が多すぎる場合)
家を渡す側
  • 譲渡所得税
    (取得価額と財産分与費用の合計より譲渡時点の家の時価が高い場合)

なお、贈与税や譲渡所得税が発生する場合、確定申告が必要になるため注意しましょう。

まとめ

夫婦の実質的な「共有財産」である家や土地などは、離婚時の財産分与の対象になり得ます。
家を売って売却代金を分ける「換価分割」や、一方が家を取得して代償金を支払う「代償分割」など、状況に応じて適切な分割方法を検討しましょう。

ただし、家などの不動産の財産分与は、住宅ローンの状況や実際の分割方法、特有財産の有無によっても、適切な進め方や手続の方法が変わります。
そのため、少しでもご不安があれば弁護士に相談するのがおすすめです。

アディーレ法律事務所では、離婚に伴う財産分与に関するご相談を承っております。
スムーズに離婚を進め、適切に財産分与を行いたい」とお考えであれば、まずは一度ご相談ください。

監修者情報

林 頼信

弁護士

林 頼信

はやし よりのぶ

資格
弁護士
所属
東京弁護士会
出身大学
慶應義塾大学法学部

どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。

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